三谷幸喜演出「ドレッサー」 [演劇]
こんにちは。
六号通り診療所の石原です。
今日は日曜日で診療所は休診です。
朝からいつものように駒沢公園まで走りに行って、
それから今PCに向かっています。
これから訪問診療に行って、
その後神奈川の実家に戻る予定です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ロナルド・ハーウッドの古典的な戯曲を、
三谷幸喜が演出した「ドレッサー」の公演が、
今世田谷パブリックシアターで開催中です。
「ドレッサー」は映画にもなりましたし、
日本でも何度も上演がされています。
ドイツ軍の空襲が相次ぐ、
第二次大戦下のイギリスで、
シェイクスピア劇団の老座長が、
「リア王」の上演中に精神に変調を来し、
上演が危ぶまれる事態になりますが、
付き人のノーマンは、
どうにかしてその日の上演を実現させようと、
必死の奮闘を続けます。
老いた名優の末路と、
そこに忠実に付き従う付き人という設定は、
古典的で典型的です。
三谷幸喜は東京サンシャインボーイズ時代に、
「ショー・マスト・ゴーオン」という作品を上演していますが、
これは作風は違いますが、
シェイクスピアの名優が臍を曲げて、
その日の舞台の実現が困難となり、
その危機を舞台に関わる全員が、
必死で工夫を凝らして舞台を続ける、という、
明らかに「ドレッサー」を元にした物語です。
つまり、
三谷幸喜さんと「ドレッサー」との間には、
深い繋がりがあるのです。
僕は2回ほどこの「ドレッサー」の翻訳舞台を観ていますが、
正直設定は悪くはないと思うものの、
陰々滅滅とした雰囲気が好きではなく、
老人が延々と繰り言を舞台で言うのも嫌ですし、
最後は老人が死んで、
しみったれた音効が流れて幕になるのも、
意外性の欠片もなくて好きではありません。
この作品を果たして三谷幸喜がどのように料理するのかには、
少し興味がありました。
以下公演のネタばれがあります。
オープニング舞台の最奥に劇場の舞台が見え、
その手前に楽屋に通じる通路が、
その更に手前に楽屋のセットが、
スライディングステージで次々と現れます。
なるほど、と唸るような、
センスのある趣向で、
まずそのセット構成に引き付けられます。
作品は1幕が舞台の直前なのに座長がまだ現れない、
というところから始まり、
付き人が座長を説得して、
何とか上演にこぎつけるところで終わり、
2幕は上演中の舞台裏でのドタバタから始まるのですが、
上演の舞台裏は、
元々奥に見えていたセットが、
前にせり出して来るのです。
多分自作の「ショー・マスト・ゴーオン」も、
こうしたセットにしたかったのではないか、
と思います。
実際には予算や劇場の都合から、
舞台袖なのか楽屋口なのか、
はっきりしないようなセットになっていたのですが、
今回は写実的なセットで、
鮮やかにその転換がなされています。
作品自体は基本的に原作通りで、
ラストがしみったれた感じになるのは、
三谷幸喜をもってしても、
いかんともし難いのですが、
通常は「どうせ翻訳劇だから…」
とこだわらずにサラリと流すような、
原作のディテールやギャグを、
そう大きくは変えないで、
日本人の観客にも伝わるように、
細かく演出しているのは、
さすがだと思いました。
役者は皆かなり頑張っていました。
老シェイクスピア俳優に橋爪功で、
付き人に大泉洋というコンビは、
そう相性の良い感じとは思いませんが、
橋爪さんの重くなり過ぎない感じも良いですし、
大泉さんはいつもとは勝手の違う舞台で、
かなり大変そうですが、
老優の死後、
自分に何も残してくれなかったことにガッカリするところなど、
彼ならではの味がありました。
この戯曲の硬い台詞で、
それなりに客席を和ませることが出来たのは、
彼の力量だと思います。
若手女優の平岩紙もソツがないですし、
通常は引き受けないくらいの小さな役に、
浅野和之と梶原善を配する、
という豪華なキャストも成功していたと思います。
総じてこの作品の日本での上演の中では、
最も観客に親切な舞台であったことは確かで、
前回チェーホフの「桜の園」の時も思いましたが、
三谷幸喜の翻訳劇は、
悪くないと思います。
ただ、個人的には「ドレッサー」は好きにはなれませんでした。
最初から死ぬことが、
分かっている人がただ死ぬだけの、
こんなしみったれた話は、
僕は嫌いです。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
六号通り診療所の石原です。
今日は日曜日で診療所は休診です。
朝からいつものように駒沢公園まで走りに行って、
それから今PCに向かっています。
これから訪問診療に行って、
その後神奈川の実家に戻る予定です。
休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
ロナルド・ハーウッドの古典的な戯曲を、
三谷幸喜が演出した「ドレッサー」の公演が、
今世田谷パブリックシアターで開催中です。
「ドレッサー」は映画にもなりましたし、
日本でも何度も上演がされています。
ドイツ軍の空襲が相次ぐ、
第二次大戦下のイギリスで、
シェイクスピア劇団の老座長が、
「リア王」の上演中に精神に変調を来し、
上演が危ぶまれる事態になりますが、
付き人のノーマンは、
どうにかしてその日の上演を実現させようと、
必死の奮闘を続けます。
老いた名優の末路と、
そこに忠実に付き従う付き人という設定は、
古典的で典型的です。
三谷幸喜は東京サンシャインボーイズ時代に、
「ショー・マスト・ゴーオン」という作品を上演していますが、
これは作風は違いますが、
シェイクスピアの名優が臍を曲げて、
その日の舞台の実現が困難となり、
その危機を舞台に関わる全員が、
必死で工夫を凝らして舞台を続ける、という、
明らかに「ドレッサー」を元にした物語です。
つまり、
三谷幸喜さんと「ドレッサー」との間には、
深い繋がりがあるのです。
僕は2回ほどこの「ドレッサー」の翻訳舞台を観ていますが、
正直設定は悪くはないと思うものの、
陰々滅滅とした雰囲気が好きではなく、
老人が延々と繰り言を舞台で言うのも嫌ですし、
最後は老人が死んで、
しみったれた音効が流れて幕になるのも、
意外性の欠片もなくて好きではありません。
この作品を果たして三谷幸喜がどのように料理するのかには、
少し興味がありました。
以下公演のネタばれがあります。
オープニング舞台の最奥に劇場の舞台が見え、
その手前に楽屋に通じる通路が、
その更に手前に楽屋のセットが、
スライディングステージで次々と現れます。
なるほど、と唸るような、
センスのある趣向で、
まずそのセット構成に引き付けられます。
作品は1幕が舞台の直前なのに座長がまだ現れない、
というところから始まり、
付き人が座長を説得して、
何とか上演にこぎつけるところで終わり、
2幕は上演中の舞台裏でのドタバタから始まるのですが、
上演の舞台裏は、
元々奥に見えていたセットが、
前にせり出して来るのです。
多分自作の「ショー・マスト・ゴーオン」も、
こうしたセットにしたかったのではないか、
と思います。
実際には予算や劇場の都合から、
舞台袖なのか楽屋口なのか、
はっきりしないようなセットになっていたのですが、
今回は写実的なセットで、
鮮やかにその転換がなされています。
作品自体は基本的に原作通りで、
ラストがしみったれた感じになるのは、
三谷幸喜をもってしても、
いかんともし難いのですが、
通常は「どうせ翻訳劇だから…」
とこだわらずにサラリと流すような、
原作のディテールやギャグを、
そう大きくは変えないで、
日本人の観客にも伝わるように、
細かく演出しているのは、
さすがだと思いました。
役者は皆かなり頑張っていました。
老シェイクスピア俳優に橋爪功で、
付き人に大泉洋というコンビは、
そう相性の良い感じとは思いませんが、
橋爪さんの重くなり過ぎない感じも良いですし、
大泉さんはいつもとは勝手の違う舞台で、
かなり大変そうですが、
老優の死後、
自分に何も残してくれなかったことにガッカリするところなど、
彼ならではの味がありました。
この戯曲の硬い台詞で、
それなりに客席を和ませることが出来たのは、
彼の力量だと思います。
若手女優の平岩紙もソツがないですし、
通常は引き受けないくらいの小さな役に、
浅野和之と梶原善を配する、
という豪華なキャストも成功していたと思います。
総じてこの作品の日本での上演の中では、
最も観客に親切な舞台であったことは確かで、
前回チェーホフの「桜の園」の時も思いましたが、
三谷幸喜の翻訳劇は、
悪くないと思います。
ただ、個人的には「ドレッサー」は好きにはなれませんでした。
最初から死ぬことが、
分かっている人がただ死ぬだけの、
こんなしみったれた話は、
僕は嫌いです。
それでは今日はこのくらいで。
皆さんも良い休日をお過ごし下さい。
石原がお送りしました。
2013-07-14 07:20
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コメント(6)
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おはようございます。
駒沢公園を利用できる距離にお住まいでうらやましいです。
小生も駒沢・代沢と23年間住みました。
あのあたりに、住んでみたいです。
表題と関係のないコメント失礼いたしました。
by ひでほ (2013-07-14 08:47)
石原先生のご趣味の話題
いつも楽しく拝見しています。
先生のブログに触発されて
久しぶりに、お芝居を観たくなってしまいました。
シベリア少女鉄道を体験してみたかったのですが
どうしても都合がつかず、悶々としていますwww。
そこで・・・
8月4日以外の日曜日のマチネで
おススメの演劇があれば、教えて頂けませんでしょうか?
離婚ホヤホヤで経済力が無いので
5000円以下ですと助かります。
いきなりのあつかましいお願いで恐縮ですが
どうぞ、宜しくお願いします ❤
by ☆ acco ☆ (2013-07-14 16:30)
ひでほさんへ
コメントありがとうございます。
そう近くもないのですが、
そこまで行くのがジョギングという感じです。
by fujiki (2013-07-15 22:48)
acco さんへ
「春琴」は以前のものをご覧になりましたか?
僕は大好きなのですが、
S席は7500円です。
ただ、これは遠くの席だと、
ちょっと凝集感が乏しくなります。
僕が予定しているのは、
「ストリッパー物語」と「SOLID」、
「地下室の手記」くらいですが、
観てみないと出来は分かりません。
個人的には「ストリッパー物語」は、
期待していますが、外すかも知れません。
小泉今日子の「頭痛肩こり樋口一葉」は、
戯曲はまあ定番ですし、
キョンキョンは今乗っているので、
悪くないように思いますが、
8400円は高いですね。
by fujiki (2013-07-15 23:00)
*≧▽≦)bb
日曜マチネが どれも完売だったので
7月31(水)の「地下室の手記」を
予約してみました。
☆ ありがとうございます ☆
by ☆ acco ☆ (2013-07-17 00:14)
「地下室の手記」
急用が出来てしまって
8月3日(土)19:00に変更しました。
「だから何?」的なコメントですが
7月31日と宣言してしまった手前
一応ご報告まで・・・。
記憶障害があるので
夜 出歩くのは危険なのですが
決死の覚悟で行って来ますぅw。
by ☆ acco ☆ (2013-07-22 23:45)