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ベンゾジアゼピンの減量中止に伴う症状の特徴について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ベンゾジアゼピンの減量中止時のリスク.jpg
Therapeutic Advance in Psychopharmacology誌に、
2023年2月6日掲載された、
ベンゾジアゼピン減量中止時に、
発症する症状についての論文です。

ベンゾジアゼピンは、
商品名では抗不安薬のセルシン、
デパス、ソラナックス、ワイパックス、レキソタン、
睡眠導入剤の、
ハルシオン、レンドルミン、サイレース、
ユーロジンなどがこれに当たり、
その即効性と確実な効果から、
非常に幅広く使用されている薬剤です。

その効果はGABAという、
鎮静系の神経伝達物質の受容体に似た、
ベンゾジアゼピンの受容体に、
薬剤が結合することによってもたらされ、
不安障害の症状を軽減する作用と、
眠りに入るまでの時間を短縮する作用については、
精度の高い臨床試験により、
その効果が確認されています。

その発売以前に、
同様の目的に使用されていた薬剤と比較すると、
ベンゾジアゼピンは副作用も少なく、
使い易い薬であったため、
またたく間に世界中に広がりました。

特にストレスの強い先進国において、
ベンゾジアゼピンの使用頻度は高まりました。

ところが…

ベンゾジアゼピンの問題点が、
近年クローズアップされるようになりました。

このタイプの薬には常用性と依存性があり、
特に長く使用していると止めることが困難で、
次第にその使用量は増えがちになりますし、
急に薬を中断すると、
強い離脱症状が起こることがあります。

一方でこの薬の持つ鎮静作用は、
高齢者においては、
認知機能や運動機能の低下をもたらし、
認知症のリスクを高めたり、
生命予後を悪化させたり、
特に転倒や骨折のリスクを増加させる、
という複数の疫学データが存在しています。

そのため、一時は広く使用されたベンゾジアゼピンですが、
最近では継続的な使用は極力避け、
数か月程度の一時的な使用に限ると共に、
長期連用している患者さんにおいては、
慎重に減量して離脱を図ることが推奨されています。

しかし、ベンゾジアゼピンの特殊性として、
薬を減量、離脱した時に、
一時的に生じる離脱症状に加えて、
長期化した離脱症状とでも言うべき、
数年以上持続する体調不良が存在する、
という指摘があります。

これはアシュトンらにより、
1990年代初頭に報告された現象で、
その後も同様の指摘はあるものの、
そのメカニズムを含めて、
その実態は未だに不明の点が多いのが実際です。

今回の研究はアメリカにおいて、
インターネットで収集された1207名のベンゾジアゼピン利用者の、
薬剤減量もしくは中止に伴う症状の経過を検証しているものです。

その結果、
離脱症状として報告頻度の高かった、
全身の震え、幻覚、痙攣などの症状は、
数日間から数週間の持続期間で消退していました。

一方で、緊張や不安、恐怖感、睡眠障害、
意欲低下、集中力低下などの症状は、時に記憶障害を伴い、
数か月から数年と長期残存していました。

つまり、ベンゾジアゼピンの減量中止時の離脱症状には、
短期的なものと長期的なものの2種類があり、
各々別の性質を持っている可能性が高いと考えられました。

ベンゾジアゼピンの離脱症状にはまだ不明の点が多いのですが、
今後こうした検証が積み重ねられることにより、
より安全にベンゾジアゼピンからの離脱が図れるような、
治療法の確立に繋がることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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