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断続的絶食と食事時間制限併用の有効性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
間欠的絶食と食事時間制限の有効性.jpg
Nature Medicine誌に、
2023年4月6日ウェブ掲載された、
食事の時間や量の調整による、
耐糖能改善効果についての論文です。

栄養素のバランスを保ちつつ、
摂取カロリーを制限する低カロリー食は、
長く2型糖尿病の食事療法の定番でした。
その場合1日しっかり3食を定期的に摂ることが、
健康のために重要であるとされて来ました。

確かにインスリン治療やSU剤のような、
低血糖のリスクの高い治療薬を使用中には、
食事の間隔を長くしたり、一時的に絶食することは、
低血糖のリスクを高めるので禁忌でした。

しかし、人間は本当に3食を毎日摂った方が健康的なのでしょうか?
それがあるべき食事のパターンなのでしょうか?
それはまだ解決されていない問題です。

地域や文化や時代の違いにより、
食事習慣は様々で、
1日3食が標準的な食事であるとはとても言えません。
従って、糖尿病の患者さんでも、
血糖降下剤は使用していなかったり、
低血糖リスクの低い薬剤のみ使用している場合には、
1日3食摂ることがベストとは言えません。

最近その点で注目されているのが、
ある程度定期的に食事を摂らない期間を作る、
間欠的絶食(Intermittennt Fasting)と、
1日のうちで食事をしない時間を作る時間制限食(Time-restricted Eating)です。

従来は良くないこととされていた長時間の禁食が、
実は身体の代謝をリセットして、
むしろ糖尿病に対しても良い効果があるのでは、
という知見が多く発表されるようになったのです。

食事療法についての常識は、
間違いなくアップデートされたのです。

ただ、間欠的絶食は良いとして、
食事時間を制限することの効果については、
様々なデータが発表されていて、
その結果にはかなりの差異があるのが実際です。
夜は食事を摂らない、というのが、
一般常識的にも「そうかなあ」と思うところですし、
理に適っているような気はするのですが、
食事制限の時間帯でその有効性に差はないという結果もありますし、
むしろ夜食事をした方が代謝が改善する、というような、
真逆な結果も報告されていて、
その辺りの状況はまだ混沌としています。

今回の研究はオーストラリアにおいて、
診断はされていないものの、
2型糖尿病の発症リスクが高いと判断された209名の一般住民を対象として、
くじ引きで3つの群に分けると、
減量に関するパンフレットを渡すだけのコントロール群と、
摂取エネルギーをそれまでの7割に減らすカロリー制限群、
そして週3日食事の時間を朝8時から12時までに制限し、
その日の朝と昼の食事もそれまでの3割に減らす、
断続的絶食+食事時間制限群に分けて、
その生活を6か月間継続しました。

その結果、
カロリー制限群も断続的絶食+食事時間制限群も、
コントロール群と比較して同程度の体重減少効果が認められました。
その一方で食事負荷試験で計測された食後の血糖上昇は、
カロリー制限群よりも、
断続的絶食+食事時間制限群でより強く抑制されていました。

つまり、
継続可能なレベルでカロリー制限のみを行うよりも、
週3日のみ超低カロリーとして、
食事時間を午前中のみに制限する方が、
より糖代謝に対する改善効果は高かった、
という結果です。

この研究のポイントは、
6か月という長期の介入を行って、
その間の栄養状態など、
トータルな健康状態に問題がないことを確認している点が、
最も重要な知見で、
今後こうした知見を元にして、
本当の意味で健康的な、
食事療法が確立されることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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