木ノ下歌舞伎「勧進帳」(2023年再演版) [演劇]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
木ノ下裕一さんが、
古典歌舞伎を現代的に大胆にアレンジして上演する、
木ノ下歌舞伎の代表的な演目の1つ「勧進帳」が、
今池袋で上演されています。
最近歌舞伎からはすっかり足が遠のいてしまいましたが、
一時期はほぼ毎月歌舞伎座に昼夜足を運んでいた時期もあったので、
歌舞伎にはそれなりに愛着があります。
歌舞伎は勿論古典ですから、
現代の感覚には合わない部分もあり、
難解な部分もあります。
歌舞伎のマニアになると、
むしろその現代の感覚と違う部分こそが、
得難い魅力に感じるのですが、
一般の多くの方にとっては、
もっと分かり易く現代に通じる作品を、
と期待する意見のあることは理解出来ます。
そこで歌舞伎を現代演劇と同じ土俵で捉え直す、
というような試みをする演劇もあり、
現行その代表的なものの1つが、
木ノ下歌舞伎です。
以前代表作の1つとされる「黒塚」を観ました。
小劇場的な演技スタイルの役者が、
軽妙なやり取りで話を進める辺りは面白かったのですが、
原作の見せ場である中段の舞踊や、
後半の荒事の部分が、
原作を超えるような新たな見せ場にはなっていない、
という点が物足りなく感じました。
単独の演劇作品としてはまずまずなのですが、
歌舞伎舞踊の「黒塚」を、
どのようにリニューアルするのだろう、
という視点で観ていると、
やや肩透かしのように感じたのです。
今回は歌舞伎の代表的人気演目の1つ「勧進帳」で、
評価も高い作品の再演ですし、
原作をどのように換骨奪胎させるのか、
楽しみにして出掛けました。
鑑賞後の感想は微妙なところで、
今にも通じる暴力と権力の悲劇として、
義経と弁慶の物語を立ち上がらせている点は、
良かったと思いますし、
富樫の人物像に絞った作劇も面白いと思います。
ただ、原作を知っていると、
一番の盛り上がりは、
勧進帳を弁慶が読み上げるところ、
中段で両群が荒事的に対峙するところ、
最後の弁慶の飛び六方、の3か所でしょ。
その3か所とも、
原作を超える盛り上がりには到底なっていないんですね。
読み上げと対峙するところは、
基本的に原作の動きに近い演出になっているんですね。
それでは芸がないな、と思いました。
そして最後の飛び六方に至っては、
カットしてしまって、
別役実さんの「壊れた風景」のような、
空虚なエンディングにしているんですね。
勿論空虚なエンディングでも良いけれど、
飛び六方は何か別の形で、
原作の最大の見せ場なのですから、
残して欲しかったな、と思いました。
弁慶を関西弁を喋る白人種の大男にしていて、
その発想自体は面白いのですが、
ビジュアル重視で演技もダンスのスキルもあまりないので、
結果として弁慶主役のドラマでは、
なくなってしまっているんですね。
それが狙いではあるのでしょうが、
それなら原作の弁慶の見せ場を、
他の見せ場に変換するような工夫が、
必要ではなかったかと思いました。
総じてスタイリッシュな演出で、
個々のキャストの演技も練り上げられていて、
戦争の時代の現代に繋がるテーマ性も良かったと思います。
ただ、歌舞伎の人気作の「勧進帳」の新演出として考えると、
どうしても主役不在の物足りなさを感じてしまいました。
木ノ下さんの考える歌舞伎とは、
僕は少し相性が悪いようです。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
木ノ下裕一さんが、
古典歌舞伎を現代的に大胆にアレンジして上演する、
木ノ下歌舞伎の代表的な演目の1つ「勧進帳」が、
今池袋で上演されています。
最近歌舞伎からはすっかり足が遠のいてしまいましたが、
一時期はほぼ毎月歌舞伎座に昼夜足を運んでいた時期もあったので、
歌舞伎にはそれなりに愛着があります。
歌舞伎は勿論古典ですから、
現代の感覚には合わない部分もあり、
難解な部分もあります。
歌舞伎のマニアになると、
むしろその現代の感覚と違う部分こそが、
得難い魅力に感じるのですが、
一般の多くの方にとっては、
もっと分かり易く現代に通じる作品を、
と期待する意見のあることは理解出来ます。
そこで歌舞伎を現代演劇と同じ土俵で捉え直す、
というような試みをする演劇もあり、
現行その代表的なものの1つが、
木ノ下歌舞伎です。
以前代表作の1つとされる「黒塚」を観ました。
小劇場的な演技スタイルの役者が、
軽妙なやり取りで話を進める辺りは面白かったのですが、
原作の見せ場である中段の舞踊や、
後半の荒事の部分が、
原作を超えるような新たな見せ場にはなっていない、
という点が物足りなく感じました。
単独の演劇作品としてはまずまずなのですが、
歌舞伎舞踊の「黒塚」を、
どのようにリニューアルするのだろう、
という視点で観ていると、
やや肩透かしのように感じたのです。
今回は歌舞伎の代表的人気演目の1つ「勧進帳」で、
評価も高い作品の再演ですし、
原作をどのように換骨奪胎させるのか、
楽しみにして出掛けました。
鑑賞後の感想は微妙なところで、
今にも通じる暴力と権力の悲劇として、
義経と弁慶の物語を立ち上がらせている点は、
良かったと思いますし、
富樫の人物像に絞った作劇も面白いと思います。
ただ、原作を知っていると、
一番の盛り上がりは、
勧進帳を弁慶が読み上げるところ、
中段で両群が荒事的に対峙するところ、
最後の弁慶の飛び六方、の3か所でしょ。
その3か所とも、
原作を超える盛り上がりには到底なっていないんですね。
読み上げと対峙するところは、
基本的に原作の動きに近い演出になっているんですね。
それでは芸がないな、と思いました。
そして最後の飛び六方に至っては、
カットしてしまって、
別役実さんの「壊れた風景」のような、
空虚なエンディングにしているんですね。
勿論空虚なエンディングでも良いけれど、
飛び六方は何か別の形で、
原作の最大の見せ場なのですから、
残して欲しかったな、と思いました。
弁慶を関西弁を喋る白人種の大男にしていて、
その発想自体は面白いのですが、
ビジュアル重視で演技もダンスのスキルもあまりないので、
結果として弁慶主役のドラマでは、
なくなってしまっているんですね。
それが狙いではあるのでしょうが、
それなら原作の弁慶の見せ場を、
他の見せ場に変換するような工夫が、
必要ではなかったかと思いました。
総じてスタイリッシュな演出で、
個々のキャストの演技も練り上げられていて、
戦争の時代の現代に繋がるテーマ性も良かったと思います。
ただ、歌舞伎の人気作の「勧進帳」の新演出として考えると、
どうしても主役不在の物足りなさを感じてしまいました。
木ノ下さんの考える歌舞伎とは、
僕は少し相性が悪いようです。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
2023-09-10 16:01
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