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外科医の性差が手術の予後に与える影響 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
性差と手術の予後.jpg
British Medical Journal誌に、
2023年11月22日付で掲載された、
手術を行う外科医の性差が、
手術の生命予後に与える影響についての論文です。

性別を社会的に区別することが、
色々な意味で問題となる世の中ですが、
医者と患者の関係の中で、
性別や人種などの違いが、
どのような影響を与えるのかという点は、
特に欧米では議論になるところで、
多くの研究結果が報告されています。

たとえば乳癌や子宮癌、大腸癌などの検診では、
患者が女性であれば医師も女性であった方が、
受診率も上がり、検査もスムースに進む、
というデータがあり、
担当医師が女性の女性外来などを設けている医療機関が多いのは、
そうしたデータを元にしているのです。
https://aacrjournals.org/cebp/article/26/12/1804/71200/Impact-of-Patient-Provider-Race-Ethnicity-and

ただ、手術を施行する医師の性別が、
術後の生命予後にどのような影響を与えるのか、
というような事項については、
これまでにあまり明確なデータが存在していません。

そこで今回の研究では、
アメリカの医療保険のデータを活用して、
外科手術を行った医師の性別と患者の性別が、
術後の生命予後に与える影響を比較検証しています。

2902756例の手術事例のうち、
44.4%に当たる1287845例では、
患者と外科医の性別は一致しており、
41.4%に当たる1201712例は男性同士の組み合わせ、
3.0%に当たる86133例は女性同士の組み合わせでした。
患者と外科医の性別が不一致の1614911例の内訳は、
52944例が男性の患者と女性の外科医の組み合わせで、
1561967例は女性の患者と男性の外科医の組み合わせでした。

この4種類の組み合わせと術後の死亡率との比較では、
個別の群で明確な差は認められませんでした。

ここで緊急手術ではない待機的手術で解析すると、
術後30日の死亡率は、
女性の患者では性別が外科医と一致している方が、
一致していないより僅かに低く、
男性の患者では性別が外科医と一致している方が、
一致していないより僅かに高くなっていました。
ただ、この差は臨床的に意味のあるものと言えませんでした。

一方で緊急手術においては、
そうした傾向は認められませんでした。

つまり、トータルには今回の検証では、
外科医の性別と患者の性別とのマッチングは、
術後の患者の生命予後に、
明確な影響を与えていませんでした。

これを時間的な余裕のある待機的手術に限って解析すると、
やや女性の外科医と患者の組み合わせの方が、
死亡リスクが低くなる傾向を示しましたが、
緊急手術ではそうした傾向は見られませんでした。

これは術前の計画の時点での患者と医師とのコミュニケーションが、
女性同士の方がより的確に行われた可能性を、
示しているように思われます。

実際には個別の手術において、
医師の性別を選択するようなことは無理筋だと思いますが、
問題は性別の違いではなく、
患者と主治医が同じ目線で、
コミュニケーションを取ることが可能かどうかが、
重要であるのではないでしょうか?

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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