タニノクロウ「虹む街の果て」 [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
2021年に上演されたタニノクロウさんの「虹む街」の続編が、
神奈川芸術劇場(KAAT)で先月上演されました。
その上演に足を運びました。
タニノクロウさんは演劇界に君臨する怪人の1人で、
主に庭劇団ぺ二ノとして公演されるその作品は、
常人の理解を超えることが殆どで、
それでも繰り出される奇怪なイメージの見事さや、
奔流のような幻想的なビジョン、
タニノクロウさんの脳内を、
覗き込んでいるような不思議な感覚が、
その作品の出来不出来を超えて、
他の芝居にはない、
唯一無二の観劇体験を成立させています。
2021年に上演された「虹む街」は、
KAATの中スタジオにリアルな横浜の飲み屋街をセットで再現し、
そこにある古いコインランドリーの閉店の1日を描いた、
タニノさんが時折上演する、
市井の人間スケッチのようなスタイルの作品で、
プロの役者さんも多く登場しているのに、
そうした役者さんにはまともな芝居を殆どさせず、
洗濯機のような機械や、
素人の役者さんの方に、
より人間的な役割が振られているという、
タニノさんらしい意地悪な作品でした。
正直少し物足りない感じがあったのですが、
今回はほぼ同じセットを使用しながら、
前作から100年後の未来の話として設定されていて、
全てが緑に変色して朽ちたセットの中で、
全員素人で国籍も人種の種々雑多なキャストが、
前作より徹底してシュールな世界を、
ほぼ無言劇に近い形式で演じています。
これは間違いなく前作より面白い作品となっていて、
タニノさんらしい新たなディストピアが、
また誕生したという感がありました。
最初にキャストがずらりと並んで自己紹介をして、
中国語を話す女性が司会進行をし、
内容はモニターに表示されます。
演出の意図が不明で当惑しながら稽古した、
というような台詞があり、
それが最後のカーテンコールでも繰り返されます。
要するにキャストは操り人形であって、
タニノさんに意味不明のことをやらされているのだ、
ということを明確にしているのですね。
これはおそらく自虐ということではなくて、
タニノさんの脳内のことなど誰も分からず、
その不条理な世界を、
キャストと観客は同一目線で、
それぞれ違う役割を振られながら旅をしている、
という意味なのですね。
観客と役者が一体であって、
タニノさんの脳内幻想だけが他者であるという、
これはそうした新しい演劇の形なのです。
人間としてのキャストも人種を含め多種多様で、
前作と同じように感情を持つ自販機などの機械、
人間が扮したロボット、
モニター内に登場するゴキブリ、
そして意志を持つ隕石のようなスマイリー親子なども、
人間と同じ重みで加わります。
相変わらず観客の生理は無視したような独特のテンポ感で、
作品は展開されますが、
今回はモニターを使用して、
ある程度の解説が表示されるので、
いつもよりは親切で、
ノイズやパーカッション、歌など、
音効にも配慮があって、
タニノ作品としてはかなり観客に優しく、
見やすい作品となっていたと思います。
以前は性的なイメージや残酷なイメージが、
かなり全面に登場したタニノ作品ですが、
そうした要素は今回は殆ど皆無と言って良いほど切り詰められていて、
言語や人種などの多様性が意識されている点は、
さすが時代を読む目も確かだと思いますし、
そうしたイメージの手足を縛られた状態であっても、
不気味で戦慄的なスマイリー親子など、
新たなイメージが展開されている点はさすがです。
正直タニノ作品の本領という感じではないのですが、
それでも随所にタニノ作品ならではの魅力はあり、
その唯一無二の世界を堪能することが出来ました。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は日曜日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
2021年に上演されたタニノクロウさんの「虹む街」の続編が、
神奈川芸術劇場(KAAT)で先月上演されました。
その上演に足を運びました。
タニノクロウさんは演劇界に君臨する怪人の1人で、
主に庭劇団ぺ二ノとして公演されるその作品は、
常人の理解を超えることが殆どで、
それでも繰り出される奇怪なイメージの見事さや、
奔流のような幻想的なビジョン、
タニノクロウさんの脳内を、
覗き込んでいるような不思議な感覚が、
その作品の出来不出来を超えて、
他の芝居にはない、
唯一無二の観劇体験を成立させています。
2021年に上演された「虹む街」は、
KAATの中スタジオにリアルな横浜の飲み屋街をセットで再現し、
そこにある古いコインランドリーの閉店の1日を描いた、
タニノさんが時折上演する、
市井の人間スケッチのようなスタイルの作品で、
プロの役者さんも多く登場しているのに、
そうした役者さんにはまともな芝居を殆どさせず、
洗濯機のような機械や、
素人の役者さんの方に、
より人間的な役割が振られているという、
タニノさんらしい意地悪な作品でした。
正直少し物足りない感じがあったのですが、
今回はほぼ同じセットを使用しながら、
前作から100年後の未来の話として設定されていて、
全てが緑に変色して朽ちたセットの中で、
全員素人で国籍も人種の種々雑多なキャストが、
前作より徹底してシュールな世界を、
ほぼ無言劇に近い形式で演じています。
これは間違いなく前作より面白い作品となっていて、
タニノさんらしい新たなディストピアが、
また誕生したという感がありました。
最初にキャストがずらりと並んで自己紹介をして、
中国語を話す女性が司会進行をし、
内容はモニターに表示されます。
演出の意図が不明で当惑しながら稽古した、
というような台詞があり、
それが最後のカーテンコールでも繰り返されます。
要するにキャストは操り人形であって、
タニノさんに意味不明のことをやらされているのだ、
ということを明確にしているのですね。
これはおそらく自虐ということではなくて、
タニノさんの脳内のことなど誰も分からず、
その不条理な世界を、
キャストと観客は同一目線で、
それぞれ違う役割を振られながら旅をしている、
という意味なのですね。
観客と役者が一体であって、
タニノさんの脳内幻想だけが他者であるという、
これはそうした新しい演劇の形なのです。
人間としてのキャストも人種を含め多種多様で、
前作と同じように感情を持つ自販機などの機械、
人間が扮したロボット、
モニター内に登場するゴキブリ、
そして意志を持つ隕石のようなスマイリー親子なども、
人間と同じ重みで加わります。
相変わらず観客の生理は無視したような独特のテンポ感で、
作品は展開されますが、
今回はモニターを使用して、
ある程度の解説が表示されるので、
いつもよりは親切で、
ノイズやパーカッション、歌など、
音効にも配慮があって、
タニノ作品としてはかなり観客に優しく、
見やすい作品となっていたと思います。
以前は性的なイメージや残酷なイメージが、
かなり全面に登場したタニノ作品ですが、
そうした要素は今回は殆ど皆無と言って良いほど切り詰められていて、
言語や人種などの多様性が意識されている点は、
さすが時代を読む目も確かだと思いますし、
そうしたイメージの手足を縛られた状態であっても、
不気味で戦慄的なスマイリー親子など、
新たなイメージが展開されている点はさすがです。
正直タニノ作品の本領という感じではないのですが、
それでも随所にタニノ作品ならではの魅力はあり、
その唯一無二の世界を堪能することが出来ました。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
2023-06-11 17:26
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