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急性好酸球性肺炎の話 [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はちょっと不思議な肺炎の話です。

まず事例をお示しします。

患者さんはGさん。21歳の女性です。
大学を卒業し、警備関係の会社の、
事務として入社しました。

入社して2週間ほどした4月の中旬から、
寒気がして38度の熱が出ました。
ほぼ同じ時期から激しい咳の症状がそれに加わります。
歩くと息苦しい感じがして、
不安になったGさんは、
近所の内科を受診しましたが、
風邪でしょう、と言われて風邪薬と咳止めと、
抗生物質が処方されただけです。
それを飲んで3日が過ぎても、
症状は良くならないばかりか、
じっと座っていても息が切れるような感じがします。

それで普段は医者などあまり行かないGさんですが、
一番近くの総合病院を受診しました。

血液の酸素を測ると、
通常は90くらいはある筈の酸素の数値が、
50台にまで低下しています。
息が切れるのも当然で、低酸素血症の状態にあったのです。
胸のレントゲンとCTを撮ると、
両方の肺のかなり広い部分に、
境界のはっきりしないぼんやりとした影が見られます。

肺炎でした。

Gさんは即日入院し、
培養など病原体の検査をすると共に、
抗生物質の点滴が開始されました。
しかし、そうして数日が過ぎても、
Gさんの症状は改善の兆しすらありません。

一体この肺炎の正体は何なのでしょうか?

気管支鏡という検査が行なわれ、
その結果でようやく診断が付きました。
気管支の中に管を入れ、
中を水で洗って吸い上げます。
すると、その洗浄液の中に、
好酸球というアレルギーに関わる白血球が、
異常に多く検出されたのです。

これを急性好酸球性肺炎と言います。

1989年に初めて報告された、
比較的新しい診断名です。

発熱や咳、血液の酸素の低下などの症状が、
非常に急速に進行する肺炎で、
気管支鏡の検査での肺胞洗浄液の中に、
好酸球の著明な増加が認められます。
症状は激烈ですが、
しかし不思議なことに概ね自然に改善に向かい、
何も治療をしなくても、
1ヶ月以内には治癒に至ることが多いと言われています。

一種のアレルギー反応だ、ということは想像が付きますが、
その原因は現在でもはっきりとは分かっていません。

しかし、この病気になる患者さんの多くが、
タバコを吸い始めたか、タバコの量が急に増えたか、
そのいずれかがあることが、
最近注目されています。

事例のGさんの場合も、
就職をしてから、
そのストレスもあり、
喫煙者が多い職場であることもあって、
タバコの本数が急激に増えたのです。

症状はそれから数日後のことでした。

この病気の原因はタバコ以外にも、
薬によるものや化学物質や埃によるものもあると言われています。
しかし、その詳細は不明です。

タバコの害と言われるものは様々ですが、
中にはこうした不思議な肺炎があることも、
皆さんの頭の隅に置いておいて下さい。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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まみしゃん

喘息発作や肺炎で入院&吸入器まで購入して、やっとテオドールと縁が切れた息子がヘビースモーカーになってます(-"-)

言ってもわからないんですから自己責任でなんとかしてもらいますが、息子の部屋に入っただけで私のほうが咳が出てきます。
もちろん居間は禁煙です。

もう一度大きい発作を起こしてみないと、止められないんだろうなぁ~と様子を見ていますが・・・

売るのを止めてほしいと思ってしまいます!
by まみしゃん (2010-06-05 21:05) 

fujiki

まみしゃんさんへ
コメントありがとうございます。

本質的には個人の意識の問題ですが、
タバコの害を冷静に認識せず、
「何となく」吸う若い方がいるのは、
矢張り問題だと思います。

でも、難しい問題ですね。
by fujiki (2010-06-05 21:19) 

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