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シオドマク「暗い鏡」 [映画]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は診療所は休みで、
1日家にいる予定です。
何かちょっと片付け物などしていると、
1日なんてあっと言う間ですね。
どうも時間の使い方がうまく出来ずに嫌になります。

それでは今日の話題です。

今日は映画の話です。

ロバート・シオドマクは、
アメリカで生まれたドイツ人の監督で、
主に1940年代にモノクロのスリラー映画を多く監督しました。
ドイツに渡り映画活動を始めたのですが、
ナチスの台頭があって活動が制限されたため、
1940年にアメリカに亡命したのです。

ヒッチコックやフリッツ・ラングと同時期に、
同じような映画を量産したのですが、
その評価は2人の巨匠と比べると、
かなり低いというのが通常です。
ヒッチコックほどのケレン味に溢れた技巧はなく、
ラングのような社会性や思想性もなかったのが、
その評価の原因でしょうか。
「らせん階段」は代表作でDVDも出ていますが、
それ以外の作品は、
殆どが「忘れられた映画」になっています。

「暗い鏡」もそうした映画の1本で、
1946年の製作です。
主演はオリビア・デ・ハビランドですから、
ファーストラインの作品ではあります。
ただ、そう制作費は掛かっていません。
ビデオテープは販売されましたが、
未だに海外でもDVD化はされていません。

この映画は、「双子物」のスリラーです。

主演のオリビア・デ・ハビランドは、
一卵性双生児の姉妹を1人で演じます。

物語はある医者がナイフで殺害されるところから始まります。

殺人現場の目撃者は何人もいて、
すぐに事件は解決かと思われるのですが、
その犯人と目された女は、
オリビア演じる双子で、
2人ともその容疑を否認します。

双子の1人にはアリバイがあり、
もう1人が殺人を犯したことは、
間違いがないのですが、
2人が共に黙秘を続けるので、
犯人がどちらなのか分かりません。

警察の依頼を受けた精神科医が、
2人の姉妹を鑑定するのですが…
という物語。

ね、ちょっと面白そうでしょ。

オリジナルの台本は、
当時としては非常に斬新だと思います。

ただ、ミステリーとして面白いかと言うと、
必ずしもそうではなく、
悪いのがどちらなのかは、
前半でネタを割っていて、
特別意外な結末が訪れる、
というような構成にはなっていません。

ただ、見事なのは、その撮影です。
まずこちらをご覧下さい。
暗い鏡2.jpg
如何にもの場面ですが、
双子の姉妹が並んで椅子に腰掛けています。
これは合成だとは思いますが、
非常に奇麗に出来ていて、
継ぎ目が何処なのか、
ちょっと分かりません。

こうした映画では、
撮影が面倒なので、
双子が一緒に映る場面は、
それほど多くはないのが普通です。

ところが、この映画は2人が同時に映っているカットの方が、
ずっと多いのです。
このちょっと無意味な気合に、
驚かされます。
では次を。
暗い鏡6.jpg
これは合成ではなく、
映像の前に人物を重ねたのだと思いますが、
これも極めて自然に出来ています。
まだあります。
暗い鏡4.jpg
これも同じ手法だと思いますが、
一方が鏡に映っていて、
それも更に重ねあわされています。
驚かされるのが次。
暗い鏡.jpg
これはこの時代にどうやって撮ったのか、
正直見当が付きません。
今でもこの映像を撮るのは、
結構難しいのではと思いますが、
これはデジタル合成もCGもない時代の話なのです。
不思議ですよね。
暗い鏡3.jpg
これはちょっと暗くて見辛いと思いますが、
ベットで2人が寄り添っています。
極めて自然で不思議です。

ミステリーには双子は頻繁に登場しますが、
トリックとして双子を巧妙に使った、
という作例は意外に少ない、という気がします。

ぱっと思いつくのは、
西村京太郎の「殺しの双曲線」くらい。
まあ、双子ものはむしろ映像向きなのかも知れません。

刑事コロンボに「2つの顔」という作品があって、
これも双子のどちらが犯人なのか分からない、
という話でした。
これといった決め手の手掛かりがないのが弱いのですが、
その構成はなかなか巧みに出来ています。
最近NHKで放映されたものを見直して、
細部まで練り上げられているのに感心しました。
日本のドラマとは作り込みが違いますね。
一種の不可能犯罪なのですが、
ボーッと見ているとそのことには気付かないのです。
ただ、双子が同時に画面に映るカットは、
殆どありません。

「相棒」の初期の頃に、
双子ものが一本あって、
これは「暗い鏡」とほぼ同じ話でした。
台本作者は確実に「暗い鏡」を見ていると思います。
ただ、ミステリーとしての構成は、
「相棒」の方が凝っていました。

今日はちょっとトリッキーな映画の話でした。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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