薬としてのニコチン酸の話

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

昨日からのニコチン酸の話を続けます。

昨日はニコチン酸に、
画期的な動脈硬化予防作用があるのでは、
という話でした。

実際にニコチン酸は、
細胞内のNADという物質に変化することにより、
細胞の老化を防ぎ、
悪玉コレステロールと中性脂肪を低下させ、
善玉コレステロールを上昇させ、
心疾患の発生を抑えます。

今日はその臨床応用についての話です。

ニコチン酸はサプリメントとしても販売され、
また薬としても「ペラグラ」という病気の治療薬として、
保健適応されています。

「ペラグラ」というのは、
高度にニコチン酸が欠乏した時に起こる病態で、
日光によって皮膚が赤くなって水ぶくれが出来、
口内炎や舌炎も伴います。
嘔吐や下痢のような消化器症状や、
痙攣のような神経症状を伴うこともあります。
この場合、重症であればニコチン酸の注射を行ない、
軽症であればニコチン酸アミドの飲み薬が使用されます。

飲み薬でニコチン酸アミドを使用するのは、
ニコチン酸を多く摂取すると、
身体が熱くなって火照るような、
セロトニン様の副作用が出易いためです。

このため、現在国内で、
サプリメントとして販売されているニコチン酸は、
実際にはニコチン酸アミドが、
使用されています。

ただ、厳密に言えば、
ニコチン酸とニコチン酸アミドは別の物質で、
体内でNADに変化する点は同じですが、
一般にコレステロールを下げるような作用は、
主にニコチン酸で検証されているもので、
本当にニコチン酸アミドでも、
同様の効果があるかどうかは、
明確には分かりません。

そして、昨日ご紹介した論文の、
動脈硬化を改善する効果は、
ニコチン酸を2000mg という高用量使用して、
得られたものです。

また、ニコチン酸には稀ですが、
肝機能障害の報告もあります。
これもサプリメント程度の用量で起こることはほぼなく、
高用量使用した場合に、起こり得るものだと考えられます。

ニコチン酸は動脈硬化の予防に、
非常に有用な薬と考えられますが、
海外用量は、日本で使用するには、
やや抵抗があります。

通常の食事からの必要量は、
1日15ｍｇ 程度で、
その上限量はニコチン酸で100ｍｇ、
ニコチン酸アミドで300ｍｇとされています。

薬としてはニコチン酸とニコチン酸アミドの、
両者が使用可能ですが、
副作用がなければ、まず効果の明らかなニコチン酸を、
1日50ｍｇ から徐々に増量し、
出来れば200ｍｇまで増やして維持。
もし皮膚紅潮などの副作用が強いようであれば、
ニコチン酸アミドに切り替えて、
600ｍｇ 程度の使用を考慮するのが、
無難なラインではないかと僕は思います。
（日本の現状では400mg 以上の処方は困難かも知れません）
昨日ご紹介した論文では、
コレステロールを下げる薬剤と、
ニコチン酸との併用が行なわれていますが、
日本の添付文書によると、
併用は横紋筋融解症のリスクを高める、
とされています。
この根拠の詳細は不明ですが、
日本で使用する際には、
基本的にはニコチン酸は単独で使用し、
併用はニコチン酸アミドを使用するのが、
無難な選択のようです。

ニコチン酸は決して安全性の確立した薬剤ではありませんが、
安価で動脈硬化の阻止に一定の効果が期待出来、
うまく利用すれば、医療費削減の意味でも、
有用だと僕は思います。
（ただ海外のように2000ｍｇ も使用すれば、
安価とは言えません）

ジェネリックという、1つの薬剤に複数の価格を国が決める、
という曖昧かつ不公正な制度ではなく、
むしろ古い薬の効果を見直すことで、
医療費は削減が可能なのではないでしょうか？

今日は薬としてのニコチン酸の話でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

コメント 1

お返事ありがとうございました。
そうですね。マイペースが１番ですね。
一応万歩計をつけて、調子悪い日以外は5000歩以上歩くようにしています。
あと、腕立て、腹筋、背筋、屈伸を20回ずつ続けようとしてるんですが、なかなか続きません。
屈伸は今の所１週間程続いてます。
毎日ちょとずつ努力して、回復できるように頑張ります。
自分のような人間の質問に丁寧に答えていただきありがとうございました。

あと先生のお役に立つかわかりませんが、イミダペプチドという栄養ドリンクを飲みはじめてから、全快とはいかないものの、たいぶよくなった気がします
by シロ (2010-01-21 14:56)