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男性の更年期症状と性ホルモンとの関連性について [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
エストロンと高齢者の健康について.jpg
今月のJ Clin Endocrinol Metab誌に掲載された、
男性の更年期症状とそれに関連する性ホルモンとの、
意外な関連を検討した論文です。

年齢と共に身体の活力は低下し、
元気はなくなりますし、
身体のあちこちに不調が生じるようになります。

こうした変化は人間である以上、
大なり小なり誰にでも起こる現象です。

こうした現象が、
より具体的に身体のどのような成分の変化により、
起こっているのかというのは、
意外にまだ分かっていない事項です。

年齢と共に減少することが明らかなのは、
女性ホルモンや男性ホルモンの、
所謂性ホルモンです。

女性では閉経と呼ばれる女性ホルモンの急激な低下が起こり、
更年期症状と呼ばれる典型的な症状が現れます。

しかし、男性の場合においては、
女性のような急激な変化は見られないので、
加齢に伴う性ホルモンの低下が、
どの程度体力低下などの症状に関連しているかについては、
相反するデータがあり、
まだ確定した結論が得られていません。

テストステロンなどの男性ホルモンの血液濃度と、
体力の低下などに関連性がある、
というデータがある一方で、
関連が認められない、という複数のデータもあります。

問題はこれまでのこうした研究の多くが、
ある時点での血液のホルモンと症状との関連性を見ているので、
そこに一定の関係があっても、
必ずしもそれが原因とは限らない、
ということにあります。

そこで今回の研究においては、
オーストラリアにおいて、
1637名の70歳以上の男性の、
血液中の性ホルモンの数値と、
自覚症状や生活の質を比較した上で、
そのうちの1316名は2年間の経過観察を行なって、
観察期間中の変化と、
性ホルモンの数値の関連性を、
縦断的に検証しています。

その結果…

基礎値の検討においては、
血液の男性ホルモンである総テストステロン、
およびそのうちの遊離テストステロンと、
男性の血液中の女性ホルモンの1つであるエストロンが、
体力低下などの症状と関連を示しました。
男性の血液中にも微量に含まれる、
より活性の高い女性ホルモンであるエストラジオールとは、
関連性は認められませんでした。

ただ、その後2年間の縦断的な検討では、
唯一女性ホルモンのエストロンのみが、
高齢の男性の更年期症状と関連していました。

つまり、血液中のエストロンの数値が低いほど、
高齢者の身体機能の衰えの自覚は、
強い傾向が認められたのです。

この結果をどのように考えれば良いのでしょうか?

エストロンというのは、
男性が分泌している女性ホルモン(エストロゲン)の中では、
最も産生量が多いホルモンですが、
その女性ホルモンとしての作用や受容体との結合は、
同じ女性ホルモンであるエストラジオールと比較すると遥かに弱く、
普通に考えると、
あまり身体に大きな影響を及ぼしているとは、
考え難いものです。

しかし、今回のデータにおいては、
縦断的にその影響が認められたのはこのエストロンのみです。
それと比較すると男性ホルモンであるテストステロンの低下は、
横断的な検討でのみ認められていて、
体力の減退の原因ではなく、
むしろその結果である可能性が高いのです。

これは単なる偶然でしょうか?

そうとも言い切れないのは、
最近他にもエストロンと病気との関連性を、
示唆するデータがあるからです。

明日はもう1つ関連する文献をご紹介したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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