続・新型インフルエンザ事例集

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なのでカルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日は診療所で経験した、
新型インフルエンザの事例をご紹介します。

別に目新しいものとは思いませんが、
1つの記録として残しておきたいと思います。

勿論この場合の「新型インフルエンザ」というのは、
流行状況と診察所見、および、
簡易検査の結果からの推測で、
確定診断ではありません。
（確定診断は行政に独占的に管理されていて、
末端の医者には施行が許されていないからです）
その点はご理解の上お読み下さい。

事例1は41歳の男性です。
ある日の午後に寒気がして、
その夜一時的に38度に発熱しましたが、
それほどの重症感はなく、
熱も翌日の朝には平熱になりました。
2日目は軽い咳と鼻水と身体のだるさがあり、
その次の3日目も同様の症状で熱はありません。
インフルエンザではなさそうだが、
何となくだるさが強いので、
不安になり3日目に受診されました。
重症感はなく熱も平熱です。
ただ、のどを見ると、
のどの奥は比較的インフルエンザに、
典型的な腫れ方をしています。

念のためと思い簡易テストを施行すると、
はっきりＡ型の陽性反応が出ました。

これは昨日の事例ですが、
同じ日に矢張りもう1人、
同じように数時間のみ発熱し、
後は平熱の40歳の男性が来院し、
同じように陽性反応が出ました。

更に先週には40歳の女性で、
ほぼ同じ経過で感染が確認された方がいました。
その方は、自分のお子さんからの感染ですが、
お子さんは40度の発熱が2日持続したのに対して、
お母さんは数時間の発熱で、
だるさだけが持続するという経過を辿りました。

一昨日、近隣で高齢者を多く診察されている、
在宅医療の先生にお聞きしましたが、
まだその先生は新型インフルエンザの患者さんを、
診られたことはないとの話でした。

僕が嘱託医をしている老人ホームでも、
それらしい感染者は確認出来ていません。

どうやら、少なくとも、この渋谷区の周辺では、
40代以上の感染者は非常に稀なようです。

ただ、少し気になるのは、
先週くらいから、明らかに40代前半の、
新型インフルエンザの患者さんが、
診療所では増加しているという事実です。

それ以前にはご家庭でお子さんが感染しても、
お父さん、お母さんには殆ど症状が出ていなかったことから考えると、
少し罹かる年齢層が変化しつつあるのではないか、
という印象を持たざるを得ません。

ただ、現状は40代の感染者の症状は非常に軽く、
季節性インフルエンザのB 型に見られるような、
だるさが続き、あまり熱は出ないけれどすっきりしない、
という「こもったような」症状の方が多いのです。

また、これも昨日診察した16歳の女性は、
学校での感染ですが、
3日間の経過で熱はずっと平熱で、
ただ、関節の痛みと頭痛、身体のだるさが2日続き、
それから咳と鼻水が続く、という経過でした。
重症感はなく、症状だけから見れば、
「インフルエンザはありませんね」
と断言したくなる事例です。
ただ、のどの所見は矢張りインフルエンザに典型的だったので、
簡易検査を施行し、矢張りＡ型の陽性反応が出ました。

このように、症状はあっても熱はなく、
「38度以上の発熱」という基準では洩れてしまう、
インフルエンザの事例も存在するのです。

感染経路不明の大流行、というのは、
概ねこうした方を媒介にして、
感染が拡大するのだと考えられます。

現状で言えることは、
一時より症状は多彩なものとなり、
症状のみでインフルエンザと診断出来るような時期は、
もう過ぎているということです。

僕はのどの所見と経過を拠り所にして、
簡易検査をするかどうかを選択していますが、
それが正しい判断であるかどうかは、
正直なところはよく分かりません。

季節性インフルエンザの予防接種がそろそろ始まりますが、
今年は失政の影響で例年の8割程度しか生産されず、
卸からは例年の7割しか保障は出来ないとの通告がありました。
それも20本ずつのような小出しにしか入荷せず、
「次はいつ入荷するのか？」
と訊いても、
「分かりません」と首を振られるだけです。
季節性インフルエンザのワクチンが、
早い時期に不足するのは、
ほぼ間違いのないという情勢です。

以上新型インフルエンザの現場からの報告でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。