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白内障の両眼同時手術の有効性と安全性について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
白内障手術の形式と安全性.jpg
Lancet誌に2023年5月13日ウェブ掲載された、
白内障手術の方法を比較した論文です。

白内障は年齢を重ねるに伴って、
全ての人に起こると言って良い、
非常に一般的な加齢性の変化です。

その治療は通常は手術によって、
加齢により老化した水晶体(レンズ)を吸引するようにして除去し、
代わりに人工のレンズを挿入することによって行われます。

ただ、高齢者の白内障は多くの場合、
両方の目に程度の差はあっても、
同じように起こりますから、
両眼の手術が必要となることが多いのです。

その場合、
まず片眼の手術をして、
1週間かそれ以上の間隔をおいて、
もう一方の目を手術する、
という方法が広く行われて来ました。

その一方で、結果として時間差で両目の手術をするのであれば、
最初から同時に両目の手術を行った方が、
より効率的ではないのか、という意見があり、
治療技術の進歩もあってその環境も整ったことから、
両眼の同時手術も施設によっては国内でも施行されています。

ただ、人工レンズは生体の水晶体とは異なり、
自由に焦点を調節するようなことは出来ません。
1つもしくはせいぜい2つの焦点距離を持っているだけです。
従って、良かれと思って手術を施行しても、
実際の見え方が改善しないなど、
結果が奏功しないこともあり得ます。
そうしたことを考えると、
まず片眼の手術をして、
状態や症状の改善を確認してから、
もう一方の目の手術をするという方法も、
一定の考慮に値するという言い方は出来ます。

今回の検証はオランダの複数施設において、
両眼の白内障手術を予定していて、
眼内の炎症や極端な挿入予定の眼内レンズの焦点距離の差がない、
865例の患者をくじ引きで2つの群に分けると、
一方は両眼の同時手術を施行し、
もう一方は片眼の手術の2週間後にもう一方の手術を施行して、
その経過を比較検証しています。

その結果、
時間をおいた手術でも両眼同時手術でも、
その成功率や安全性に明確な差は認められませんでした。
その一方で当然のことですが、
手術に掛かったトータルな医療費は、
両眼同時手術が有意に低くなっていました。

今後こうしたデータを元にして、
両眼同時手術が白内障手術のスタンダードになる可能性が高い、
というように思われます。

ただ、ここからは個人的な経験からの見解になりますが、
実際には片眼の手術後に、
見え方に納得がいかないと言われる患者さんは意外に多く、
そのことを考えると、
片眼の手術後にその経過をみて、
もう一方の手術の適否を考えるという方針も、
考慮には値するような気もします。

この問題はより患者さん目線で、
考える必要があるのではないでしょうか?

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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