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万能ワクチンは福音なのか? [科学検証]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日はちょっと朝からバタバタして、
更新が遅れました。
あっ、診療はいつも通りですので、
ご心配はされないで下さい。

それでは今日の話題です。

先月、インフルエンザウイルスの、
「万能ワクチン」が日本で開発された、
との報道がありました。

通常のインフルエンザのワクチンは、
流行したタイプのウイルスを元にして作られ、
新型インフルエンザのように型が大きく違うものに対しては、
全く効果のないものでしたが、
今回開発されたワクチンは、
「全てのインフルエンザ」に対して効果のある、
夢のようなワクチンだという報道です。

報道のソースは、
国立感染症研究所の研究員で、
研究所以外に複数の大学や民間の研究機関も、
共同で研究した成果なのだそうです。

インフルエンザウイルス内部の蛋白質
(ウイルス粒子の中の蛋白質、という書き方がされています)に、
「リポサム」」という脂質膜をくっつけ、
一種の「偽者ウイルス」を合成。
それを人間の免疫遺伝子を取り込ませたマウスに打ったところ、
新型インフルエンザの想定される型を含む、
複数のインフルエンザ感染に効果があった、
ということのようです。
数年以内に実用化されることが期待される、
と記事は結ばれています。

皆さんはこの報道をどう思われますか?

「科学の技術は素晴らしいのね。
そのうちインフルエンザなんて恐い病気じゃなくなるのね。
ああ良かった」、
と思われますか?

僕は幾つかの疑問を持ちました。

まず素朴な疑問です。

ワクチンというのはそもそも、
人間の身体が元々持っている、
免疫の仕組みを利用する予防法です。
その昔、ペストが大流行して多くの死者を出しましたが、
その悲惨な出来事の後で、
一度ペストに掛かったら、
二度は掛からない、
という事実が明らかになったのです。
人間の身体は、
極めて精緻な仕組みで、
一度対峙した病原体という敵に対して、
二度目はその被害を最小限に食い止める防御策を、
編み出す力があるのです。
これが免疫です。
それならば、死なない程度に弱くした病原体に感染させて、
免疫を作り、
その病気を予防してしまえばいいじゃないか、
と考えた訳です。
その時点で免疫のメカニズムなど、
全く分かってはいなかったのですから、
ある意味随分乱暴な話です。
「取り敢えずやってみればいいじゃん。
失敗したらまた別の手を考えればいいんだから」、
という乗りです。
でも失敗というのはワクチンのせいで、
却って被害者が出るということなのですから
本来はかなり乱暴な話です。
でもこれが「肉食民族のワクチンの思想」なのです。

ええと、話が脱線しました。

要するにワクチンは人間の出来る以上のことは、
端から出来ないのです。
インフルエンザのワクチンは、
インフルエンザの病原性を弱めたものを注射して、
通常のインフルエンザに掛かった時と、
同じ免疫反応を起こさせようという方法です。

でも、インフルエンザの免疫は、
あくまで個別のタイプに働くものです。

たとえば今シーズンは、
3種類のタイプのインフルエンザが、
流行していますよね。

A香港型に感染して、
ようやく治ったら、
今度はB型に感染しました、
何て話をお聞きになったことがあるでしょう。
皆さんの中にも、
そういう体験をされた方が、
多分いらっしゃると思います。

そのことが意味するものは何でしょうか?

そう、人間のインフルエンザの免疫は、
型毎に個別に作られる、
ということです。
それならどうして、
万能ワクチンを打つと、
全ての型に同時に免疫が出来るのでしょうか?

もしそういう万能ワクチンが実在するなら、
それは通常の人間の身体で起こる免疫とは、
別の仕組みを人間の身体に起こさせている、
ということになります。

報道を見る限りは、
この「万能ワクチン」はウイルスの持つ蛋白質に、
脂質膜をくっつけただけの代物のようです。
そんなものに、
どうして人間の免疫システムを、
改変するような効果があるのでしょうか?

皆さんは疑問には思われませんか?

長くなりましたので、
この話は明日に続けます。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。


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けろきち

この話題、ただ喜んでいいようには思えず、
とても気になっておりました。
明日を楽しみにしております。
by けろきち (2009-02-09 16:13) 

fujiki

けろきちさんへ
特に続報の出る様子もないし、
何かちょっと不思議な報道ですよね。
厚生労働省のサイトにも、
感染症研究所のサイトにも、
特にそれについての記載はありません。

普通こうした記事は、
論文が発表された、とか、
学会で発表された、とか、
そうしたタイミングで出るものですが、
これはそうしたことではなく、
伝聞のような記事しかありません。

あまりまだしっかりとした実体がないのに、
「新型インフルエンザで明るい話題もないと困る」、
みたいな発想で、
アドバルーン的に誰かが発信しただけなのかな、
何てそんなことも思いました。
せめて抗原の蛋白質の名前くらい、
何処かに書いていないのかと調べたのですが、
僕の見た範囲では何もありませんでした。
あまりに曖昧で不正確な内容なのが、
不思議です。

また、結構多くのブログで、
「これは素晴らしい」みたいな反応があったので、
それにもやや違和感を覚えました。
「まだ海のものとも山のものとも、
全然分からないじゃないか」、
という気がしたからです。
by fujiki (2009-02-09 21:54) 

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