SSブログ

ワクチン接種後40分の死亡をどう考えるか? [新型インフルエンザA]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から事務仕事をシコシコとやって、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はまた新型インフルエンザ間連の話題です。

こんなニュースがありました。

【新型接種40分後に死亡、主治医「関連あり」】厚生労働省は29日、新型インフルエンザのワクチン接種を受けた新潟県の80歳代女性が約40分後に死亡し、主治医が因果関係について「関連あり」と報告したことを明らかにした。ワクチン接種後に死亡した例は、同日までに117件が同省に報告されているが、主治医が「関連性あり」としたのは初めて。厚労省は、専門家3~4人に分析を依頼するほか、来月開く副作用検討会でも議論する。女性は高血圧と心臓弁の持病があり、昨年11月に季節性インフルエンザワクチンを接種した際に異状はなかった。今月26日にかかりつけの医療機関で新型インフルワクチンを接種。30分たっても副作用が見られなかったので帰宅したが、その約10分後に路上に倒れているのが発見され、死亡が確認された。死因は不明。当時、外は雪が降っており、主治医は、暖房のきいた室内から急に寒い場所に出たことで「不整脈や肺塞栓(そくせん)が起きた可能性も否定できない」としているが、「ワクチンとの因果関係も同程度に可能性がある」と報告している。

これは実は1月30日に記事にしたのですが
http://rokushin.blog.so-net.ne.jp/2010-01-30
その時点ではこの記事にあるような、
詳しい内容は把握していませんでした。

従って、以前の記事はちょっとピント外れのものに、
なっていたように思います。

現時点でこの記事以上の情報はないようです。

80代の高血圧と心疾患をお持ちの女性が、
おそらくは診療所で新型ワクチンの接種を受け、
30分は診療所内で様子を見た上で、
帰宅の途に着いたところ、
その僅か10分後に、
帰宅途上で倒れているのを発見されたのです。
おそらくその時点で心肺停止の状態であったと、
推測されます。

皆さんはこの事例を、
どうお考えになりますか?

いつも分からないのは、死亡診断の経過です。

他の記事で救急車で病院に運ばれたとの記載もありましたが、
それが事実であるかどうかは不明です。

いずれにしても、上の記事のニュアンスから見る限り、
そのワクチン接種をしたかかりつけ医が、
死亡診断に関わった、と見て間違いはなさそうです。

とすれば、救急隊がそのかかりつけの医院か、
ひょっとして病院に、その方を運び入れたのか、
それとも救急病院に運ばれて、
死亡が確認され、そうした場合、
まずその病院の医者は、
死亡診断書は書かないでしょうから、
そこに呼ばれたかかりつけ医が、
死亡診断を行なったのでは、
という推測が成り立ちます。

ただ、妙なのは、死因は「不明」と書かれていることです。
これは要するに主治医が警察の立会いの下に、
「検死」をして、その検案書の死因が、
「不明」とされた、という意味合いかな、
とも思われます。

皆さんもご存知のように、埋葬には死亡診断書が必要です。
しかし、死因が不明のままでは、
死亡診断書が受理されることはなく、
この場合は、ご家族の同意の下に、
解剖が行なわれた、という経緯が想定されます。
解剖での死因の判明には、
場合によっては1ヶ月以上掛かるので、
その間の死因はあくまで「不明」のままなのです。

記事によれば、患者さんが亡くなられたのは、
1月26日のことで、
厚生労働省の発表は29日です。
とすると、おそらく27日には、
既に主治医は「ワクチンと因果関係あり」
との報告を行政に提出していることになります。

ただ、もし解剖が行なわれているのであれば、
その結果は当然まだ判明してはいません。
仮に肉眼所見のみでほぼ間違いなし、
とのことであれば、
その結果が記事に現われておかしくはありませんが、
そんな記載は何処にもなく、
主治医のコメントも死因を理解している様子のないものです。

表に現われている内容のみが事実であるとして、
僕がもしこの主治医の立場なら、
解剖の結論がある程度はっきりするまでは、
少なくとも「ワクチンと因果関係あり」というような、
報告をすることはありません。

だって、そうでしょう。
もう少し待てば死因が特定される可能性があるのに、
何故わざわざ不明の段階で、
報告を挙げる必要があるでしょうか?
少なくとも「因果関係は現時点では不明」とするべきです。
死因が不明なのに、
ワクチンとの因果関係のみが確実だ、
というようなおかしな話はないからです。

更にはそれを内容をしっかり確認することなく、
直ちに公表する厚生労働省も、
どうかしていると僕は思います。
新型ワクチン接種後の急死の事例は、
これまでにも多く報告されているのです。
せめて死因が確認されてから、
会見をして決して遅くはないと思いますし、
またそうするべきだったと僕は思います。
確認も取れていない情報を、
何でもすぐにメディアに報告すれば、
それでいい、ということはない筈です。

この事例を報道の範囲から分析すると、
直前までそれと予測させる徴候のない、
突然の心肺停止であり、
それが急に低温環境に置かれた、
心臓にご病気のある高齢者に起こった、
という点から考えて、
「急性の心臓死」でほぼ間違いはないのでは、
と僕は思います。
心臓を栄養する血管が詰まって、
致死性の不整脈を来たし、急激に死に至ったのです。

東京ではこうした場合、
死因は「虚血性心不全」とされることが多いのです。
これは意味合いとしては、
昔の「急性心不全」に近いものです。

問題は40分前に皮下注射されたワクチンが、
その心臓死に影響を及ぼした可能性は、
有り得るのか、という点に絞られます。

ここで参考になるのは、
以前の報告にある死亡事例の3例目です。
このケースでは、接種後3時間後に急性心筋梗塞の疑われる、
急性の心臓死を来たしています。
僕はこの事例は間違いなく、
ワクチンが病変を「押した」可能性が高い、
と思います。
ただ、ポイントは接種後1時間以内には、
特に症状は見られていないことです。

つまり、接種後1時間以内の体調不良は、
概ねアレルギーの可能性が高いのです。
アレルギー以外の免疫反応が、
それだけの短時間で起こるとは、
考え難いからです。
そしてその場合、
接種後すぐに症状が出現するほど、
重症化し易い、という特徴があります。

ここで今回の事例に戻って見てみると、
接種後30分は問題なく、
その10分後に急変されています。

つまり、アナフィラキシーなどのアレルギーの関与は、
この事例では考え難いのです。
そして、免疫系の賦活が起こったとすると、
それにしては時間的に早過ぎます。

従って、僕の結論は、
この事例はワクチンとは無関係の、
急性の心臓死だ、ということです。

うがった見方をすれば、
厚生労働省はこの事例が、
ワクチンとの関連が薄いことを承知の上で、
敢えてそれを大きく取り上げさせ、
それから専門家に関連性を否定させて、
ワクチンの安全性をアピールしたいのかな、
というようにも思えます。

ワクチンの死亡事例の中には、
新型ワクチンと因果関係の認められるケースが、
50例以上はあると僕は思いますが、
その中に今回の事例は含まれない、
というのが、現時点での僕の見解です。

皆さんはどうお考えになりますか?

尚、今回の分析は、
あくまで報道された内容のみからの推論であり、
事実とは異なることも当然考えられます。
また、報道や役所の発表を検証したい、
という意味合いで、
当該の患者さんに言及したり、
その主治医の行為を非難するような意味合いは、
全くありませんので、
その点はご理解の上お読み頂ければ幸いです。
もし患者さんのご遺族の方で、
内容をご不快の思われるようなことがありましたら、
御連絡を頂ければ、
記事は削除させて頂きます。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(15)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 15

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0