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OM-2 のこと [演劇]


こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は診療所は日曜日のため休診です。
午後はちょっと私用で出掛ける予定です。

今日はちょっと演劇の話です。

上のチラシは、1995年に観た、
OM-2 という前衛劇団の公演で、
場所は法政大学の古いホールです。

僕はこの劇団の公演をこの時に初めて観て、
それから一昨日の金曜日の夜に、
15年ぶりに新作公演に足を運びました。

OM-2 という劇団は、
現在最も前衛的な集団の1つです。

まず1995年の公演から紹介しますと、
これはね、観客を鉄骨の足場で組んだ、
幾つかの小さな檻の中に閉じ込め、
その数人の観客を乗せた檻がキャスターで場内を移動し、
檻の外のパフォーマンスを観る、
というタイプの風変わりな演劇です。
まあ、ディズニーランドのライド型のアトラクションを、
貧相かつ暴力的にしたような感じです。

僕はこういうお化け屋敷みたいな発想が大好きで、
これは明らかに寺山演劇が原点ですが、
今そんなことをする集団は殆どないので、
非常に興味深い体験でした。

ただ、それでは面白かったか、と言うと、
それはちょっと微妙なところで、
寺山演劇ばりの身体を床に叩き付けるような、
暴力的な群舞などもあるのですが、
非常に動きが稚拙で、
俳優の肉体訓練のレベルの低さに、
がっかりさせられた覚えがあります。

それでは今回はどうだったかと言うと、
1995年には出演していなかった、
佐々木敦という巨漢の怪優が育っていて、
彼の異常な演技は、
僕は今回が初見だったので、
非常に驚きましたし、
かなりの強烈なインパクトを受けました。
引き籠もりのオタク趣味のような青年が、
彼の部屋の中でくるってゆくのですが、
その極めて独自な動きも、
独自な表情も、ちょっと類例のないもので、
彼の1人芝居のパートは、
圧倒的な迫力がありました。

ただ、全体としてはどうかと言うと、
今回も僕としてはちょっと首を捻るもので、
前半はグロテスクな1人芝居であるというのに、
後半は一転してブラストみたいな打楽器を、
キャスト全員で打ち鳴らすようなパフォーマンスが延々と続き、
佐々木敦自身も、何かすっきりした顔をして、
一緒に打楽器を叩いているので、
おやおやという感じでした。

また、せっかく異様な世界が展開されるのに、
上演開始後に、ダラダラと遅れて来たお客さんの客入れをするので、
その時点で観る側の緊張が途切れてしまいます。
こうした前衛演劇というのは、
「ひょっとしたら、上演が終わって外に出てみたら、
世界は終わってしまっているのではないかしら」
というくらいの、世界を捻じ伏せるような気分が必要な訳で、
その点に全く配慮がないのは、
僕には相容れないものを感じました。

終盤には、寺山演劇から移植した、
矢張り集団の群舞があるのですが、
その部分がどうも稚拙で、
15年前とレベル的にはあまり差がありません。
また小奇麗な白いシャツ姿で踊るので、
これもどうなのかしら、という感じです。
何かスタイリッシュなモダンダンスをしたいのか、
舞踏をしたいのか、演劇をしたいのか、
ジャンルを超えた何か新しいものを創造したいのか、
その辺りが不明瞭で、
どちらにしても成功してはいません。

次第に動きが激しくなり、
キャストが客席へと近付いて、
一旦静止するのですが、
その時皆が息が切れて、ハアハアと、肩で息をしています。
「よく頑張って踊ったでしょ」という感じで、
ダンスならそれでいいのかも知れませんが、
何か人間離れをしたものを見せたいのであれば、
こんな「人間的な」愚行を見せてはいけません。

寺山演劇の場合は、
動きが激しくなると共に暗転し、
音楽のみけたたましく鳴らし続けて、
灯りが付くと、キャストは倒れていてスローモーションに入るか、
その場から消えているのです。
これは要するに、
キャストが肩で息をしているような、
「人間的」な部分を見せたくないためですね。

寺山修司の演劇は、
僕にとっては矢張り唯一無二のもので、
今実際にまた目にしたら、
多分昔のように興奮したりはしないのだろうな、
とは思うのですが、
それでも、身体を床に叩き付け、跳ね上がる、
尋常ならざる群舞と共に、
スモークが焚かれ、
巨大な空間が「完全な」闇に包まれる瞬間とか、
もう一度目に出来たら、幸せだろうな、とは思うのです。

今日はちょっとマニアックな演劇の話でした。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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シロ

昨日の午後から喉が痛くて、プラスアルファ左の耳の奥が痛いんですが、これは喉からくるものなのでしょうか?

今日は喉の痛みはあまり感じず、耳がチクチクと痛いんですが、改源で様子みれば問題ないでしょうか?

いつも、くだらない質問で申し訳ありません。
by シロ (2010-02-14 10:10) 

fujiki

シロさんへ
耳の奥が咽喉と一緒に痛くなるのは、
結構良くあることなので、
今日は様子を見て心配ないと思いますよ。
by fujiki (2010-02-14 12:29) 

シロ

お返事ありがとうございました!
よくあることなら、よかったです。
昨日身体が温まると刺さるような痛みがして、なかなか寝付けなかったので、心配になってしまいました。
先生のおっしゃる通り今日はゆっくりして様子をみます。
by シロ (2010-02-14 12:43) 

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