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六本木歌舞伎「地球投五郎宇宙荒事」 [演劇]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。

今日は土曜日なので趣味の話題です。

今日はこちら。
六本木歌舞伎.jpg
市川海老蔵と中村獅童の2人が中心となった、
新しい歌舞伎の企画に、
脚本官藤官九郎、演出三池崇史という、
強力な助っ人が加わり、
「地球投五郎宇宙荒事(ちきゅうなげごろううちゅうのあらごと)」
というなかなか面白そうな題名の舞台として、
六本木のEXシアター六本木で上演中です。

以下ネタばれを少し含んだ感想です。

これは発想はなかなか面白いのです。
海老蔵のご先祖である、
初代市川團十郎がエイリアンと、
市川家の家の藝である「暫」で戦う、
という歌舞伎の元祖にリスペクトする姿勢が良いですし、
亡くなった勘三郎のアドバイス(?)であった、
荒事で地球を投げてしまう、
「地球投五郎」を実体化させる、
というこれも先輩へのリスペクトの姿勢が良いのです。

楽屋風景で始まるという掴みも最高です。

ただ、
作品自体はあまりに海老蔵の睨みの藝に頼り過ぎていて、
勿論それはそれで絶品なのですが、
延々とそれだけを繰り返されると、
観ている方も流石に飽きて来ます。

元禄歌舞伎の大らかさを復活させよう、
という意図がこの作品にはあり、
それは先代猿之助も成功しなかった歌舞伎の本道の1つで、
海老蔵の多くの最近の作品は、
その方向性を確実に指しています。
しかし、周囲のスタッフがそのことを、
本当の意味で理解していないように思えます。
作品は海老蔵の気概とその体技においては、
確かに元禄歌舞伎の復活なのですが、
内容的にはもっと大らかな味が出て良いのに、
幕末の世話物みたいな感じで、
江戸の町民の芝居を処理してしまっているので、
海老蔵がむしろ浮いた感じになっているのが、
少し残念に思いました。

幕末の歌舞伎と元禄歌舞伎は、
その方法論も台詞も別物なので、
そのことを海老蔵以外のスタッフが、
十全に理解していないと、
こうした企画は成功しないと思います。

今回台本のクドカンは、
海老蔵の企画に控え目に奉仕する、
という姿勢で、
それほどの独自色を出していません。
それがある意味すっきりとした仕上がりになっている、
という長所もあり、
話に膨らみがまるでない、
という欠点にも繋がっています。
色事めいた部分が一切ない、
というところは意図的なのでしょうが、
物足りなく感じました。
元禄歌舞伎には基本的に、
エロスが不可欠だと思います。
ただ、それでも2人の男が、
徹底した戦いの後に、
愛憎を超え、身体を改造して一体化する、
という筋立ての基本的な部分には、
クドカンのいつものテーマが生きています。
スターウォーズを元ネタに使うというのは、
如何にも古めかしく感じますが、
これは幅広い年齢層が観劇することを、
想定しての妥協のように思いました。

キャストは海老蔵と獅童は及第点で、
矢張り海老蔵の体技を、
小さな劇場で間近で見ることは贅沢に感じます。
コクーン歌舞伎などでの怪演もある萬次郎ですが、
今回は出番が少なく残念な感じです。
女形の尾上右近は、
荒っぽくなるところが完全に男の声になってしまって、
女形としては落第点に感じました。

演出は暗転を多用している割に、
転換がダラダラしていて、
クライマックスではPAの音量をガンガン上げたりするのが、
僕には納得が行きません。
せっかく生音を使っていることの、
良さが消されているように思いますし、
舞台上の現象がしっかり完結していないのに、
暗転してしまうような場面もあり、
歌舞伎でこれはないのではないか、
と個人的には思いました。
基本的には暗転というものがないのが歌舞伎です。
勿論こうしたある種の番外公演では、
そうした決まり事はなしでも良いのですが、
敢えて暗転するだけの意味がないといけないと思います。
それが全く見えない上、
段取りも良いとは思えないのが問題なのです。

ただ、先月の演舞場の「石川五右衛門」でも、
同じような演出がありましたから、
これは演出の三池さんの考えではなく、
両方に関与しているスタッフの考えのように、
僕には思えました。

こうした点から見ても、
今のスタッフワークで海老蔵の求める歌舞伎が、
本当に実現するのかについては、
危惧の念を覚えてなりません。

そうした疑義はあっても、
海老蔵の肉体こそが、
歌舞伎そのものであり、
元禄時代を現代に引き寄せるような、
パワーを秘めていることは事実で、
今後の活躍を期待しながら見守りたいと思います。

歌舞伎に関しては、
海老蔵を観られる今の観客は幸せだと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

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よろしくお願いします。

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コメント 4

Mitsuko Yosioka

以前医療事務をしておりまして検索で先生のブログにたどり着き
時々拝見させていただいております

ご趣味の演劇、特に歌舞伎では海老蔵ファンのようで我が意をえたりです
六本木歌舞伎「地球投五郎宇宙荒事」は見られなかったので感想がお聞きでき嬉しいです
親の死は一般家庭でも勿論 特に歌舞伎の由緒ある市川團十郎家ではどんなにか大変事
九団次さんがお仲間に加わって 良い風が吹くことを願っております
舞台のスタッフの件も先生のご意見を届けたい気が致します
今後もブログ楽しみに致しております。 
by Mitsuko Yosioka (2015-02-18 23:10) 

fujiki

Mitsuko Yosiokaさんへ
コメントありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
by fujiki (2015-02-19 06:14) 

ひらら

「地球投五郎宇宙荒事」私も見逃しました。
8月に名古屋・大阪でチャンスがあるようです。

4年前に肺血栓塞栓症の際はお世話になりました。
昨年骨折した外は薬も飲まずに元気に過ごしております。
ありがとうございました。
by ひらら (2015-02-19 10:33) 

fujiki

ひららさんへ
コメントありがとうございます。
完成形ではないのですが、
今後より方向性が定まれば、
面白くなる可能性はあると思いました。
これからもよろしくお願いします。
by fujiki (2015-02-20 08:01) 

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