アイアムアヒーロー [映画]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で、
午前中は石田医師が外来を担当し、
午後は石原が担当する予定です。
今日は土曜日なので趣味の話題です。
今日はこちら。
同題の漫画を原作にした「アイアムアヒーロー」を、
封切りの映画館で観て来ました。
これは正統的な「ゾンビ映画」で、
ピーター・ジャクソンの怪作にして、
ホラーとしては大傑作の「ブレインデッド」を、
ちょっと彷彿とさせました。
ロメロのオリジナル「ゾンビ」のテイストも入っています。
日本制作のこうしたホラー・アクション映画としては、
相当に頑張っている部類で、
ここまではやらないだろうと、
何となくたかを括って観ていたので、
途中で思わず身を乗り出してしまいました。
日本には伝統的な怪談映画があり、
また「リング」以降、ジャパニーズホラーという、
独特の新ジャンルを開拓したのですが、
ゾンビのようなホラーアクションは、
不得手の分野だったと思いますし、
ある程度お金を掛けて、
緻密な準備をしてそうした映画を撮る、
というような機会も、
これまでにあまりなかったと思います。
その意味でこの作品は画期的なものなのです。
前例としては、
黒沢清監督の「回路」が思い当たるくらいですが、
あちらはまだジャパニーズホラーに傾斜していて、
スケール感は今回とは比べ物になりませんでした。
ただ、一般向きの映画と思って観た方は、
おそらくお怒りになると思います。
ある意味マニアのための映画で、
特殊メイクやショッカー演出、
CGなどの技術も駆使して、
ある種の絵空事でありながら、
リアルな終末像と地獄絵図をビジュアルに提示することが、
ほぼ唯一の目的であるタイプの映画なのです。
不満も勿論あって、
絶好調の前半と比較すると、
後半のアウトレットモールのシークエンスは、
密度に欠けてやや低調になります。
有村架純の役柄の意味合いが、
ラストまでボンヤリしたままで未消化のまま終わってしまうのも、
少し不満が残ります。
ただ、普通の映画として、
中身がないとか、何が言いたいのか分からないとか、
ラストが何も解決していない、
というような批評については、
これは純然たる「ゾンビ映画」というジャンル映画なので、
個人的にはそうした批判は当たらないように思います。
これは要するに世界の終わりを描いた散文詩なので、
ラストに夢も希望も解決もないのは当然なのです。
大殺戮のクライマックスから、
脱出しての放心のラストは、
上手く着地していると思います。
前半は抜群で、
特に浜松の路上を使った大モブシーンは、
ほぼ1カットで混乱した市街を、
大泉洋の視点で切り取ったビジュアルが鮮やかで、
ホラー映画の歴史に残ると言って過言ではない、
充実度を示していたと思います。
そこからタクシーの暴走に至る怒涛の展開は、
まさに疾走する終末の地獄絵図を体感させてくれます。
この辺り、はっきりと実写のライブの魅力がありながら、
CGなどの画面の加工も巧みに取り込んで、
素晴らしくスケールの大きい絵作りをしていると思います。
このこだわりは凡手ではありません。
そこに至るまでの展開も、
なかなか繊細かつ丁寧に描写されていて説得力があります。
原作と比較すると、
主人公のキャラはヲタク臭や妄想障害的な部分が薄く、
「普通の冴えない男がヒーローになる」
というテーマ性を打ち出していますが、
こうしたステレオタイプの人物描写が、
こうした映画では落着きが良いので、
これも成功であったと思います。
後半はキャラクターも凡庸で、
ゾンビの動きもステレオタイプな感じが強いので、
大分質が落ちますが、
それでも何とか踏み止まったと思いますし、
ラストのゾンビ100人以上を敵にまわした、
「ゾンビ版100人斬り」とでも言うべき大スペクタクルは、
それまでの退屈をかなり掬い取っていたと思います。
いずれにしても、
日本のホラーとしては類稀な力作で、
そうしたモノがお好きな方には、
是非にお薦めしたいと思います。
グロいゾンビなどが受け付けない方には、
絶対にお勧めは出来ません。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は土曜日で、
午前中は石田医師が外来を担当し、
午後は石原が担当する予定です。
今日は土曜日なので趣味の話題です。
今日はこちら。
同題の漫画を原作にした「アイアムアヒーロー」を、
封切りの映画館で観て来ました。
これは正統的な「ゾンビ映画」で、
ピーター・ジャクソンの怪作にして、
ホラーとしては大傑作の「ブレインデッド」を、
ちょっと彷彿とさせました。
ロメロのオリジナル「ゾンビ」のテイストも入っています。
日本制作のこうしたホラー・アクション映画としては、
相当に頑張っている部類で、
ここまではやらないだろうと、
何となくたかを括って観ていたので、
途中で思わず身を乗り出してしまいました。
日本には伝統的な怪談映画があり、
また「リング」以降、ジャパニーズホラーという、
独特の新ジャンルを開拓したのですが、
ゾンビのようなホラーアクションは、
不得手の分野だったと思いますし、
ある程度お金を掛けて、
緻密な準備をしてそうした映画を撮る、
というような機会も、
これまでにあまりなかったと思います。
その意味でこの作品は画期的なものなのです。
前例としては、
黒沢清監督の「回路」が思い当たるくらいですが、
あちらはまだジャパニーズホラーに傾斜していて、
スケール感は今回とは比べ物になりませんでした。
ただ、一般向きの映画と思って観た方は、
おそらくお怒りになると思います。
ある意味マニアのための映画で、
特殊メイクやショッカー演出、
CGなどの技術も駆使して、
ある種の絵空事でありながら、
リアルな終末像と地獄絵図をビジュアルに提示することが、
ほぼ唯一の目的であるタイプの映画なのです。
不満も勿論あって、
絶好調の前半と比較すると、
後半のアウトレットモールのシークエンスは、
密度に欠けてやや低調になります。
有村架純の役柄の意味合いが、
ラストまでボンヤリしたままで未消化のまま終わってしまうのも、
少し不満が残ります。
ただ、普通の映画として、
中身がないとか、何が言いたいのか分からないとか、
ラストが何も解決していない、
というような批評については、
これは純然たる「ゾンビ映画」というジャンル映画なので、
個人的にはそうした批判は当たらないように思います。
これは要するに世界の終わりを描いた散文詩なので、
ラストに夢も希望も解決もないのは当然なのです。
大殺戮のクライマックスから、
脱出しての放心のラストは、
上手く着地していると思います。
前半は抜群で、
特に浜松の路上を使った大モブシーンは、
ほぼ1カットで混乱した市街を、
大泉洋の視点で切り取ったビジュアルが鮮やかで、
ホラー映画の歴史に残ると言って過言ではない、
充実度を示していたと思います。
そこからタクシーの暴走に至る怒涛の展開は、
まさに疾走する終末の地獄絵図を体感させてくれます。
この辺り、はっきりと実写のライブの魅力がありながら、
CGなどの画面の加工も巧みに取り込んで、
素晴らしくスケールの大きい絵作りをしていると思います。
このこだわりは凡手ではありません。
そこに至るまでの展開も、
なかなか繊細かつ丁寧に描写されていて説得力があります。
原作と比較すると、
主人公のキャラはヲタク臭や妄想障害的な部分が薄く、
「普通の冴えない男がヒーローになる」
というテーマ性を打ち出していますが、
こうしたステレオタイプの人物描写が、
こうした映画では落着きが良いので、
これも成功であったと思います。
後半はキャラクターも凡庸で、
ゾンビの動きもステレオタイプな感じが強いので、
大分質が落ちますが、
それでも何とか踏み止まったと思いますし、
ラストのゾンビ100人以上を敵にまわした、
「ゾンビ版100人斬り」とでも言うべき大スペクタクルは、
それまでの退屈をかなり掬い取っていたと思います。
いずれにしても、
日本のホラーとしては類稀な力作で、
そうしたモノがお好きな方には、
是非にお薦めしたいと思います。
グロいゾンビなどが受け付けない方には、
絶対にお勧めは出来ません。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2016-05-14 08:06
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こんにちは。いつもブログを楽しみに見ています。(特に原発性アルドステロン症について。)
さて、アイアムアヒーローについて、先生が絶賛(?)していらっしゃるのを見て驚いてコメントしています。なぜなら、我が家の長女(20代)がこのマンガを家に持ってきてトイレで読んでいた時の衝撃が忘れられないからです。中をちょっと見て衝撃を受けてしまいました。。。。そうなのですね、終末を描いた散文詩なのですね。。。
さて、私のブログのリンクのところに先生のブログを貼らせていただいてよろしいでしょうか。よろしくお願いします。(相互リンクというわけではありません。)
by ゆま (2016-05-14 09:48)
ゆまさんへ
コメントありがとうございます。
映画は原作と比べると、
穏当な感じにはなっていると思います。
最近の漫画は非常に個性的で刺激が強いので、
本当にこれで良いのだろうか、
と疑問に思うこともあります。
あまり一般向けのものではないですね。
ホラーは昔から好きなので、
今日の記事は大分趣味が出てしまいました。
リンクはして頂いて構いません。
これからもよろしくお願いします。
by fujiki (2016-05-14 13:25)
ありがとうございます。よろしくお願いします。
by ゆま (2016-05-14 21:54)
いつも楽しく拝見させていただいております。
僕自身来年から薬剤師になる予定でして、
先生のような医療人になれたらと思っております。
また、映画や舞台も多く見ており、先生の趣味の記事もとても楽しいです。
今回はアイアムアヒーローの記事を拝見しまして、僕も同じような
感想を持っていたので思わずコメントさせていただきました。
これからも楽しく拝見させていただきたいと思います。
by 薬学部学生 (2016-05-18 13:06)
薬学部学生さんへ
コメントありがとうございます。
勉強頑張って下さい。
これからもよろしくお願いします。
by fujiki (2016-05-19 07:31)