コウモリの免疫の謎 [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今月のPNAS誌に掲載された、
コウモリの遺伝子を解析した、
興味深い論文です。
コウモリはエボラウイルスやSARSウイルスを始めとして、
多くの病原性の高いウイルスを媒介する動物として知られています。
コウモリの体内で生きているウイルスが、
その糞便などを介して、
人間にも感染を起こすのです。
それでいて、
コウモリ自身はエボラウイルスが体内にいても、
特に熱を出したり、
飛べなくなったりすることはないようです。
それは一体何故でしょうか?
今回の研究では、
その人間を含む他の哺乳類と、
コウモリとの違いが、
免疫にあるのではないかという推論の元に、
免疫系の中でもウイルス感染の防御の主力武器である、
インターフェロンというサイトカインの、
産生能の違いを解析しています。
その結果…
1型インターフェロンの遺伝子座(loci)は、
他の哺乳類のそれが350から1000kbあるのに対して、
250kb以下と極めて小さく圧縮されていて、
インターフェロンαに関して見ると、
他の哺乳類は7から18種類の遺伝子が関与しているのに対して、
たった3種類の遺伝子しか機能していません。
しかし、他の哺乳類では、
1型インターフェロンは通常は産生されず、
ウイルスが体内に侵入した時のみに、
産生されて外敵の攻撃に使用されるのに対して、
コウモリの1型インターフェロンは、
常時体内の全ての組織において、
その産生が継続されています。
人間ではインターフェロンα1のmRNA(蛋白合成を反映)は、
脾臓、肝臓、腎臓には検出されますが、
健康な状態ではそれ以外の組織では検出されません。
その一方でコウモリでは、
身体の全ての組織で検出されるのです。
要するにコウモリの体内では、
人間などの他の哺乳類では、
命に関わるような重篤な症状を来たすような、
ウイルス感染の防御に、
特化したインターフェロンのみの産生が、
常時行なわれていて、
そのためにウイルスを保有していても、
健常な状態を保つことが出来る、
ということのようです。
ただ、インターフェロンの産生増加は、
発熱などの感染症状の原因でもある訳ですから、
コウモリでは常時免疫が亢進していながら、
それが定常状態で平気でいられることの、
説明にはあまりなっていないようにも思います。
いずれにしても、
ゾウは癌抑制遺伝子が多いので癌にならず、
コウモリはインターフェロンが常時産生されているので、
ウイルス感染があっても平気など、
動物の生態を知ることは、
病気の治療や予防に有用な情報を、
提供してくれることは間違いがなく、
今後の研究の積み重ねを期待したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今月のPNAS誌に掲載された、
コウモリの遺伝子を解析した、
興味深い論文です。
コウモリはエボラウイルスやSARSウイルスを始めとして、
多くの病原性の高いウイルスを媒介する動物として知られています。
コウモリの体内で生きているウイルスが、
その糞便などを介して、
人間にも感染を起こすのです。
それでいて、
コウモリ自身はエボラウイルスが体内にいても、
特に熱を出したり、
飛べなくなったりすることはないようです。
それは一体何故でしょうか?
今回の研究では、
その人間を含む他の哺乳類と、
コウモリとの違いが、
免疫にあるのではないかという推論の元に、
免疫系の中でもウイルス感染の防御の主力武器である、
インターフェロンというサイトカインの、
産生能の違いを解析しています。
その結果…
1型インターフェロンの遺伝子座(loci)は、
他の哺乳類のそれが350から1000kbあるのに対して、
250kb以下と極めて小さく圧縮されていて、
インターフェロンαに関して見ると、
他の哺乳類は7から18種類の遺伝子が関与しているのに対して、
たった3種類の遺伝子しか機能していません。
しかし、他の哺乳類では、
1型インターフェロンは通常は産生されず、
ウイルスが体内に侵入した時のみに、
産生されて外敵の攻撃に使用されるのに対して、
コウモリの1型インターフェロンは、
常時体内の全ての組織において、
その産生が継続されています。
人間ではインターフェロンα1のmRNA(蛋白合成を反映)は、
脾臓、肝臓、腎臓には検出されますが、
健康な状態ではそれ以外の組織では検出されません。
その一方でコウモリでは、
身体の全ての組織で検出されるのです。
要するにコウモリの体内では、
人間などの他の哺乳類では、
命に関わるような重篤な症状を来たすような、
ウイルス感染の防御に、
特化したインターフェロンのみの産生が、
常時行なわれていて、
そのためにウイルスを保有していても、
健常な状態を保つことが出来る、
ということのようです。
ただ、インターフェロンの産生増加は、
発熱などの感染症状の原因でもある訳ですから、
コウモリでは常時免疫が亢進していながら、
それが定常状態で平気でいられることの、
説明にはあまりなっていないようにも思います。
いずれにしても、
ゾウは癌抑制遺伝子が多いので癌にならず、
コウモリはインターフェロンが常時産生されているので、
ウイルス感染があっても平気など、
動物の生態を知ることは、
病気の治療や予防に有用な情報を、
提供してくれることは間違いがなく、
今後の研究の積み重ねを期待したいと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2016-03-22 08:43
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コメント(4)
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Dr.Ishharaとても興味深い記事有難う御座います。
エボラ出血熱などの危険な病原体をコウモリが媒介する事は、
知っていましたが、どうしてコウモリ自身が発症しないかが
わかりました。確かに動物の生態を知る事は、病気の治療や予防
に有用ですね。
by bpd1teikichi_satoh (2016-03-22 10:21)
はじめまして
数年前のブログの中でタガメット、H2ブロッカーの効果、読ませて頂きました
私は手の親指関節が数年前から痛み
ずっと整形(リウマチ科医師)に診てもらって来ました
病院内の整形なのでリハビリも何もありません
両方同じ部分が痛いのでリウマチを疑われ
2年間、8週おきに通院
採血、レントゲン、MRIとかで観察でしたが
リウマチは陰性
一昨年の秋にSS-Aが陽性反応出て1年、観察でしたが
去年の10月に膠原病は内科なので専門医がいる病院に
転院
親指の関節に関しては膠原病医師もリウマチではないので
以前の整形外科医師に診てもらえとのことで
先日また、以前の医師に診てもらったとろ
レントゲン、過去のレントゲンと見比べ少しの変化はあるものの
骨が欠けてる、その部分に薄い影
石灰化かもね・・・と言われ手術しても治らない
上手く痛みと付き合って・・・と言われました
親指なのでどんなときでも使う指なので上手く痛みと付き合えは
納得いかずです
色々と検索し、この場に辿りつきましたが
やはりタガメットという消化器系の薬で効果あるんでしょうか?
消化器内科にも通院していて今、ランソプラゾールを処方してもらってます。
あと降圧剤も循環器内科で処方されてます。
まだ、膠原病の処方薬は飲んでません
採血のみ陽性でまだグレーです
とにかくどんな動作をしても痛むので辛いのが正直です
何か意見あれば宜しくお願いします
痛みは徐々に強くなって2年以上前からあります
そして消化器内科主治医の了解を得て今日、循環器内科主治医から
タガメットでの効果が得られるか試して飲んでみたらということで
今夜から2錠ずつ飲むことになりました
痛みが数年あったので軽減出来るか解りませんが
どんなものでしょうか。
by まきの (2016-03-22 20:54)
bpd1teikichi_satohさんへ
コメントありがとうございます。
動物の人間との違いというのは、
なかなか興味深いですね。
by fujiki (2016-03-23 09:40)
まきのさんへ
有効性は何とも言えないところがあるのですが、
肩関節の石灰化に関しては複数のデータがあります。
1か月程度継続してみて、
様子を見られるのは悪くないように思います。
by fujiki (2016-03-23 09:42)