高尿酸血症治療薬一覧(各論) [医療のトピック]
こんにちは。
六号通り診療所の石原です。
朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。
それでは今日の話題です。
今日は高尿酸血症治療薬の各論です。
①アロプリノール(商品名ザイロリックなど)
この薬は代表的な尿酸生成抑制剤で、
現在でも世界的には最も多く使用されている、
高尿酸血症治療薬です。
アメリカでは高尿酸血症治療薬の98%は、
このアロプリノールです。
この薬は尿酸生成の最終ステップである、
キサンチンオキシダーゼという酵素の阻害剤です。
この薬の問題点は、
皮膚粘膜眼症候群という重症の薬疹を稀に起こす、
ということです。
この副作用の発現は特定の遺伝子と、
関連性があると言われていますが、
この薬を使用する際に、
常にそうした検査が行われるのは実際的ではなく、
現実に行われているということもありません。
日本の副作用発現頻度の資料には、
トータルな副作用は4.12%と書かれていて、
そのうち湿疹は0.91%とされています。
これだけを読むと問題はないように感じますが、
実際にはその中に重症の薬疹が多く含まれているのです。
この薬は腎臓排泄なので、
腎機能の低下の程度に合わせて、
その使用量を減らす必要があります。
また抗凝固剤のワーファリンや、
喘息治療薬のテオフィリンとは相互作用があり、
併用する場合はワーファリンやテオフィリンの用量を、
減量する必要があります。
実際には良好な尿酸値のコントロールを得るためには、
1日200~300mgの使用が必要となることが多いのですが、
処方医の多くは安全策を取るので、
100mg程度の使用量になることが多く、
それでは臨床的なメリットが乏しいのではないか、
という意見があります。
従って、腎機能の低下時にも使い易く、
重症の薬疹が生じ難いアロプリノールがあれば、
それは理想的な薬に成り得る、
と言うことが出来ます。
②フェブキソスタット(商品名フェブリク)
国際的な誕生は2008年ですが、
日本では今年の5月に発売されたばかりの新薬が、
このフェブリクです。
この薬は基本的にはアロプリノールと同じ、
キサンチンオキシダーゼの阻害剤で、
要するに尿酸生成阻害剤です。
ただ、重症薬疹の原因の1つと考えられる、
所謂プリン骨格を持たない構造であることと、
肝臓で分解され、尿中と便中にほぼ半分ずつ排泄されるため、
腎機能の低下した患者さんでも、
基本的には糸球体濾過量が30ml/min以上であれば、
そのままの使用量で使用出来る点が、
アロプリノールとは違っています。
その効果は通常用量の1日40mgで、
アロプリノールの200mgと同程度ですから、
それほど違いのある訳ではありませんが、
比較的安心してその維持量まで増やせる点が異なります。
アロプリノールのような薬物相互作用は少なく、
ワーファリンやテオフィリンとの併用でも、
特にどちらかの薬剤を減量する必要はありません。
薬価はただ、維持量で、
アロプリノールのジェネリックの8倍にはなります。
つまり、かなり高価な薬剤です。
そのため、EUではその適応は、
アロプリノールで効果不充分か有害事象のため使用困難な事例に限る、
という位置づけになっています。
仮にこの薬で重症薬疹の発症が殆どないとすれば、
僕はある程度アロプリノールの患者さんを、
この薬に振り替えることに意味があると思いますが、
実際には発売から1年程度は最低でも経たないと、
その判断を軽率にすることは危険だと思います。
こうした重症薬疹には人種差も存在するからです。
もう一点注意すべき点は、
この薬の動物実験で、
マウスの雌とラットの雄には、
膀胱癌の誘発が認められている、
という事実です。
ただ、これはアクトスの事例でも触れましたように、
必ずしも人間で同様の結果が生じる、
と即断は出来ない性質のものです。
③ベンズブロマロン(商品名ユリノームなど)
この薬は前記2つの薬剤とは異なり、
尿酸の生成を抑えるのではなく、
尿酸の排泄を促進する薬です。
アメリカでは発売すらされておらず、
海外ではあまり使用されていない薬ですが、
日本ではこの薬を推奨される学会のボスのような方が複数いらっしゃって、
むしろアロプリノールより使用頻度の高い高尿酸血症治療薬です。
この薬を推奨する意見としては、
日本人の高尿酸血症の8割は、
排泄低下によるものなので、
排泄促進剤の使用が合理的である、
というものと、
この薬の作用点である尿酸トランスポーターは、
インスリン抵抗性などのメタボの原因ともリンクしていて、
この薬を使用することにより、
動脈硬化それ自体の進展抑制効果もあるのでは、
という仮説が提唱されている、
というものです。
ただ、排泄低下が原因であるとしても、
尿酸生成抑制剤が使用出来ない、
ということはなく、
動脈硬化云々に関しては、
あくまで仮説のレベルで、
立証されたものではありません。
また、副作用としての重症の肝機能障害が、
一時問題となったことがあります。
つまり、安全性の点でも、
アロプリノールより明らかに勝っている、
という評価は出来ません。
従って、僕は個人的には、
あまりこの薬を使用することは積極的にはしていません。
以上主に日本で使用可能な、
血液の尿酸を下げる薬剤の、
今日は各論的な話でした。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
六号通り診療所の石原です。
朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。
それでは今日の話題です。
今日は高尿酸血症治療薬の各論です。
①アロプリノール(商品名ザイロリックなど)
この薬は代表的な尿酸生成抑制剤で、
現在でも世界的には最も多く使用されている、
高尿酸血症治療薬です。
アメリカでは高尿酸血症治療薬の98%は、
このアロプリノールです。
この薬は尿酸生成の最終ステップである、
キサンチンオキシダーゼという酵素の阻害剤です。
この薬の問題点は、
皮膚粘膜眼症候群という重症の薬疹を稀に起こす、
ということです。
この副作用の発現は特定の遺伝子と、
関連性があると言われていますが、
この薬を使用する際に、
常にそうした検査が行われるのは実際的ではなく、
現実に行われているということもありません。
日本の副作用発現頻度の資料には、
トータルな副作用は4.12%と書かれていて、
そのうち湿疹は0.91%とされています。
これだけを読むと問題はないように感じますが、
実際にはその中に重症の薬疹が多く含まれているのです。
この薬は腎臓排泄なので、
腎機能の低下の程度に合わせて、
その使用量を減らす必要があります。
また抗凝固剤のワーファリンや、
喘息治療薬のテオフィリンとは相互作用があり、
併用する場合はワーファリンやテオフィリンの用量を、
減量する必要があります。
実際には良好な尿酸値のコントロールを得るためには、
1日200~300mgの使用が必要となることが多いのですが、
処方医の多くは安全策を取るので、
100mg程度の使用量になることが多く、
それでは臨床的なメリットが乏しいのではないか、
という意見があります。
従って、腎機能の低下時にも使い易く、
重症の薬疹が生じ難いアロプリノールがあれば、
それは理想的な薬に成り得る、
と言うことが出来ます。
②フェブキソスタット(商品名フェブリク)
国際的な誕生は2008年ですが、
日本では今年の5月に発売されたばかりの新薬が、
このフェブリクです。
この薬は基本的にはアロプリノールと同じ、
キサンチンオキシダーゼの阻害剤で、
要するに尿酸生成阻害剤です。
ただ、重症薬疹の原因の1つと考えられる、
所謂プリン骨格を持たない構造であることと、
肝臓で分解され、尿中と便中にほぼ半分ずつ排泄されるため、
腎機能の低下した患者さんでも、
基本的には糸球体濾過量が30ml/min以上であれば、
そのままの使用量で使用出来る点が、
アロプリノールとは違っています。
その効果は通常用量の1日40mgで、
アロプリノールの200mgと同程度ですから、
それほど違いのある訳ではありませんが、
比較的安心してその維持量まで増やせる点が異なります。
アロプリノールのような薬物相互作用は少なく、
ワーファリンやテオフィリンとの併用でも、
特にどちらかの薬剤を減量する必要はありません。
薬価はただ、維持量で、
アロプリノールのジェネリックの8倍にはなります。
つまり、かなり高価な薬剤です。
そのため、EUではその適応は、
アロプリノールで効果不充分か有害事象のため使用困難な事例に限る、
という位置づけになっています。
仮にこの薬で重症薬疹の発症が殆どないとすれば、
僕はある程度アロプリノールの患者さんを、
この薬に振り替えることに意味があると思いますが、
実際には発売から1年程度は最低でも経たないと、
その判断を軽率にすることは危険だと思います。
こうした重症薬疹には人種差も存在するからです。
もう一点注意すべき点は、
この薬の動物実験で、
マウスの雌とラットの雄には、
膀胱癌の誘発が認められている、
という事実です。
ただ、これはアクトスの事例でも触れましたように、
必ずしも人間で同様の結果が生じる、
と即断は出来ない性質のものです。
③ベンズブロマロン(商品名ユリノームなど)
この薬は前記2つの薬剤とは異なり、
尿酸の生成を抑えるのではなく、
尿酸の排泄を促進する薬です。
アメリカでは発売すらされておらず、
海外ではあまり使用されていない薬ですが、
日本ではこの薬を推奨される学会のボスのような方が複数いらっしゃって、
むしろアロプリノールより使用頻度の高い高尿酸血症治療薬です。
この薬を推奨する意見としては、
日本人の高尿酸血症の8割は、
排泄低下によるものなので、
排泄促進剤の使用が合理的である、
というものと、
この薬の作用点である尿酸トランスポーターは、
インスリン抵抗性などのメタボの原因ともリンクしていて、
この薬を使用することにより、
動脈硬化それ自体の進展抑制効果もあるのでは、
という仮説が提唱されている、
というものです。
ただ、排泄低下が原因であるとしても、
尿酸生成抑制剤が使用出来ない、
ということはなく、
動脈硬化云々に関しては、
あくまで仮説のレベルで、
立証されたものではありません。
また、副作用としての重症の肝機能障害が、
一時問題となったことがあります。
つまり、安全性の点でも、
アロプリノールより明らかに勝っている、
という評価は出来ません。
従って、僕は個人的には、
あまりこの薬を使用することは積極的にはしていません。
以上主に日本で使用可能な、
血液の尿酸を下げる薬剤の、
今日は各論的な話でした。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2011-06-17 08:06
nice!(32)
コメント(10)
トラックバック(0)
酒飲まず卵も食わず肉食わず煙も出さずに尿酸値、今年の検診8.5 体質的なことなのでしょうか。気のせいか足の親指が温かく痛風なのでしょうか。(友人曰く飛び上るほどの痛さとか)
by さすらいの、、、 (2011-06-17 09:30)
高尿酸血症治療薬にウラリットが併用されたり、尿酸がやや高めの方にウラリットが単独で処方されたことがありますが、効果のほどはどうなんでしょうか?
副作用などを考えると、ユリノームの代わりにウラリットでいいんじゃないかなぁ~なんて思ったりしますが、検査値を下げる効果はあんまりないんでしょうか?
by ごぶりん (2011-06-17 23:02)
さすらいの、、、さんへ
コメントありがとうございます。
尿酸値のみの上昇でしたら、
それほど気にされずに、
ご様子をみて良いのではないかと思います。
by fujiki (2011-06-18 08:03)
ごぶりんさんへ
ウラリットは面白い薬で、
こむら返りにも効果があり使用していますが、
尿酸値自体は単独ではあまり低下しないと思います。
ただ、仮に単独で結石予防効果があるなら、
別に尿酸降下剤を敢えて併用する必要もないのでは、
という気もします。
by fujiki (2011-06-18 08:05)
石原先生が2011年に書かれた高尿酸血症の治療薬についての中で、フェブリック錠はマウスとラットの実験で膀胱癌を誘発すると認められたと書いてあるのを読ませて頂きました。私の父は5年前に腎臓内に小さな癌があると診断され、直ぐにその腎臓を摘出する手術を受け、半年に一度の定期検診を受けて来ました。去年の9月に受けた検診では異常なしという結果でした。ところが時を同じくして手の指が腫れる症状が出て、5年前に手術をした病院とは別の医師の所で検診、尿酸値が高いという事でフェブリック錠を処方されて9月より服用(10mg/日)を開始しました。その後11月に血尿が出始め、以前手術をした病院へ戻りMRI(2014年1月)を撮った所膀胱内の壁に小さな陰がある事が分かりました。既に来週月曜日(1月20日)に内視鏡での手術が予定され、今週1月16日に今まで行った検査の結果と病状について、手術の内容の説明が行われるとの事です。フェブリック錠と膀胱腫瘍(癌)の関係がちょっと気になったので、先生の見方をお聞きしたくてこれを書いています。どう思われますか?
by ヒョウドウ直美 (2014-01-14 13:15)
ヒョウドウ直美さんへ
一般論で言えばこうした薬剤の癌の誘発は、
ある程度長期間の影響と思いますから、
使用後2か月での発見は、
無関係の可能性が高いように思います。
ただ、結果が炎症ということであれば、
関連性はないとは言えません。
by fujiki (2014-01-15 08:12)
お返事ありがとうございました。膀胱壁炎症の段階でも血液が尿に混じったりするのか、MRIに陰のように写るのかが疑問です。20日の内視鏡施術で何者かがハッキリすると思いますが‥。
by ヒョウドウ直美 (2014-01-15 09:36)
”もう一点注意すべき点は、
この薬の動物実験で、
マウスの雌とラットの雄には、
膀胱癌の誘発が認められている、
という事実です。”と書かれていますが、それはどの文献で拾われた情報か教えて頂けますか?
by ヒョウドウ直美 (2014-01-15 14:02)
ヒョウドウ直美さんへ
多分フェブリクのインタビューフォームに、
あったと思います。
by fujiki (2014-01-16 08:07)
どうもありがとうございました。大変参考になりました。これは個人的な感じ方ですが、先生のブログは正直、且つ透明で感心しました。日本にもこんなに正直に自分の感じ方を表現する医師が居るんだなあと、嬉しく思うと同時にちょっとホッとしました。
by ヒョウドウ直美 (2014-01-18 08:47)