口蓋裂の適切な手術時期は? [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
the New England Journal of Medicine誌に、
2023年8月31日付で掲載された、
口蓋裂という頻度の多い先天異常の、
治療開始時期についての論文です。
上の唇が左右に分かれている「口唇裂」と、
咽喉の奥の口蓋と呼ばれる部分が左右に分かれていて、
鼻腔と口腔が繋がっている「口蓋裂」は、
先天的な外面の異常の中では、
非常に頻度の多いものとして知られています。
妊娠中の風疹感染などが原因となることもありますが、
その多くは原因は不明です。
また他の先天異常と合併することも多く、
その場合症候群として病名が付けられているものもあります。
その治療は手術ですが、
口唇裂の閉鎖手術が生後3から6か月で施行されることが多いのと比較して、
口蓋裂の形成手術は言葉を覚え始めるくらいの時期が良いとされ、
通常生後1歳以降の時期に施行されています。
この形成手術の目的は、
鼻腔と咽頭を分離して、
スムースな言語発達を促すことですが、
上記文献の記載によると、
形成手術後も鼻咽喉閉鎖機能不全が、
およそ3割のお子さんで認められると報告されています。
言語発達への準備は早い方が良く、
そのため口蓋裂の形成手術も、
もっと早い時期に行うべきではないか、
という見解があります。
それでは従来より早期に手術を施行すれば、
鼻咽喉閉鎖機能不全のリスクも低下するのでしょうか?
その問題を検証する目的で、
今回の臨床研究では、
ヨーロッパ及び南米の23か所の専門施設において、
他の先天異常を伴わない口蓋裂のお子さん、
トータル558例をくじ引きで2つの群に分けると、
一方は生後6か月で早期の手術を施行し、
もう一方は通常の生後12か月での手術を施行して、
5歳の時点での鼻咽喉機能を比較検証しています。
その結果、
5歳の時点での鼻咽喉閉鎖機能不全は、
6か月の早期手術群では8.9%であったのに対して、
12か月の従来手術群では15.0%で、
早期手術は従来手術と比較して、
5歳時での鼻咽喉閉鎖機能不全のリスクを、
41%(95%CI:0.36から0.99)有意に低下させていました。
これは敢くまで他の先天異常を合併しない、
口蓋裂単独事例のみでの検証である点に注意が必要ですが、
生後6か月の早期に手術を行った方が、
その後の鼻咽喉機能的に見た予後が良い、
という今回の結果は興味深く、
今後の治療指針にも、
少なからず影響を与える可能性がありそうです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
the New England Journal of Medicine誌に、
2023年8月31日付で掲載された、
口蓋裂という頻度の多い先天異常の、
治療開始時期についての論文です。
上の唇が左右に分かれている「口唇裂」と、
咽喉の奥の口蓋と呼ばれる部分が左右に分かれていて、
鼻腔と口腔が繋がっている「口蓋裂」は、
先天的な外面の異常の中では、
非常に頻度の多いものとして知られています。
妊娠中の風疹感染などが原因となることもありますが、
その多くは原因は不明です。
また他の先天異常と合併することも多く、
その場合症候群として病名が付けられているものもあります。
その治療は手術ですが、
口唇裂の閉鎖手術が生後3から6か月で施行されることが多いのと比較して、
口蓋裂の形成手術は言葉を覚え始めるくらいの時期が良いとされ、
通常生後1歳以降の時期に施行されています。
この形成手術の目的は、
鼻腔と咽頭を分離して、
スムースな言語発達を促すことですが、
上記文献の記載によると、
形成手術後も鼻咽喉閉鎖機能不全が、
およそ3割のお子さんで認められると報告されています。
言語発達への準備は早い方が良く、
そのため口蓋裂の形成手術も、
もっと早い時期に行うべきではないか、
という見解があります。
それでは従来より早期に手術を施行すれば、
鼻咽喉閉鎖機能不全のリスクも低下するのでしょうか?
その問題を検証する目的で、
今回の臨床研究では、
ヨーロッパ及び南米の23か所の専門施設において、
他の先天異常を伴わない口蓋裂のお子さん、
トータル558例をくじ引きで2つの群に分けると、
一方は生後6か月で早期の手術を施行し、
もう一方は通常の生後12か月での手術を施行して、
5歳の時点での鼻咽喉機能を比較検証しています。
その結果、
5歳の時点での鼻咽喉閉鎖機能不全は、
6か月の早期手術群では8.9%であったのに対して、
12か月の従来手術群では15.0%で、
早期手術は従来手術と比較して、
5歳時での鼻咽喉閉鎖機能不全のリスクを、
41%(95%CI:0.36から0.99)有意に低下させていました。
これは敢くまで他の先天異常を合併しない、
口蓋裂単独事例のみでの検証である点に注意が必要ですが、
生後6か月の早期に手術を行った方が、
その後の鼻咽喉機能的に見た予後が良い、
という今回の結果は興味深く、
今後の治療指針にも、
少なからず影響を与える可能性がありそうです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2023-09-04 14:29
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