進行前立腺癌の初期治療について [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日のため、
診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今月のLancet誌に掲載された、
前立腺癌の新しい治療の選択肢についての論文です。
前立腺癌は高齢者に多い癌で、
基本的にその予後は良いことが知られていますが、
転移をしていて発見されるような癌については、
その限りではありません。
転移のあるような前立腺癌の場合、
ホルモン療法が第一選択の治療として行われます。
これは何らかの方法により、
男性ホルモンが働かないような状態にすることで、
前立腺癌は基本的に男性ホルモンで刺激される性質があるので、
ホルモン療法により癌の進行が抑制されるのです。
ただし、ホルモン療法は永久に効果のあるものではなく、
個人差はあるものの、
多くのケースでは治療が有効でなくなる時期が訪れます。
こうしたホルモン療法に抵抗性となった癌の治療の選択肢としては、
ドセタキセル(商品名タキソテール)という抗癌剤の使用に、
一定の効果のあることが確認されています。
また、前立腺癌は骨に転移することが多く、
そのために骨折や骨の痛みが生じることがあり、
こうした骨の症状を緩和する目的で、
ビスフォスフォネートと呼ばれる骨吸収の抑制剤が、
使用され、これも一定の効果が確認されています。
ドセタキセルとビスフォスフォネートの使用は、
現行のガイドラインでは、
ホルモン療法が無効になったケースに限って、
その使用が推奨されています。
しかし、元々転移のある癌の予後は悪く、
ホルモン療法はいずれ無効になる可能性が高いとすれば、
最初からドセタキセルやビスフォスフォネートを、
ホルモン療法と一緒に使用した方が、
より患者さんの予後の改善に結び付くのではないでしょうか?
今回の研究では、
その推論を検証する目的で、
診断時に既に転移があったり、そのリスクの高い前立腺癌の患者さん、
トータル2962名をくじ引きで4つのグループに振り分け、
第1のグループはホルモン療法のみを最低でも2年間継続し、
第2のグループはホルモン療法に加えてビスフォスフォネートを使用し、
第3のグループはホルモン療法に加えてドセタキセルを使用し、
第4のグループはホルモン療法とビスフォスフォネートとドセタキセルを、
全て併用して、平均で43カ月の経過観察を行なっています。
症例はイギリスとスイスの複数施設で登録されていて、
年齢制限はありませんが、
平均年齢は65歳なので比較的若い年齢層に施行されています。
その結果…
ホルモン療法のみでの生存期間の中央値は71カ月であったのに対して、
ビスフォスフォネートのみ併用群では、
事前に決められた改善基準を満たさず、
ドセタキセルのみの併用群では、
生存期間の中央値は81カ月と有意に延長し、
ドセタキセルとビスフォスフォネートの併用群では、
生存期間の中央値は76カ月に延長していました。
ビスフォスフォネートを上乗せで使用しても、
生活レベルの改善に結び付くような、
骨筋肉系の症状の有意な改善は認められず、
顎骨壊死などの合併症は明らかに多く認められました。
今回の結果からは、
進行した前立腺癌に対する、
症状緩和目的のビスフォスフォネートの使用には、
全く意義は認められず、
その一方でホルモン療法と同時にドセタキセルによる化学療法を併用すると、
有意な予後の改善効果が認められました。
今後議論の上、
ガイドラインの変更に結び付く知見となるかも知れません。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は水曜日のため、
診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今月のLancet誌に掲載された、
前立腺癌の新しい治療の選択肢についての論文です。
前立腺癌は高齢者に多い癌で、
基本的にその予後は良いことが知られていますが、
転移をしていて発見されるような癌については、
その限りではありません。
転移のあるような前立腺癌の場合、
ホルモン療法が第一選択の治療として行われます。
これは何らかの方法により、
男性ホルモンが働かないような状態にすることで、
前立腺癌は基本的に男性ホルモンで刺激される性質があるので、
ホルモン療法により癌の進行が抑制されるのです。
ただし、ホルモン療法は永久に効果のあるものではなく、
個人差はあるものの、
多くのケースでは治療が有効でなくなる時期が訪れます。
こうしたホルモン療法に抵抗性となった癌の治療の選択肢としては、
ドセタキセル(商品名タキソテール)という抗癌剤の使用に、
一定の効果のあることが確認されています。
また、前立腺癌は骨に転移することが多く、
そのために骨折や骨の痛みが生じることがあり、
こうした骨の症状を緩和する目的で、
ビスフォスフォネートと呼ばれる骨吸収の抑制剤が、
使用され、これも一定の効果が確認されています。
ドセタキセルとビスフォスフォネートの使用は、
現行のガイドラインでは、
ホルモン療法が無効になったケースに限って、
その使用が推奨されています。
しかし、元々転移のある癌の予後は悪く、
ホルモン療法はいずれ無効になる可能性が高いとすれば、
最初からドセタキセルやビスフォスフォネートを、
ホルモン療法と一緒に使用した方が、
より患者さんの予後の改善に結び付くのではないでしょうか?
今回の研究では、
その推論を検証する目的で、
診断時に既に転移があったり、そのリスクの高い前立腺癌の患者さん、
トータル2962名をくじ引きで4つのグループに振り分け、
第1のグループはホルモン療法のみを最低でも2年間継続し、
第2のグループはホルモン療法に加えてビスフォスフォネートを使用し、
第3のグループはホルモン療法に加えてドセタキセルを使用し、
第4のグループはホルモン療法とビスフォスフォネートとドセタキセルを、
全て併用して、平均で43カ月の経過観察を行なっています。
症例はイギリスとスイスの複数施設で登録されていて、
年齢制限はありませんが、
平均年齢は65歳なので比較的若い年齢層に施行されています。
その結果…
ホルモン療法のみでの生存期間の中央値は71カ月であったのに対して、
ビスフォスフォネートのみ併用群では、
事前に決められた改善基準を満たさず、
ドセタキセルのみの併用群では、
生存期間の中央値は81カ月と有意に延長し、
ドセタキセルとビスフォスフォネートの併用群では、
生存期間の中央値は76カ月に延長していました。
ビスフォスフォネートを上乗せで使用しても、
生活レベルの改善に結び付くような、
骨筋肉系の症状の有意な改善は認められず、
顎骨壊死などの合併症は明らかに多く認められました。
今回の結果からは、
進行した前立腺癌に対する、
症状緩和目的のビスフォスフォネートの使用には、
全く意義は認められず、
その一方でホルモン療法と同時にドセタキセルによる化学療法を併用すると、
有意な予後の改善効果が認められました。
今後議論の上、
ガイドラインの変更に結び付く知見となるかも知れません。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2016-03-23 07:45
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