ヘンデル「シッラ」(神奈川県立音楽堂室内オペラプロジェクト第5弾) [オペラ]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は祝日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
神奈川県立音楽堂の室内オペラプロジェクト第5弾として、
2020年に一旦予定されながらコロナ禍のため中止となった、
ヘンデルの初期のオペラ「シッラ」が、
今回2年ぶりに上演が実現しました。
神奈川県立音楽堂は、
横浜の丘の上にある古いホールで、
上野の文化会館をうんと小ぶりにしたような雰囲気ですが、
時々思い切った魅力的な企画を実現させてくれます。
中でも2006年にたった1回のみ上演された、
ヴィヴァルディの「バヤゼット」は、
イタリアの気鋭のバロック音楽アンサンブル「エウローパ・ガランテ」が、
音楽監督ファビオ・ビオンディの采配による、
ワクワクするような躍動感ある演奏を聴かせ、
ジュノーやバルチェローナを始めとする、
綺羅星の如き歌手陣が、
名唱を披露しました。
僕がこれまで生で聴いた中では、
日本のオペラ上演で最高の舞台だったと断言出来ます。
続いて2015年にヴィヴァルディの「メッセニアの神託」が、
同じビオンディの「エウローパ・ガランテ」が音楽監督を務め、
「バヤゼット」で最高の歌唱を聴かせたヴィヴィカ・ジュノーが、
2006年以来の再登板。
それに、若手では最高のアジリタ歌いと世評の高い、
ロシアのメゾ、ユリア・レーシネヴァが加わって再度上演されました。
これも物凄く期待して音楽堂に足を運びました。
ただ、「バヤゼット」がほぼ演奏会形式であったのと比較して、
「メッセニアの信託」は能を模した演出がされていて、
それがやや中途半端なものに感じました。
「バヤゼット」はストーリーはあるものの、
それは二の次の歌合戦的妙味があって、
見事なアリアの後は拍手喝采でカーテンコールという感じで、
それでとても楽しかったのですが、
「メッセニアの信託」では物語がどうも中途半端で、
その高揚感を邪魔していました。
レーシネヴァの超絶技巧のアリアは抜群で、
それだけで元は取ったという気分にはなったのですが、
ジュノーは主役ではあるものの、
超絶技巧のアリアなどはなく、
その点も物足りなく感じました。
そして今回の「シッラ」ですが、
今回はヘンデルの最初期のオペラで、
実際には上演されたかどうかも不明という、
かなりレアな作品です。
音楽監督はこれまでと同じファビオ・ビオンディで、
演奏も勿論エウローパ・ガランテです。
歌手陣もヴィヴィカ・ジュノーが再登板。
他のキャストも実力派揃いです。
一度は2020年に上演が予定されたものの、
新型コロナの再拡大のために直前で中止となり、
今回奇跡的に再上演がかないました。
期待に胸を膨らませて会場入りしたのですが、
プレトークを聞いてみたところ、
衣装は歌舞伎スタイルで顔は白塗りの隈取、
演技も歌舞伎を取り入れてスペクタクル化する、
ということだったので、
「ええっ! 演奏会形式の方がいいんじゃないの?」
と非常に危惧を感じました。
ただ、結果的には「バヤゼット」の興奮はありませんでしたが、
前回の「メッセニアの信託」よりは満足感の高い公演でした。
歌舞伎風の派手な極彩色の衣装とメイクが、
舞台面を華やかにしてくれて悪くないのと、
歌手陣も歌舞伎風の衣装とメイクに喜んで、
ノリノリでやっている感じが良かったと思います。
特に独裁者シッラを歌った、
コントラルトのソニア・プリナと、
護民官を演じたジュノーは、
歌舞伎の感情表現もかなり研究した跡が見え、
格調のある雰囲気が、
作品世界ともマッチしていて感心させられました。
ジュノーはアジリタを駆使したアリアを1幕で歌ってくれて、
絶好調の時よりスピードは落ちたかなあ、
という感じはありましたが、
その絶妙な技巧には興奮させられました。
聴きどころが多かったのは、
シッラのソニア・プリナと、
軍人を演じたヒラリー・サマーズの2人のコントラルトで、
1幕のフィナーレのサマーズのアリアは、
管楽器との絶妙な掛け合いも相俟って、
全編で最も印象的な場面になっていたと思います。
いずれにしても、
コロナ禍以降では間違いなく、
最も音楽の素晴らしさに浸れた公演で、
この試みが、
これからも是非継続されることを期待したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は祝日でクリニックは休診です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
神奈川県立音楽堂の室内オペラプロジェクト第5弾として、
2020年に一旦予定されながらコロナ禍のため中止となった、
ヘンデルの初期のオペラ「シッラ」が、
今回2年ぶりに上演が実現しました。
神奈川県立音楽堂は、
横浜の丘の上にある古いホールで、
上野の文化会館をうんと小ぶりにしたような雰囲気ですが、
時々思い切った魅力的な企画を実現させてくれます。
中でも2006年にたった1回のみ上演された、
ヴィヴァルディの「バヤゼット」は、
イタリアの気鋭のバロック音楽アンサンブル「エウローパ・ガランテ」が、
音楽監督ファビオ・ビオンディの采配による、
ワクワクするような躍動感ある演奏を聴かせ、
ジュノーやバルチェローナを始めとする、
綺羅星の如き歌手陣が、
名唱を披露しました。
僕がこれまで生で聴いた中では、
日本のオペラ上演で最高の舞台だったと断言出来ます。
続いて2015年にヴィヴァルディの「メッセニアの神託」が、
同じビオンディの「エウローパ・ガランテ」が音楽監督を務め、
「バヤゼット」で最高の歌唱を聴かせたヴィヴィカ・ジュノーが、
2006年以来の再登板。
それに、若手では最高のアジリタ歌いと世評の高い、
ロシアのメゾ、ユリア・レーシネヴァが加わって再度上演されました。
これも物凄く期待して音楽堂に足を運びました。
ただ、「バヤゼット」がほぼ演奏会形式であったのと比較して、
「メッセニアの信託」は能を模した演出がされていて、
それがやや中途半端なものに感じました。
「バヤゼット」はストーリーはあるものの、
それは二の次の歌合戦的妙味があって、
見事なアリアの後は拍手喝采でカーテンコールという感じで、
それでとても楽しかったのですが、
「メッセニアの信託」では物語がどうも中途半端で、
その高揚感を邪魔していました。
レーシネヴァの超絶技巧のアリアは抜群で、
それだけで元は取ったという気分にはなったのですが、
ジュノーは主役ではあるものの、
超絶技巧のアリアなどはなく、
その点も物足りなく感じました。
そして今回の「シッラ」ですが、
今回はヘンデルの最初期のオペラで、
実際には上演されたかどうかも不明という、
かなりレアな作品です。
音楽監督はこれまでと同じファビオ・ビオンディで、
演奏も勿論エウローパ・ガランテです。
歌手陣もヴィヴィカ・ジュノーが再登板。
他のキャストも実力派揃いです。
一度は2020年に上演が予定されたものの、
新型コロナの再拡大のために直前で中止となり、
今回奇跡的に再上演がかないました。
期待に胸を膨らませて会場入りしたのですが、
プレトークを聞いてみたところ、
衣装は歌舞伎スタイルで顔は白塗りの隈取、
演技も歌舞伎を取り入れてスペクタクル化する、
ということだったので、
「ええっ! 演奏会形式の方がいいんじゃないの?」
と非常に危惧を感じました。
ただ、結果的には「バヤゼット」の興奮はありませんでしたが、
前回の「メッセニアの信託」よりは満足感の高い公演でした。
歌舞伎風の派手な極彩色の衣装とメイクが、
舞台面を華やかにしてくれて悪くないのと、
歌手陣も歌舞伎風の衣装とメイクに喜んで、
ノリノリでやっている感じが良かったと思います。
特に独裁者シッラを歌った、
コントラルトのソニア・プリナと、
護民官を演じたジュノーは、
歌舞伎の感情表現もかなり研究した跡が見え、
格調のある雰囲気が、
作品世界ともマッチしていて感心させられました。
ジュノーはアジリタを駆使したアリアを1幕で歌ってくれて、
絶好調の時よりスピードは落ちたかなあ、
という感じはありましたが、
その絶妙な技巧には興奮させられました。
聴きどころが多かったのは、
シッラのソニア・プリナと、
軍人を演じたヒラリー・サマーズの2人のコントラルトで、
1幕のフィナーレのサマーズのアリアは、
管楽器との絶妙な掛け合いも相俟って、
全編で最も印象的な場面になっていたと思います。
いずれにしても、
コロナ禍以降では間違いなく、
最も音楽の素晴らしさに浸れた公演で、
この試みが、
これからも是非継続されることを期待したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
2022-11-03 06:40
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