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男性の女性ホルモンと2型糖尿病発症との関連性について [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談に廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
エストロンと糖尿病の発症について.jpg
昨年5月のDiabetes Care誌に掲載された、
男性の女性ホルモン分泌と、
その後の2型糖尿病の発症リスクについての論文です。

これは昨日のデータと関連のあるものです。

女性においては、
閉経後に2型糖尿病が増えることが確認されていて、
女性ホルモンの補充療法により、
そのリスクが軽減することを、
示唆するデータも存在しています。

つまり、
女性ホルモンは2型糖尿病に予防的に働く、
と考えられます。

しかし、男性において微量に存在する女性ホルモンが、
同じような働きをしているかどうかについては、
これまでに明確なデータが存在しませんでした。

そこで今回の研究では、
フラミンガム研究という、
アメリカで50年以上に渡り行なわれている、
非常に精度が高く大規模な疫学研究のデータを用いて、
比較的高齢の男性1458名の血液中の女性ホルモンの数値と、
その6.8年後の糖尿病の発症との関連性を検討しています。

その結果、基礎値の解析において、
女性ホルモンのエストラジオールとエストロンとは、
いずれもその数値が高いほど、
2型糖尿病の罹患率が高いことが確認されました。
そして、6.8年後の糖尿病の発症との関連においては、
エストロンの数値のみと関連性を示しました。
遊離エストロンの濃度が2倍になると、
6.8年後に糖尿病になっているリスクは、
93%有意に増加が認められました。

つまり、男性における血液のエストロンの濃度が高いほど、
その後の2型糖尿病の発症が増えるという、
女性とは正反対のような結果です。

しかもエストロンは女性においても、
エストラジオールより活性の低いホルモンです。
これがどうして、
男性において糖尿病の発症に結び付くのでしょうか?

現時点では説明はありません。

昨日のデータは血液のエストロンが、
男性更年期に予防的に働く、というものでした。

これも一見真逆な感じがしますが、
昨日の文献の対象者は平均で70台の後半の年齢層で、
今日のデータは平均で60代が対象ですから、
その辺りに理由がありそうな気もします。

つまり、
男性ホルモンが枯渇するような時期においては、
エストロンが維持されていることが、
心身の健康状態に必要な下支えになるのですが、
壮年期に上昇することは、
却って糖尿病などのリスクを高める結果になるのかも知れません。

いずれにしても、
エストロンが単純に効きの悪い女性ホルモンと考えると、
エストラジオールより鋭敏な指標となることの説明が付かず、
おそらくエストロンは、
エストラジオールとは、
別個の働きを持っている可能性があり、
今後そうした知見が得られれば、
この不可思議な現象に、
明確な説明が付くことになるのかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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