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おねしょの原因とその治療の話 [仕事のこと]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談に廻ります。

それでは今日の話題です。

今日は昨日に続いて、
おねしょの話です。

おねしょは排尿障害の1種ですが、
その原因はかならずしも、
はっきりと分かっている訳ではありません。

ただ、大きく分ければ、
睡眠と覚醒に問題があるか、
膀胱の働きや排尿の仕組みに問題があるか、
それともそのお子さんの環境に問題があるか、
それらの原因がミックスしているか、
の4つになります。

これだけで、既にややこしいですね。

まず睡眠のことについてですが、
通常誰でも夜におしっこに起きることがありますよね。
これは寝ている間におしっこがある程度以上溜まり、
もう出さないとまずい、という状況になると、
そのアラームが覚醒を促し、
目を覚まさせるという仕組みがある訳です。
詳細は必ずしも明らかではありませんが、
おねしょをするお子さんでは、
睡眠と覚醒とのバランスが、
スムースになっておらず、
生理的な危機に対して、
覚醒が起こらない、という異常がある訳です。
これがまず第1の原因です。

次に膀胱の機能の問題が考えられます。
昨日お話したように、
膀胱にはある程度の量のおしっこを溜めたまま、
それを漏らさないようにする仕組みがあるのです。
ところが、寝る前にちゃんとおしっこをして、
膀胱を空っぽにしているのに、
夜中におしっこが出てしまうとすれば、
膀胱の中におしっこを保つ仕組みに、
何か問題があるのではないか、
ということになります。
1番考えられるのは、
膀胱が収縮し易い状態になっているのではないか、
ということです。
交感神経が緊張し、
副交感神経が抑えられた状態で、
膀胱は弛緩している訳ですが、
そのバランスが崩れているか、
もしくは膀胱の大きさが極端に小さかったり、
出口を締めている筋肉の働きが弱かったりして、
おしっこを膀胱にあまり溜められないのではないか、
という可能性がある訳です。

通常多い原因は、膀胱が過敏な状態になって、
中に溜まったおしっこの量に関わらずに、
行き当たりばったりに縮んでしまう状態です。
こうなると、少ししかおしっこが溜まっていないのに、
おしっこが我慢出来ない状態になったり、
我慢出来ずに漏らしてしまったりします。
これを「過活動性膀胱」と言って、
通常高齢の女性に多い症状とされていますが、
実は子供にも多いことが、
最近報告されています。

次に環境要因ですが、
これは夜更かしや不規則な生活をして、
睡眠のリズムがうまく作られなかったり、
水を飲み過ぎて、
夜のおしっこが多くなり過ぎたりしたことによる、
おねしょの増加です。

そして、通常こうした要因が複数混ざり合って、
おねしょが起こっているのです。

それではどうやっておねしょを治療すればいいのでしょうか。

まず最初に確認しておかなければいけないことは、
おねしょは1年に20パーセントは自然に治るということです。
従って、副作用のある薬を使うくらいなら、
そのまま様子をみた方が、
良いケースも多いのです。
海外の治療方針では、
5歳くらいに治療を開始した方が良い、
というのが一般的な意見です。
ただこれは生活習慣の違いも、
あるのではないかと思われます。
お子さんがまず困るのは、
友達と泊りがけで出掛けるような場合です。
そうしたケースには、
通常欧米の方が早く直面するようです。

治療方針を立てるためには、
排尿習慣の確認が必要です。
おもらしの回数や尿の量と飲水の量を、
2週間程度観察し、
治療の参考にする訳です。

世界的な治療のガイドラインでは、
まず「夜尿アラーム」か抗利尿ホルモンの点鼻を行ないます。
「夜尿アラーム」というのは、
おもらしを感知して警報を鳴らす装置です。
水分を感知するセンサーをパンツかオムツに付け、
それにブザーが繋がっています。
おねしょの水分でブザーが鳴る仕組みです。
一種の心理療法ですが、
5割以上の効果があると言われています。
日本では作られていないようですが、
輸入品が売られています。
ただ、お子さんがブザーで目を覚まさないと、
親御さんが結局起こさなければいけないので、
親御さんの負担が大きく、
あまり続けられないことが多いのが難点です。

抗利尿ホルモンは、
そのものずばりおしっこを止めるホルモンです。
このホルモンは脳の下垂体から出ていて、
脱水状態になると刺激され、
おしっこの量を減らして、
血液の電解質が乱れないように調節をしているのです。

従って、本来はホルモンの異常のある人しか、
使ってはいけない薬なのですが、
夜寝る前に使えば、
理屈から言って、確実に尿の量は減ります。
従って、特に学校で泊りがけの旅行に行く時などは、
恥ずかしい思いをしないために、
使うのには手っ取り早い治療薬ではあるのです。

この薬は一種の劇薬なので、
慎重に量を調節して使う必要があります。
使い過ぎれば、おしっこを出せなくなり、
血液のナトリウムが下がって、
身体がむくみ、
悪化すると脳のダメージが出ることもあります。
水分量に気を付け、
定期的なおしっこと血液の検査も必要です。

それ以外に抗うつ剤や抗コリン剤と呼ばれる薬も、
主に過活動性膀胱に対して使われます。
これは主に副交感神経を抑える薬です。
膀胱の収縮を抑え、
おしっこを安定して溜め易くする訳です。
しかし、注意しなくてはいけないことは、
自律神経のバランスの崩れが問題なのであって、
別に副交感神経の緊張が悪い訳ではないということです。
要するに、目立つ部分を抑えてしまえ、
というだけのことで、
根本的に治すための治療ではないのです。

おねしょ(夜尿症)というのは、
基本的に自然治癒が望ましい病気です。
お子さんが不快な経験をしないために、
最低限の対処は必要ですが、
現時点で根本的な治療法がない以上、
それは決して自然治癒の力を、
損なうものであってはならないと思います。

今日は夜尿症の治療についての話でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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めめ

こんにちは!
小学一年生6歳の息子が毎晩オネショをします。
気にしていなかったのですが、周りから医療機関の受診を勧められることもしばしば出てきました。。。
が、息子は3月の早生まれ。何事もゆっくり発達してきたので、あと少し様子を見てもいいと判断したときに、先生のブログを拝見しました。

[それは決して自然治癒の力を、
損なうものであってはならないと思います。]

同感です。自然治癒力と息子の成長を見守りつつ、しかし、しっかりと向き合って治してあげたいです。

ありがとうございました。

by めめ (2010-08-09 15:11) 

fujiki

めめさんへ
コメントありがとうございます。
少しでもご参考になる点があれば、
非常に嬉しいです。
by fujiki (2010-08-10 06:12) 

りつこ

4年生の男の子です。
おねしょが、治らず悩んでいます。
今まで病院にも行ってみましたが、まだほっといてよいと言われたり、
一年前に病院に行ったときは、毎朝のおしっこの検査(おしっこを出した2時間以内に病院に持っていく)と毎日のおしっこチェック量に回数・水分量・我慢しっこの量・おねしょの量・回数ばかりを3カ月続け何の進展もなく、親子ともに辛くなりやめてしまいました。
そろそろ もう一度、病院にいかなくてはと思っていますが、検査ってどのくらいかかるものなのでしょうか?
自宅療法で、勝手に夜尿アラームを試してからでもよいでしょうか?
本人すごく気にしているだけに早く治してやりたいです。
by りつこ (2011-10-17 09:57) 

fujiki

りつこさんへ
通常は2週間程度のおしっこの観察で、
ある程度の結論は出さないといけないと思います。
ポイントは尿の濃縮力に問題がないか、ということと、
夜間の尿量が多くないか、
そして、膀胱にどの程度おしっこを溜めることが出来ているか、
という辺りだと思います。
夜尿アラームは結構お子さんにもストレスになることが多いので、
矢張りもう一度ご相談頂くことをお勧めします。
その場合はある程度具体的な方針を、
主治医に求めて頂いた方が良いのではないかと思います。
by fujiki (2011-10-19 08:30) 

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