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甲状腺ホルモン製剤の吸収とその効果について [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
T4吸収テスト.jpg
今年4月のEur J Endcrinol誌に掲載された、
甲状腺ホルモン製剤が、
身体で上手く吸収されているかどうかを、
1週間分の使用量をまとめて内服し、
その後2時間のホルモンの血液濃度を測って評価する、
というちょっと大胆な臨床試験の論文です。

甲状腺機能低下症の治療には、
現在では専ら合成されたT4である、
甲状腺ホルモン製剤が使用されています。

この合成甲状腺ホルモン製剤が使用されたのは、
1927年のことですから、
かなりの歴史のある治療法です。

この合成甲状腺ホルモン製剤であるレボチロキシンナトリウムは、
小腸で60~80%が吸収されると考えられています。
その後血液中のT4の濃度は、
空腹時の内服では、
概ね3時間以内にピークに達します。

甲状腺機能が全くない状態でも、
概ね体重1キログラム当たり、
1.7~1.8μgのT4製剤が補充されれば、
ほぼ充分量と考えられ、
2.1~2.2くらいが補充されると、
血液の甲状腺刺激ホルモンの数値は、
完全に抑制されます。

しかし、
同じ量の甲状腺ホルモン剤を使用していても、
実際には甲状腺機能が正常にならないケースが、
結構存在しています。

これには色々な理由が考えられますが、
鉄やカルシウムと同時に摂取して、
吸収が阻害されたり、
萎縮性胃炎や吸収不良症候群、
プロトンポンプ阻害剤の使用などの影響で、
充分な効果が得られない、
というケースが考えられると共に
患者さんがお薬を処方通りに飲んでいない、
というケースも考えられます。

今回の研究においては、
甲状腺ホルモン製剤の吸収の差と、
患者さんの薬の飲み方を評価する目的で、
1週間分のレボチロキシンナトリウムを一度に飲み、
その後2時間のT4の血液濃度を測定し、
その上昇の程度を評価する、
という試験を、
通常量のホルモン剤を使用していても、
甲状腺刺激ホルモンが正常化せず、
平均で41mU/Lという高値となっている、
23名の患者さんに対して行なっています。
内服はクリニックで行ない、
これを1週間毎に繰り返して、
間の6日間はホルモン剤は使用しません。

その結果…

ホルモン剤使用後、
内服後2時間で、
血液中のホルモン濃度は、
概ね2倍まで上昇します。
そして、
23人中17人では、
4週間の使用により、
甲状腺刺激ホルモンは試験前より低下していました。

つまり、
甲状腺ホルモン製剤を通常量使用していても、
甲状腺機能が正常化しないケースの多くは、
実際には薬のコンプライアンスに、
問題のあったことが示唆されたのです。

正直その結論自体は、
あまり面白いものではありませんが、
多くの事例で甲状腺ホルモンの吸収には、
それほど差のあるものではない、
という知見と、
現在使用されているT4製剤は、
1週間分を一度に内服しても、
通常大きな問題は生じないくらい安全性が高い、
と言う点は、
興味深く思いご紹介をさせて頂きました。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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