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カルシトニンの話 [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はカルシトニンの話です。

カルシトニン(calcitonin )は、
甲状腺のC細胞という細胞から、
分泌されるホルモンです。

甲状腺から分泌されるホルモンでありながら、
甲状腺ホルモンとは、
基本的に全く関係はありません。

このホルモンは血液のカルシウムが高くなると、
その分泌が刺激され、
血液のカルシウムを低下させる作用があります。
その原理は、
骨にある「破骨細胞」という、骨を壊す細胞の働きを抑え、
骨を壊れ難くすることと、
腎臓からカルシウムの排泄を増やして、
カルシウムを身体の外に出し易くすることです。

カルシウムを上げるホルモンと言えば、
副甲状腺ホルモンです。
このホルモンは副甲状腺という、
甲状腺にくっついて、その後ろ側にある、
小さな組織から分泌され、
そのホルモンの働きで、
骨が壊れてカルシウムが血液に流れ込みます。

つまり、カルシトニンは副甲状腺ホルモンに、
拮抗する働きをしているのです。

骨が壊れなければ、
骨は減らない理屈です。
そうであるなら、
骨が減少する病気の代表である、
「骨粗鬆症」でも、
このカルシトニンを使えば、
骨が減らずに済むのではないでしょうか?

そうした観点から、
骨粗鬆症にカルシトニンを使う、
という発想が生まれ、
それが薬の形を取りました。

それがカルシトニン製剤です。
1980年代の後半から、
日本でも発売され、使用されています。

骨の痛みがあったり骨粗鬆症があったりした時に、
週に1回定期的に打つ注射がありますね。
あれがカルシトニンです。

ただ、あれは人間のカルシトニンではありません。

日本で現在最も多く使われているのは、
ウナギのカルシトニンを合成したもので、
それ以外に魚の鮭のカルシトニンを合成したものと、
今は使われていませんが、
以前には豚の甲状腺から抽出した製品も発売されていました。

何故人間のカルシトニンがないかと言うと、
その効果が弱くて、
カルシウムを下げたり、
骨の痛みを取ったりするという、
作用がはっきりしないからです。
実験の結果、その作用は、
鮭やウナギの方が、遥かに強かったのです。

ただ、それはちょっとおかしいですよね。

カルシトニンはそもそも副甲状腺ホルモンに、
拮抗する作用のホルモンの筈です。
それならば人間のカルシトニンでも効果がある筈なのに、
実際にはあまりないのです。

それでは、カルシトニンは人間で、
一体どのような働きをしているのでしょうか?

実はこの点は、
まだはっきりとは分かっていないのです。

カルシトニンは現在では、
主に骨粗鬆症に伴う、痛みを軽減するために、
使用されています。
カルシトニンにそうした効果があることは、
ほぼ確実です。
ただ、その痛みがどうして起こるのかも、
何故改善するのかも、
仮説はありますが、
立証されてはいないのです。
一部にはセロトニン神経を介した作用ではないか、
という報告もあり、
仮にそうであるなら、骨の痛みのみならず、
難治性の慢性疼痛に対しても、
カルシトニンが有効であるという可能性がある訳です。

当初注目されたカルシウムの低下作用は、
かなり限定的なもので、
骨の量を増やすのでは、という作用も、
若干増えた、というデータはあるものの、
他の薬の方が明らかに効果は優秀で、
骨折予防の効果も、
それほどのものではなさそうです。

ただ、僕は骨の強度や健康度は、
決して骨の量(実際に測っているのは、
骨に含まれているカルシウムだけです)
だけでは測れないものだ、
と思っているので、
カルシトニンが「骨を健康にする」作用があるのでは、
という考えを持っています。

このカルシトニンは、通常日本では、
1回20単位という量を、
週1回筋肉注射するのが、
一般的な使用法です。
ただ、海外では100単位を連日使用する、
という方法が使われています。
ただ、この5倍の量の使用でも、
それほど目立った効果が見られていません。
また、海外では点鼻のカルシトニンも使用されていますが、
その効果にもさほどの違いはないようです。
人間の身体から出ているカルシトニンは、
換算するとせいぜい1日5単位くらいです。
従って、日本で使用している量でも、
実際に身体から出ている量の数倍はあるのです。

最近カルシトニンには、
手足の血流を改善する効果があると言われ、
その目的での使用も行なわれています。

カルシトニンの効果には、
色々と不確かな面があるのですが、
顔が火照ること以外には、
それほどの副作用はなく、
また実験的には骨を壊す細胞の働きを、
強力に抑えることは確かなので、
僕は比較的この薬に信頼を置いています。

僕自身は原因不明の疼痛に対しても、
カルシトニンの使用を行なっている場合があります。
目に見えた効果、と言うほどではありませんが、
ある程度の効果があるのでは、という印象はあります。
問題は用量の設定で、
本来は40単位程度は使用した方が効果的なのでは、
という風にも思います。

今日は意外と分かっていない点の多い、
カルシトニンの話でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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ゆみ

はじめまして。今日はネットでいつも相談させてもらっている方に教えてもらいたどり着きました。 ご相談させてもらいたい事があるのです。私は昨年の12月下旬に咳、熱が出始めインフルエンザAと分かりあまり咳がひどく痰が喉につまり呼吸出来ず食事もとれないため入院しました。咳をし呼吸すると右の肺あたりから音がしました。ヒューなどでなく痰の音ではないかと言われました。入院中は肺炎はなくリレンザと栄養剤、抗生剤の点滴をしてました。その後熱は36℃台に下がり咳は残ったまま何とか退院しました。しかし咳が残るため再び診察し麦門冬湯を1月5日から飲み始めました。やがて右の肺が重苦しくレントゲンを撮ってもらったら右肺下に小さく白くあり軽い炎症があると言われました。その後一週間~二週間し咳や痰はだいぶ落ち着き重苦しさは軽くなり再びレントゲンを撮ったらほぼ正常でした。しかしその後も微熱36℃9ぐらいがずっとあり動くと呼吸が苦しく浅くなります。おかしいので肺機能検査をやりましたが肺活量が非常に少なく吸う力が少ないと言われました。昔気胸を右肺に3つ空いたのをやりましたので多少その影響もあるかもと言われました。側湾もあり体重が36キロ172cmです。現在、おもに朝や、食事前後に痰が絡みやすく鼻水が喉の後ろに流れる症状があり(耳鼻科にて診察、鼻のレントゲンをとり正常、軽い鼻の粘膜の腫れがあるがちくのうなどはないので点鼻薬をと言われました)長く立ってると段々呼吸が浅くなりヒッヒとなり咳が出そうになり苦しく座り込みます。先ほど伝えたぐらいの微熱が昼間によくありだるさはなく採血は正常でした。座ってたり寄りかかってると比較的楽になります。横になると胸が苦しいような感じで座椅子でずっと寝てます。咳はありませんが痰が絡みやすく声がれがあります。食事や会話も苦しくなります。入院先の先生に今日も診察を受けましたが動かないからだよ、食べて散歩するとかしなさいと言われました。麦門冬湯を今も出され飲んでいます。体力の問題だ運動しないと体操しないと。と言われます。なのでストレッチやきちんと食べるをやってます。入院中、咳止めなど出されたが食欲がなく薬は飲むと気持ち悪くなりやすくあまり飲めませんでした。先生は今の苦しさは動かないからだと言うのですが何かアドバイスがあったらと思います。長くなり申し訳ありませんがよろしくお願いいたします。
by ゆみ (2010-02-06 19:20) 

サニーデイ

はじめまして。
カルシトニンについてお尋ねいたします。
現在還暦の女性ですが、骨塩定量が76%と、低くなっているとの事です。 50%以下にならないと治療は必要ないと、お医者様からは、言われました。 カルシウムは普通の方よりも接種していると自認しておりますが、現実には下がって来ておりますし、五十肩も、10年以上直らない状態です。 カルシトニン投与は、実際どのような状態の時に、治療薬として、投与されるべきなのでしょうか?
by サニーデイ (2010-02-06 22:48) 

fujiki

ゆみさんへ
コメントありがとうございます。

インフルエンザウイルスの感染そのものが、
現在の呼吸困難の原因になっているとは、
考え難いと思います。
症状の経過は「過敏性肺臓炎」に近いと考えます。
ある種の抗原に対するアレルギー反応が、
肺に無菌性の炎症を起こし、
進行性の呼吸困難の原因となります。
「アレルギー性肉芽腫性血管炎」のような、
アレルギーに起因する血管炎による初期症状、
という可能性もないとは言えません。

ただ、そうした病気ではなく、
風邪の後の慢性の症状がしばらく残り、
数ヶ月で自然に改善することも、
意外によくあることです。
その点で主治医の先生のご判断も、
誤りとは思いません。

ポイントの1つは呼吸機能がどう変化するかで、
もし肺活量が低下しているとすれば、
その経過は慎重に見てゆく必要があります。
進行性に肺活量の低下があれば、
「過敏性肺臓炎」を疑います。
その場合、最初ははっきりしなかった肺の影が、
次第にはっきりしてくるのも、
よくあることです。

血液のアレルギーの数値は上がっていないでしょうか?
長引くような経過であれば、
血管炎や膠原病の時に上昇する、
抗体の数値も一度見ておく必要はあるのではないか、
と思います。

当面は少しご様子を見ていいと思いますが、
肺活量の検査は、
先生に言って、定期的にはやってもらった方が良いのでは、
と言う気がします。

ご参考になれば幸いです。
by fujiki (2010-02-07 19:54) 

fujiki

サニーデイさんへ
コメントありがとうございます。

通常カルシトニンの一番の適応は、
骨粗鬆症に伴う、腰などの痛みです。
骨の量を維持したり、骨折を予防する効果は、
「ビスフォスフォネート」というタイプの薬の方が、
強い、とされています。
ただ、ビスフォフフォネートはかなり人工的な薬であり、
特有の副作用もあるので、
僕はあまり信頼を置いていません。
カルシトニンを定期的に使用することは、
骨の健康のために有用だと思いますが、
週1回の注射、という使用法が欠点ではあります。
by fujiki (2010-02-07 20:02) 

ゆみ

お返事ありがとうございます。
そういったのは初めて聞きました。血液のアレルギーの検査はしていません。昔耳鼻科でダニアレルギーがあるのは知りました。その調べた方が良さそうなアレルギー検査は内科、耳鼻科でもしてもらえますか?医師には何と伝えればしてもらえるのでしょうか?苦しくなるときに喉が苦しくなる、違和感などがあります。唾液もよく出て微熱もそのままあります。後鼻漏があるのも違和感の一つかと思いますが。後は喉の痰や違和感を気になって喉を鳴らす癖があります。つい気になってしまいます。耳鼻科でカメラなどで喉を調べた訳でないのですが。子供の頃に気管支炎喘息をやってるのでそれからかとも思いました。現在麦門冬湯を出されてますが飲んでた方が良いのでしょうか?量を減らして様子を見たりしたほうが良いですか?現在咳は落ち着いてますが後鼻漏からか痰は絡みます。部屋は今加湿器とエアコン(朝方や夕方)、空気清浄器をほぼ24時間つけてます。質問ばかりになりすみません。よろしくお願いいたします。
by ゆみ (2010-02-07 21:44) 

ゆみ

すみません、先ほど肺活量検査の結果をお伝えするのを忘れてしまいました。
1秒量0.94で1秒率が90.38でした。指で測る酸素のは97~98でした。
by ゆみ (2010-02-07 21:52) 

ゆみ

すみません、先ほど肺活量検査の結果をお伝えするのを忘れてしまいました。
1秒量0,94で1秒率が90,38でした。指で測る酸素のは97~98でした。
by ゆみ (2010-02-07 21:53) 

サニーデイ

有り難うございました。
今年、又骨密度測った時に、どうしたら良いのかを御医者様に相談して見ようと思います。  
本当に有り難うございました。
by サニーデイ (2010-02-08 14:57) 

fujiki

ゆみさんへ
酸素飽和度の97~98%は全く正常です。
1秒率の90%も、問題はありません。
肺活量も%VCと言って、
%肺活量で数値化することが一般的ですが、
その数値はどうでしょうか?

麦門冬湯は効果があれば飲む、というスタンスで、
僕は問題はないと思います。
咳が落ち着いているとすれば、
切って様子を見ても、いいのではないか、
と僕は思います。

症状が全体として改善傾向にあるようなら、
薬は使わず、少し様子を見て、
問題はないのではないでしょうか。
ご参考になれば幸いです。
by fujiki (2010-02-08 22:46) 

ゆみ

お忙しい中アドバイスのお返事ありがとうございます。
はい、入院中も現在もその97ぐらいです。一番低い時でも95でした。肺機能検査のはこの二つしかもらった用紙には書いておらず分からないのですがCOPDの検査の一つでもあるようで先生は肺機能検査の結果が沢山書いてある紙とレントゲンから見てCOPDではないですねと言われました。
喫煙も今までないです。後は違う病院で相談したら首のMRIを撮り喉、気管、食道を見れるのを撮ったら綺麗なもんですね異常なしですねと言われて気管も狭くなってしまったとかなくもしかしたら精神的にストレスや疲れで過換気気味なのかも…?って言われました。肺のCTは一応来月やってみようかきっと問題なさそうだけどと言われてます。今のところ肺炎などの疾患はなさそうでした。結核も流行っているような事をCMでみて結核かとも思ってましたが病院では一度も言われなかったので違うのかと思っています。微熱は体力的なものから体重も痩せたからかなと言われてます。症状は咳も落ち着いてます。微熱と後鼻漏が中々治らないです。点鼻薬のアルデシンと飲み薬アレグラをもらいました。点鼻薬は中々うまく出来ません。アレグラはまだ飲んでないです。後鼻漏とは治りづらいものでしょうか?
最近化粧水の香りを嗅ぐと咳が出そうになります。まだ病み上がりで気管や鼻が匂いに過敏になってるのでしょうか。
肺機能検査のコメント間違えて二度送ってしまいました。申し訳ありません。
いつもご相談にのっていただきありがとうございます。
by ゆみ (2010-02-09 10:21) 

fujiki

ゆみさんへ
お話の範囲では、
どうやら後鼻漏の関与が高そうです。
あせらず自然に治るのを待っても悪くはない、
と思います。
薬は効果があれば、使用して問題ないですが、
無理に使う必要はないと思います。
漢方薬(葛根湯加川きゅうしんい、や、しんい清肺湯)
を使ってみるのも僕はお勧めします。
by fujiki (2010-02-10 08:05) 

ゆみ

おはようございます。お返事ありがとうございます。
そうなのですね。食べたり飲んだりする度に流れてしまうので食べづらくて困ります。自然に治ってくれるとありがたいのですが(^^)
そういう色々な漢方薬もあるのですね。今まで一種類しか知りませんでした。
そんなに心配しなくても大丈夫のようですね。どうしても中々治らないとあれなのかこの病気かと心配してしまうのでリラックスしてもっと気軽になりたいと思います。また分からない事がありましたら質問させてもらえたらと思います。アドバイスありがとうございました。
by ゆみ (2010-02-10 09:27) 

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