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重症市中肺炎におけるステロイド治療の生命予後への影響 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
重症市中肺炎におけるステロイド治療の有効性.jpg
the New England Journal of Medicine誌に、
2023年3月21日掲載された、
重症市中肺炎に対する、
ステロイド治療の有効性についての論文です。

肺炎は特に高齢者では、
死亡の原因としても大きな比率を占め、
新型コロナウイルス感染症やインフルエンザなどのウイルス感染症罹患時にも、
ウイルス肺炎もしくは細菌性肺炎の合併として、
その予後に大きな影響を与えます。

肺炎においては、
全身的な炎症の増悪が、
その予後に大きく関わっています。
そのため、強い抗炎症作用と免疫調整作用を持つ、
ステロイド(糖質コルチコイド)が、
重症の事例においてはしばしば使用されています。

その使用により、
一定の予後改善効果が得られたとする報告が多いのですが、
死亡リスクについては、
多くの臨床データで明確な差が見られていません。

そこで今回の研究では、
フランスの複数施設において、
集中治療室管理となった重症肺炎の患者、
トータル800名を、
患者にも治療者にも分からないように、
くじ引きで2つの群に分けると、
抗菌剤や呼吸のサポートなどの通常の治療に加えて、
一方は糖質コルチコイドのハイドロコルチゾンを、
1日200㎎で4日もしくは8日経静脈投与して、
その後8から14日を掛けて漸減中止し、
もう一方は同じように偽薬を使用、
試験開始後28日の時点での死亡率を比較しています。

その結果、
ステロイド使用群400名中、
6.2%に当たる25名が死亡したのに対して、
偽薬使用群の395名中11.9%に当たる47名が死亡していて、
絶対リスクで5.6%(95%CI:-9.6から-1.7)、
ステロイドの使用は有意に死亡リスクを低下させていました。

このように、
比較的重症の肺炎事例に限った今回の研究では、
ステロイドの使用により、
患者の生命予後は明確に改善していて、
今後重症感染症におけるステロイド治療の位置づけは、
より高いものになりそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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