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心身同一性ということ [身辺雑記]

今日はちょっと思いついたことを書きます。

人間というのは悩み事があると、
四六時中そのことばかり、
考えてしまう傾向のある生き物です。

その思考というのは通常堂々巡りのことが多く、
建設的な考えが浮かんだり、
解決に結び付くようなきっかけが得られることは、
その悩み事が解決困難であればあるだけ、
滅多にないことではないかと思います。

つまり、頭はこうした場合、
堂々巡りに神経回路を興奮させているだけで、
その処理を幾らそのまま続けていても、
心の疲弊が続くだけなのです。

心と身体を別のものとして、
分けて考える考え方は、
勿論問題がない訳ではありませんが、
精神的に均衡を崩した場合などは、
明らかに心と身体が分裂している、
という表現が成り立つ場合があり、
そうしたケースではある程度こうした考え方が、
意味を持つのではないかと思います。

さて、最近ジョギングをしていて思うのですが、
ある程度走って身体が苦しくなって来ると、
その瞬間には「苦しい」という考え以外には、
頭に浮かぶものはなくなります。

こんなことはスポーツをされている方なら、
百も承知のことだとは思いますが、
この瞬間心にとっての重要事は、
まさに身体の活動と一体化しているのであり、
それ以外のことが考えられないように、
身体が心を一時的に支配しているのです。

つまり、どんな人でもこの瞬間は、
心と身体の同一性があるのです。

これが普段のことを考えてみると、
僕は今色々と悩みがあるものですから、
歩いたり仕事をしたり、
そうした他の行為を身体はしながらも、
心はその心配事を辿っているのです。

つまり、心と身体は解離しているのです。

その状態は身体にとっても心にとっても苦痛なことで、
従って運動が人間にとって重要なものであることの、
1つの大きな意味合いは、
そうした心身同一性の回復効果がある、
ということなのではないかと思います。

運動をする場合、
身体の側が心を引き寄せる訳です。
心と身体は身体学的には、
自律神経系で結び付いているのですが、
身体の側がその紐を引っ張って、
無理矢理心を身体のこと以外、
考えさせない状況にしてしまうのです。

ただ、これは一時的で回復可能なものであるから、
意味があるのです。

つまり、運動を止めれば、
すぐに心は身体から自由になるのです。

しかし、たとえば癌が進行して身体の痛みがあるとします。

この場合、身体の苦痛は同様のメカニズムで心を引き寄せます。

しかし、その苦痛は心が関与したものではなく、
運動のように心の意志が始めたものではありません。

その痛みは理不尽に続き、
身体に拘束された心の状態は、
途切れることなく続くのです。

つまり、この状態は心身同一性は存在しても、
常に身体に支配された状態に、
心があるという点が、
運動の場合とは違っているのです。
従って、これは人間にとって健全な状態ではなく、
強制的に痛みを取るような治療が、
行なわれることは已む無しと考えられます。

逆に心が身体を引き寄せる場合を考えてみましょう。

膝の痛みがあったり足が御不自由な方は、
ジョギングのような運動をすることは出来ません。

そうした方には下半身に負担を掛けないような運動が、
適応と考えられてリハビリとして施行されていますが、
そうした運動は確かに、
身体の機能を維持する目的での有効性はありますが、
心身同一性を失ったような状態では、
それを回復する助けにはなってはくれません。

従って、むしろ心の緊張を解くことによって、
身体を心に従わせることこそが、
重要になって来るのではないかと思います。

自律訓練法や瞑想などの手法は、
そうした点で意義のある方法だと僕は思います。

「悩み事」という心だけが関与する事項から、
極力離れることによって、
精神の緊張を解き、
身体の感覚を心より上に置こうと試みるのです。
それが可能となれば、
その人にとっての心身同一性は、
回復した、ということになります。

うつ病に運動が有効なのは、
そうした理由によるもので、
運動により身勝手で不安定な心を、
身体の側に引き付け、
一瞬であれ身体の奴隷にすることによって、
心と身体が一体化した時の感触を掴むのです。

ただ、身体を疲労させるのが困難なようなケースでは、
自律訓練法や認知行動療法に頼らざるを得ず、
そうした手法は言わば頭の中のシュミレーションの部分が大きいので、
身体と心とが解離したような状態では、
成果を挙げるのは困難なのではないか、
と思わなくもありません。

つまり、運動の可能な状況であれば、
自律訓練法なんてしているより、
運動した方が余程効果があるのではないか、
というのが、
最近運動を俄仕込みで始めた、
僕の今考えていることです。

皆さんはどうお考えになりますか?

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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Daddy恭男

最近、妄想することで現実逃避することがあるのですが、これも知らず知らず緊張を取り除こうとしているのかと、思いました。
よく、スポーツクラブのスタジオプログラムなどで、苦しい動きになるほど顔が満面の笑みになる人は・・・。これは、違う方向性ですね?!
暫く、運動と妄想で自己コントロールします。
by Daddy恭男 (2010-09-15 08:46) 

スマイル

おはようございます。
なるほどと納得しました。
答えを得た感じで。
何回かくり返し読ませて
いただきたいです。
by スマイル (2010-09-15 10:26) 

acco

確かに・・・
私も人工呼吸器を付けられて、
身動きが取れなかった時は、
ひたすら苦痛に耐えるしかありませんでした。
うつの治療を再開したのは、
受傷後1ヶ月位経った頃だったと思います。
身体が回復するのと比例して、
徐々にお薬も増えていきました。
受傷前よりうつが軽快した様にも感じますが、
単に、身体が不自由になった分、
生きるのに必死なだけの様な気もします。
ただ、生きている実感が湧いてきた分、
少し心が軽くなりました。

リハビリ頑張りますぅ。

by acco (2010-09-15 11:35) 

はっちぽっち

なるほど!
ちょっと歩いてきます!
by はっちぽっち (2010-09-15 11:54) 

iyashi

私は梅雨時期になって、ウォーキングが出来なくなり、梅雨明けしたら猛暑、環境の変化によりかなり回復傾向にあったうつが、またかなり悪化してしまい、現在仕事に行けない状態です。
一番きついのは腰痛の悪化です。
頭の回転はそれ程鈍っていません。
腰痛緩和の為スポーツクラブに入会し、ウォーキング、筋トレ、ストレッチ等やってはみたのですが、公園をウォーキングしていた時に感じられた爽快感や達成感はなく、箱の中で鏡の前でただランニングマシーンの上でウォーキングをしたり、軽いジョギングをしても時間の経つのも遅く、閉塞感ばかりがあり、腰痛は悪化するばかりでした。
ペインクリニックにて硬膜外ブロックを試してみたものの効果はありませんでした。
自分なりにうつが悪化してはそれを脱しようと、色々やってきましたが、もう八方ふさがりの状態で、どうしてよいか分かりません。
涼しくなってきたので原点に戻って公園のウォーキングを再開してみようとは思っているのですが、なかなかその一歩が踏み出せない感じです。
今回はかなりやっつけられてしまっています。。。
by iyashi (2010-09-15 19:41) 

fujiki

Daddy恭男さんへ
コメントありがとうございます。
確かに健全な妄想は精神の安定に必要だと思います。
by fujiki (2010-09-16 08:17) 

fujiki

スマイルさんへ
コメントありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
by fujiki (2010-09-16 08:18) 

fujiki

acco さんへ
コメントありがとうございます。
リハビリ頑張って下さい。
by fujiki (2010-09-16 08:18) 

fujiki

はっちぽっちさんへ
コメントありがとうございます。
by fujiki (2010-09-16 08:19) 

fujiki

iyashi さんへ
身体に痛みがあると、
それだけで辛いですね。
僕も去年は肩の痛みがきつかったので、
お気持ちは分かります。
診療所の患者さんでもそうですが、
間違いなく暑さの影響はあると思います。
これから気候も安定してくると思いますし、
身体と相談しながら、
少しずつ身体に負荷を掛けていくのが良いのではないでしょうか。
多分どちらかと言えば、
身体は「無理をするな」
というサインを出しているのではないか、
と推察します。
by fujiki (2010-09-16 08:25) 

yuuri37

この記事おもしろいです。
ほう、そうか。。。
彼奴(Y)は、凹むとよく「俺、走ってくる」と言って、ヘドがでるほど走り込むのです。一度付き合って懲りましたがw^^ そういうことだったんですね。
仕事をしているとき、特にオペ中の心は遥か彼方に飛んでいってる。心に支配されない時間。心が壊れそうになったとき、この時間を増やしてみたら、身体が悲鳴をあげて壊れそうになった。
やっぱ、運動ですかねw^^w 悩み多きfemaleはそこでまた悩む(笑)
by yuuri37 (2010-09-16 19:43) 

fujiki

yuuri37 さんへ
コメントありがとうございます。
そうですね。
身体だけ動かしていると、
何となくいいようなのですが、
心が付いて来ていないと、
却って疲労するのではないかと思います。
by fujiki (2010-09-17 08:38) 

acco

度々済みません・・・。

この記事を、再び私自身に置き換えてみると、
うつの時は心身共に疲れ切っている事が多いので、
更に運動を強いるのは、酷である気がしてきました。
私は今は特に『悩み』らしきものがありません。
けれども、一方的に、心身は衰弱しています。
と言うか、あらゆる欲がなくなり、
何をしても、いつも、疲れている状態です。
何か気分転換になるものを、必死で探すのですが、
以前好きだった事をしても、疲れるばかりで、
却って落ち込んでしまう感じです。
勿論、悩みがストレスとなって
うつに陥る方もいらっしゃると思いますが、
うつという状態は、悩みの先にある
心と身体の疲労なのではないでしょうか?
運動は気分転換の一つとして、
解決の糸口になるかも知れませんが、
それは健康な方の発想で、
やや荒療治の様な気もしてきました。

そうなると、自律訓練法や瞑想等の
メンタル的なアプローチに頼らざるを得ませんが、
やはり、心身に疲労が蓄積されている分、
アスリートのメンタルトレーニングの様な
効果までは期待出来ない所が
うつの治療の難しさなのかも知れません。

嵐が通り過ぎるのを待ってみます。

by acco (2010-09-17 22:39) 

fujiki

acco さんへ
コメントありがとうございます。
言われる通りで、心身同一性を取り戻す方法は、
その置かれた状況によって、
個々に違うのだと思います。
そうした面でもっと突っ込んだ具体的なお話が出来れば良いのですが、
今のところそこまでの考えはありません。
by fujiki (2010-09-18 08:16) 

acco

☆お返事有難うございます☆

海外では『うつには運動が効く』的な
論調が強くなっていますよね。
でも、この手のプログラムに参加出来ている時点で、
その対象群は、ある程度選別された人達である、
という事を忘れがちなのかな、とも思います。
やはり、先生の仰る通り、個々の状況で判断するしかなく、
しかも、この条件に該当する人は、
残念ながら、意外と少数なのかも知れません・・・。

by acco (2010-09-18 10:12) 

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