鼻炎と花粉症の漢方治療の私見 [仕事のこと]
こんにちは。
六号通り診療所の石原です。
朝から健診結果の整理をして、
それから今PCに向かっています。
それでは今日の話題です。
昨日は抗アレルギー剤のリスクについての話でした。
今日は鼻炎や花粉症の漢方治療の話です。
その前にちょっと、年齢と鼻炎の特徴の話をします。
ご高齢の方が、寒いところに急に出ると、
鼻水が出て止まらない、
という症状を言われることが良くあります。
これは萎縮した粘膜が、
刺激に敏感になって起こる現象で、
アレルギーの関与のある場合もありますが、
通常は無関係の現象です。
この場合副交感神経をブロックする、
アトロベントとかフルブロンといった商品名の点鼻薬が有効です。
副作用も少ない良い薬なのですが、
現在は使用が出来ません。
点鼻のスプレーにフロンガスが使用されていたために、
販売が中止となり、
代替フロンを使用した代替薬は、
製薬会社の利益が望めないため、
作られていないのです。
こうしたところにも、
日本の医療の不合理さが現われている、
と僕は思います。
さて、鼻炎の漢方と言えば、
小青竜湯と言う薬剤が代表です。
鼻水や咳主体の風邪の比較的初期にも使いますが、
急性の鼻炎にもよく使用されます。
この薬は実証の薬なので、
かならず脈を触れ、脈が表面に触れることを、
確認して処方をします。
脈が触れ難く沈んでいる時は、
原則として使ってはいけません。
少し体力の落ちているような方の場合、
二陳湯という薬と半分ずつ混ぜて使用することがあります。
二陳湯は痰絡みを解消する作用のある薬で、
粘った鼻水で慢性化した鼻炎では、
小青竜湯単独より効果があります。
ようするに元気のある人で、
どばっと鼻水が出たら小青竜湯が良く、
少し元気がなくて、もたれたり身体が冷えたりの症状があり、
鼻水がねっとりしていたら、
二陳湯との合剤を選択します。
鼻が詰まって来たら、処方を変えます。
鼻詰まりの初期には言わずと知れた葛根湯です。
これで詰まりが解消しなければ、
葛根湯加川きゅう辛夷に変更します。
これは日本でアレンジされた薬で、
葛根湯に水を捌く薬を加えて、
その効果をパワフルにしたものです。
鼻水がドロドロで熱を持つと、
辛夷清肺湯という薬があります。
単独で使うこともあり、
また葛根湯加川きゅう辛夷と、
半量ずつ混ぜて使うこともあります。
これは鼻詰まりを解消する作用を、
少しパワフルにする意味合いがあります。
葛根湯系統があまり効果の無い場合、
荊芥連翹湯がもう1つの選択肢になります。
これは日本で考案された、ちょっと特殊な処方で、
慢性の扁桃腺炎があって、アトピーもあり、
それから蓄膿も起こる、といった一連の症状に対して、
1つの処方で効果がある、とされるものです。
僕は概ね以上の選択肢の中から、
処方を選び、花粉症や鼻炎の治療に活用しています。
原則として長期の使用は避け、
症状が改善した時点で中止し、
また悪化すれば再開します。
花粉症には症状のないうちから、
長期間抗アレルギー剤を使用するべき、
という意見がありますが、
その根拠は薄弱で、
長期使用のリスクを考える、という視点に乏しく、
僕は無知な発想だ、という立場です。
今日は僕の行なっている、
鼻炎の漢方治療の概説でした。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
六号通り診療所の石原です。
朝から健診結果の整理をして、
それから今PCに向かっています。
それでは今日の話題です。
昨日は抗アレルギー剤のリスクについての話でした。
今日は鼻炎や花粉症の漢方治療の話です。
その前にちょっと、年齢と鼻炎の特徴の話をします。
ご高齢の方が、寒いところに急に出ると、
鼻水が出て止まらない、
という症状を言われることが良くあります。
これは萎縮した粘膜が、
刺激に敏感になって起こる現象で、
アレルギーの関与のある場合もありますが、
通常は無関係の現象です。
この場合副交感神経をブロックする、
アトロベントとかフルブロンといった商品名の点鼻薬が有効です。
副作用も少ない良い薬なのですが、
現在は使用が出来ません。
点鼻のスプレーにフロンガスが使用されていたために、
販売が中止となり、
代替フロンを使用した代替薬は、
製薬会社の利益が望めないため、
作られていないのです。
こうしたところにも、
日本の医療の不合理さが現われている、
と僕は思います。
さて、鼻炎の漢方と言えば、
小青竜湯と言う薬剤が代表です。
鼻水や咳主体の風邪の比較的初期にも使いますが、
急性の鼻炎にもよく使用されます。
この薬は実証の薬なので、
かならず脈を触れ、脈が表面に触れることを、
確認して処方をします。
脈が触れ難く沈んでいる時は、
原則として使ってはいけません。
少し体力の落ちているような方の場合、
二陳湯という薬と半分ずつ混ぜて使用することがあります。
二陳湯は痰絡みを解消する作用のある薬で、
粘った鼻水で慢性化した鼻炎では、
小青竜湯単独より効果があります。
ようするに元気のある人で、
どばっと鼻水が出たら小青竜湯が良く、
少し元気がなくて、もたれたり身体が冷えたりの症状があり、
鼻水がねっとりしていたら、
二陳湯との合剤を選択します。
鼻が詰まって来たら、処方を変えます。
鼻詰まりの初期には言わずと知れた葛根湯です。
これで詰まりが解消しなければ、
葛根湯加川きゅう辛夷に変更します。
これは日本でアレンジされた薬で、
葛根湯に水を捌く薬を加えて、
その効果をパワフルにしたものです。
鼻水がドロドロで熱を持つと、
辛夷清肺湯という薬があります。
単独で使うこともあり、
また葛根湯加川きゅう辛夷と、
半量ずつ混ぜて使うこともあります。
これは鼻詰まりを解消する作用を、
少しパワフルにする意味合いがあります。
葛根湯系統があまり効果の無い場合、
荊芥連翹湯がもう1つの選択肢になります。
これは日本で考案された、ちょっと特殊な処方で、
慢性の扁桃腺炎があって、アトピーもあり、
それから蓄膿も起こる、といった一連の症状に対して、
1つの処方で効果がある、とされるものです。
僕は概ね以上の選択肢の中から、
処方を選び、花粉症や鼻炎の治療に活用しています。
原則として長期の使用は避け、
症状が改善した時点で中止し、
また悪化すれば再開します。
花粉症には症状のないうちから、
長期間抗アレルギー剤を使用するべき、
という意見がありますが、
その根拠は薄弱で、
長期使用のリスクを考える、という視点に乏しく、
僕は無知な発想だ、という立場です。
今日は僕の行なっている、
鼻炎の漢方治療の概説でした。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2010-02-13 08:30
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いつもブログを楽しみにしています。
抗アレルギー薬のことでちょうど悩んでいるところで、
質問させてください。
5歳の息子が乾燥肌で皮膚科で処方された保湿剤を塗っています。
夜寝ている間に汗をかくと背中にぶつぶつが出来てしまうため、
ステロイドの塗り薬以外に、アレジオンドライシロップが処方されました。もともとかゆみは無いため、飲ませなかったのですが
、体質改善効果もあるから飲ませなさいと叱られました。
とりあえず2週間飲ませましたが、目立った効果は無く、逆に
鼻水が出てトイレが近く、夜中に寝ぼけて起きることが多くなり
ました。
個人的には薬を長く飲ませることに抵抗があり、先生のブログを見て
本当に息子に抗アレルギー薬が必要なのか疑問に思っています。
お忙しいと存じますが、是非先生のお考えをお聞かせ下さい。
by モカ (2010-02-13 14:09)
モカさんへ
コメントありがとうございます。
乾燥肌自体の改善効果は、
アレジオンには特にないと思います。
皮膚科の先生はアトピーのような体質を疑い、
その改善の目的で、
処方をされたのだと思います。
先生の意図を尊重するとすれば、
1ヶ月間使用し、
それで皮膚の状態に改善傾向がなければ、
中止する、という方針で如何でしょうか?
ただ、基本的に痒みも目だった湿疹もないとすれば、
漠然と「体質改善」というのは、
あまり意味のあることとは思えず、
その指標も存在しないと思うので、
モカさんのお考え通り、
すぐに中止しても、
僕は特に問題はないものと考えます。
ご参考になれば幸いです。
by fujiki (2010-02-13 19:06)
お忙しい中、早々のアドバイスありがとうございます。
先生のおっしゃる通り、息子の症状は軽いもので
これから免疫がついて自然と良くなるのか、それともアトピーへと
進んでしまうのか今の時点では分からないそうです。
個人差もあるとは思いますが、アレジオンという薬に
本当に体質改善効果があるのかも気になっているので
しっくり納得出来ていないのかもしれません。
とりあえず処方された分を飲みきったところで、
皮膚科の先生の指示を仰ぎたいと思います。
まずはバランスの良い食事と外でしっかり遊ばせることに
気を配りたいと思います。
貴重なアドバイスをありがとうございました。
by モカ (2010-02-13 19:31)