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「告白」の嘘(ネタばれ注意) [科学検証]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

昨年発売された「告白」という小説があって、
ベストセラーになっています。
お読みになった方も、
多分いらっしゃるかと思います。
少年犯罪と学校との関係などを、
ややどぎついタッチで描いた小説ですが、
「本屋大賞」に選ばれるなど、
本好きの評価も高い作品とされています。

その中にHIVの話が登場します。
その内容に100パーセントの嘘はないのですが、
以前取り上げたドラマの「ヴォイス」と同じように、
医学的知識なく内容を読むと、
HIVに対するかなり誤った認識に、
繋がりかねない部分があると僕は思います。

そこで、今日はちょっとその点について、
僕なりの検証をしてみたいと思います。

重箱の隅を突くようなことばかりしているように思われると、
本意ではないのですが、
HIVの知識の確認という意味合いで、
お付き合い頂ければと思います。

小説の内容に踏み込む部分がありますので、
もしこれから読まれるご予定の方は、
お読みにならないようにお願いします。

以下ネタばれがあります。

この小説は、
まずある中学校の女性教師の、
最後の授業の語りという趣向で始まります。

その女性教師は、ある熱血教師と恋に落ち、
結婚し女の子を妊娠します。
その妊娠が分かった時点で、
夫婦揃って血液検査を受けると、
夫の熱血教師はHIVに感染していたことが判明します。
妊娠検査を受けた段階で、
女性教師は自分は陰性であることが分かった、
と話します。
ただ、今度は自分の子供に感染しているのでは、
と不安に駆られます。
そして、父親がHIVであることで差別を受けることを怖れ、
結婚しない決断をします。
出産した女の子は検査の結果、
感染していなかったことが分かり、
彼女は胸を撫で下ろします。

まず、ここまでのところで、
幾つかの作者の事実誤認があるのですが、
皆さんはお分かりになりますか?

まず、この女性は性行為のパートナーが、
HIVに感染していたと知り、
自分が妊娠検査を受けた段階で、
同時に検査をして、
自分は感染していないことを確認した、
と言っています。
しかし、HIVのウイルスに接触してから、
感染の有無が確認出来るのは、
通常3ヶ月後のことです。
それより前の時期には、
感染の有無の正確な判断はまだ付かないのです。
妊娠したということは、
性交渉が存在したのですから、
その性交渉でHIVが感染した可能性はある訳です。
妊娠の検査を受けるのは、
通常性交渉の1ヶ月半後ですから、
まだその時点では、
HIVの感染の有無は判断は出来ないのです。

ここにまず1つの事実誤認があります。

次に、この女性教師は、
自分の子供にHIVが感染しているのでは、
と不安に慄きながら出産を待つのですが、
そんな不安を持つ必要はありません。
何故なら、お子さんにHIVが感染するのは、
通常出産の時点だからです。
出産時の産道か分娩時に、
お母さんの感染した血液と接触して、
感染が成立するのです。
小説の事例では、
お母さんの感染は否定されているのですから、
妊娠のその後の時期に、
お母さんは何ら不安を持つ必要はありません。
お父さんの持つHIVが、
お子さんに感染することは有り得ないのです。

ここにもう1つの事実誤認があります。

従って、この部分を正確にするとすれば、
こんな感じになります。

「妊娠の分かった時点で、
パートナーがHIV感染者であることが分かり、
自分も感染しているのではと不安になったが、
妊娠5ヶ月の時に検査をして、
自分は感染していないことが確定した。
それで子供にも感染しないことが分かったので、
それだけはほっと胸を撫で下ろした」

念のため付け加えておけば、
現時点でお母さんが仮にHIV感染者であったとしても、
妊娠の早い時期にそのことが把握出来ていて、
適切な処置が取られれば、
生まれてくるお子さんにHIVが感染することは、
100人に1人もありません。

この女性教師は医療に明るいという設定ではないので、
誤った考えを持っていても、
設定上は問題ないのでは、
と思われる方がいるかも知れません。

しかし、原作をお読みになると分かるように、
この作者は女性教師の口を借りて、
「HIV が性交渉で感染する確率はどのくらいでしょう」
などと、HIV感染症の啓蒙めいた書き方をしています。
これを読んだ一般の方が、
これはHIVについての事実だと思っても、
仕方がない書き方をしているのです。
従って、こうした書き方をしている以上、
述べられた内容は基本的には正確であるべきだ、
と僕は思います。

ただ、これだけで驚いてはいけません。
その後物語は壮絶な展開を迎えます。

この女性教師の女の子はすくすくと成長しますが、
4歳の時にプールで溺死します。
当初は事故と考えられたのですが、
母親の女性教師の追及により、
実は彼女の教え子の2人の少年が、
身勝手な理由で殺害したことが分かります。
復讐を考えた女性教師は、
自分のかつてのパートナーのHIV感染者の血液を、
「朝こっそり採取」して、
生徒の飲む紙パックの牛乳に混ぜ、
その生徒に飲ませたと生徒の目の前で、
宣告します。
これが犯人への彼女の復讐だと言うのです。

何と言うか、びっくりですね。

話はこの後二転三転するのですが、
僕が問題だと思うのは、
内容を読む限り、この時点では、
リアリティのある復讐法として、
読者にこの血液ミルク混入法を捉えて欲しい、
という視点で書かれていることは、
明らかだということです。

でも、この考え方は、HIVの患者さんの血液を、
人を不幸のどん底や死に陥れる、
ある種の忌まわしい凶器として扱っている、
ということになります。
HIV感染症という、
現実に多くの患者さんを苦しめている、
現実の病気の名前を出しながら、
それを「悪を為す道具」のように扱うのは、
あまり趣味の良い芸当とは僕には思えません。

それはそれとして、
まずこの牛乳にHIVの血液を混入するという、
トンデモ復讐法の馬鹿馬鹿しさについて、
ちょっと説明しておきましょう。

皆さんも、こんな馬鹿馬鹿しい方法が、
万が一にも成立しないことは、
すぐにお分かりになると思います。

大体血液を牛乳の中に入れて、
どうなると思いますか?
勿論すぐに固まって、分離してしまいます。
朝取った血液を混ぜて、
昼に牛乳として飲ませるなんて、
実現出来る訳がありません。
第一、以前のパートナーの血液を、
彼が眠っている間に、採血の経験もないというのに、
どうやって「こっそり」採取したのでしょうか?
透明人間になって、見えない上に痛くもない魔法の針で、
刺したのかしら。
奇奇怪怪ですよね。
ラストには実はパートナーは気付かない振りをしていたのだ、
というこじつけが加わるのですが、
それでも設定の不自然さが変わる訳ではありません。
目くそ鼻くその違いですが、
血液ではなく精液を混入した、
と言った方が、
もう少しリアリティが増したかも知れません。

HIVの感染は、通常血液同士の接触か、
性交渉以外では成立しません。
勿論ウイルスを多量に含む血液を大量に飲めば、
口の粘膜からウイルスが侵入する可能性はありますが、
牛乳に混入した程度では感染成立の可能性は、
殆ど存在しないでしょう。
お母さんの母乳からお子さんに感染した事例はあるのですが、
それは量が大量であることと、
赤ちゃんの胃腸の免疫機能が、
まだ未熟であるためと考えられます。

おまけにこのパートナーは、
HIV感染症の治療中なのです。
治療中の血液には、もうウイルスは殆どない筈です。
従って、感染する可能性も更に低下するのです。

ここまで読んで頂ければ、
この方法が実現可能性は殆どないのに、
「HIV患者の血液は毒である」という、
嫌な気分だけを残し、
ある種の誤った病気への感覚を、
助長する役割しか果たさないということが、
お分かり頂けるのではないか、
と思います。

ラストになって、唐突に、
殆ど感染の可能性はない行為だったけれど、
確率がゼロではない限り正しい裁きが下される筈、
という強引なこじつけが加わりますが、
それならどうしてこんな設定にしたのか、
という疑問が却って強くなります。
実現不可能だという指摘を受け、
辻褄合わせに書き加えたものと思われますが、
そんなことをするくらいなら、
端からHIVなど取り上げなければいいのです。

要するに、作品を読む限り、
別にHIVが出て来る必然性はないのです。
別の架空の病気でも全然構わないし、
他の毒物を登場させても良い訳です。
HIVを敢えて取り上げるのであれば、
もう少し適切な知識を元に、
無用なHIVへの恐怖感や、
患者さんへの偏見を助長しかねないような表現は、
厳に慎むべきだと思うのですが、
皆さんはどうお考えになりますか。

今日はHIVに対する歪んだ知識を元にした、
ベストセラーの話でした。

勿論今日の話は「告白」という小説の、
小説としての価値や評価に言及したものではありませんので、
その点はご理解の上お読み頂ければ幸いです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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A・ラファエル

世の中、病気であることが悪であるという安易な発想が目立ちます。
私自身も障害があり、確かに病名はついているけれども、
とても健康で別に病魔に蝕まれているわけではないということを
説明しても理解されないことがあります。
by A・ラファエル (2009-04-23 10:11) 

fujiki

A・ラファエルさんへ
コメントありがとうございます。
病名がある種のイメージを纏って、
1人歩きするような傾向が、
特に報道の対象になるような病気では、
偏見の源になっているような気がします。
by fujiki (2009-04-23 18:07) 

ayuki

こんにちは。はじめまして。
はじめましてで突然のコメントで、申し訳ございません。

小説を読む前に、あなたのブログを読んでよかったと思います。
ありがとうございました。
by ayuki (2010-06-04 14:17) 

fujiki

ayuki さんへ
コメントありがとうございます。

一応「ネタばれ」注意なので、
ご注意下さい。
by fujiki (2010-06-04 21:20) 

りお

このブログを沢山の人に読んで欲しいです。
あの小説や、それを元に作った映画を見る人たち以上に
沢山の人たちに。
この記事に出会えて、少し心が晴れました。
心から感謝致します。
by りお (2010-06-05 15:51) 

fujiki

りおさんへ
コメントありがとうございます。

僕はこの作品はHIVに対する無理解と、
その差別の助長のために、
本来は出版が停止されても、
当然ではないか、という意見です。
ただ、現実には評価される方が圧倒的であることに、
非常に驚きましたし、
絶望的な思いがしました。
この記事も書いた時点では、
殆ど読んで賛同されるような方はいませんでした。

1人でも同意見の方がおられると知り、
本当に嬉しく思います。
ありがとうございました。
by fujiki (2010-06-05 21:16) 

やえ


その様な間違いが堂々と書かれているなんて
作品そのものが偽物ではありませんか!

本屋大賞というのは、本屋さんが薦める本ですが
販売促進に寄与する内容のものを選んでいるようなので
自ずと、売れ線を意識することになるのでしょうが
それにしても酷い・・あまりにも無知すぎます!

私も、出版が停止されても当然だと思いますが・・。
医師会や患者団体が正式に抗議する必要があるのでは?

by やえ (2010-06-06 00:32) 

fujiki

やえさんへ
コメントありがとうございます。

無知で悪趣味な作品だと僕は感じました。
ただ、悪趣味な作品を書くことも自由だし、
それを読んで面白いと思うことも自由なので、
そのこと自体の是非は僕には分かりません。
ただ、本屋さんが推奨したり、
テレビでじゃんじゃん宣伝する映画にしたりするのは、
何処か歪んでいるのではないかな、と思います。
実際の病気をグロテスクに戯画化するような作品は、
あまり誇れるようなものではないと思うからです。

by fujiki (2010-06-06 05:46) 

あどーる

「告白 ネタばれ」で検索して、偶然ここを訪れました。

数十年前ならまだしも、現在でもこんなお粗末な設定で
平然と出版されるなんて驚きです。
これって手品師を「魔法使い」として魔女狩りする様な
前時代的発想ですよね。

今回HIVの正しい知識を幾つか知れて良かったです
理解する事は相手だけでなく自分の為でもありますから。
by あどーる (2010-06-07 04:04) 

fujiki

あどーるさんへ
コメントありがとうございます。

この記事は2009年に4月に書いたもので、
その時点で入手した単行本の記述を元にしています。
従って、その後若干記述が変わっている可能性はあります。
映画は見ていませんし、
特に見るつもりもありませんが、
おそらく血液を採る場面などは、
そのままでは映像化は不可能ですから、
原作を修正しているのではないか、
と推測されます。
ただ、僕は細部の問題より、
実際に多くの患者さんが苦しまれて、
現実に差別を受けている病気の方の血液を、
「復讐の凶器」として用いる、
という発想そのものが、
あまりに悪趣味で不快であり、
あどーるさんが言われるように、
数十年前ならともかく、
現在書かれたものとしては、
あまりにお粗末で前時代的だと思います。

少し前にHIV感染者の看護師が解雇された話が、
報道され問題になりましたが、
そうした風潮を助長する意識が、
この小説の中には存在する、
と言う気がします。

出版社には青少年にも読んでもらおう、
という意図が感じられ、
そうした売り方にも、
僕は非常に問題があると思います。
この小説は少なくとも、
影響され易い多感な時期に、
読むべきものではないと考えます。
by fujiki (2010-06-07 06:44) 

えいこ

わたしも話題になってこの本を手に取ったのですが、HIV感染者の血液を復讐の道具にする、という設定に怒りを覚えておりました。

当事者の方々がいくら啓発・啓蒙活動を行っていても、こんなふうに簡単に覆されてしまい、HIVは恐ろしい・怖い怖い、なんていう風にまた世論が作られていってしまうのだと思っていたので、このブログを読んで力づけられました。

本書の感想レビューでも後味の悪さだとか復讐の怖さだとか、そういったことばかりが取りざたされ、HIVの記述について取り上げたものはほとんどありません。
どうか誤解されることのないように、と祈りつつ、わたしもブログやツイッターで正しい知識を載せたいと思いました。

ありがとうございます、これからもがんばってください!
by えいこ (2010-06-13 17:02) 

fujiki

えいこさんへ
コメントありがとうございます。

ハンセン氏病などでは、
こうした記述は現在では許されないと思いますし、
出版社もその是非はともかく、
自主規制していると思います。

HIVの記述に対するこうした自由度は、
僕には甚だしくバランスを欠くもののように、
思えてなりません。

こうした設定の小説が差別的でないのだとしたら、
一体どのような設定が差別的なのでしょうか?
要するに圧力やクレームさえなければ、
何でもありなのではないか、
と勘繰りたくなるほど、
メディアの基準は非常に奇妙なものだと、
僕には思えます。
by fujiki (2010-06-13 22:01) 

えいこ

お返事ありがとうございます。
実はわたしはハンセン病問題をずっと勉強しているのですが、fujikiさんのおっしゃる通り、このような記述は許されません。仮に出版されても、すぐに問題になって差し止め等の処置がとられると思います。

それはハンセン病問題が裁判になったからとかそういうことではなく、そういう記述は許さない、という市民の意識にもよるのだと思います。

世論を形成するためのメディアが、今回は機能していないどころか宣伝をしてしまっているのが残念でなりません。
by えいこ (2010-06-13 23:11) 

マツコ

初めまして。
私は原作も映画も観ていません。
ですので、見ていない作品を批判している、という前提ですが、
ある映画評論の番組で「日本映画を変える面白さ!」と
絶賛されているのを見て、興味を持ちました。

しかし、他の「ネタバレ」レビューを読んで、激しく違和感を感じました。
真っ先に
「こんなことで、HIVになるわけないでしょう?
なんでこんなファンタジーなネタで、本や映画で評価が高いの?」
と思ったのですが、そのうち、ジワジワと不快感が
胃の底からこみあげてきました。

ここを読んで、牛乳と血液が混ざると、
さらに固まって、分離したり、患者の血の中には
もうウィルスはなかったり、など
思った以上にいい加減な内容だったのだとわかりました。

このページには「告白 HIV患者団体 抗議」で検索しました。
人の苦しみを単なる道具として扱う、無神経さ。
それは創作として、時に必要なのかもしれません。
それならもっと厳しく事実に即して、より大きなテーマに繋がるようなものであったら、
このざらつくような不快感は感じなくて良かったかもしれません。

レビューでは「誰も幸せにならない映画」とありましたが、
HIV患者への偏見を助長しそうな映画で、大もうけした映画会社と
出版社は、大変幸せなんだろうなと思いました。
松たかこはなぜ主演したのかな・・・。


by マツコ (2010-06-14 16:56) 

fujiki

マツコさんへ
コメントありがとうございます。

この小説は内容的には、
HIVがさほど大きな比重を占めてはいないのです。
単純に「嫌な気分」を醸成する道具として、
HIVが出て来るだけのことです。
そうした不快な道具に、
現実に差別の存在する病気の名前を使用するというのは、
あまりに無神経で下品なことだと僕は思います。
by fujiki (2010-06-14 22:25) 

route623

はじめまして。
Twitterでこの記事について書かれている方がいらっしゃいましたので拝見させていただきました。

無知は恥、痛感いたします。

様々な病気について、すべての知識を一般人が理解するのは不可能ですが、最低限の情報……HIVについてならば「どうすると感染する可能性があるのか」だけでも教育すべきと感じます。

子宮頸癌もそうなのですが、感染の原因に「性交」があると臭いものには蓋的な扱いを教育現場はしていると思います。
正しく教えない事で「悪」を作り上げてしまい、偏見が生まれるのではないでしょうか。

自分の思う事を書く、それを公に発信する。
最近はそれが個人でも気軽すぎて、発言の責任が軽くなっていることに不安を感じます。
逆に元々公に作品を発信していた方にまでその軽さが広がっているようにも思います。

偏見を病とすれば、ウィルスをバラまいているのは人そのものですね。そのワクチンを作れるのも人だと思います。


by route623 (2010-06-15 00:14) 

はる

映画では、三ヶ月というのもちゃんと説明されていますし、旦那さんもエイズで死んだのではないとなっています。
エイズはクスリで発症をおさえられるとも言っていますよ。
本では牛乳を入れ替えたのだった気がしますが、
映画では血をとる所で旦那さんに気づかれ(針が刺さればそりゃ気付く)、血液は入れてません。
彼女の復讐は、エイズの恐怖ではなく、愛するものを奪われる悲しみを味わわせることにあるのではないでしょうか
by はる (2010-06-15 00:30) 

route623

>はるさん
横レス申し訳ございません。
fujiki(ブログ主) 様は原作の小説についての言及をされています。
そして医学者としての過ちを指摘されています。

【はるさんコメント引用】
彼女の復讐は、エイズの恐怖ではなく、愛するものを奪われる悲しみを味わわせることにあるのではないでしょうか

作品の本質は仰る通り「愛するものを奪われる悲しみを味わわせること」かもしれませんが、ではなぜ「HIV」や「エイズ」を道具として使用したのでしょうか。いわばアイコンですよね。でも実在する、しかもまだ完治できない病をアイコンにする事が間違っているのではないか?という風に私はこの記事を解釈いたしました。

作品の本質について否定はされていないです。
【fujiki(ブログ主) 様記事から引用】
勿論今日の話は「告白」という小説の、
小説としての価値や評価に言及したものではありませんので、
その点はご理解の上お読み頂ければ幸いです。

また、あどーるさんへのfujiki(ブログ主) 様からのレスにお考えが集約されていると思います。

>ブログ主様
横レスの上、私の解釈も間違っていたら申し訳ございません。
不適切であればお手数ですが削除願います。
by route623 (2010-06-15 02:01) 

fujiki

route623 さんへ
コメントありがとうございます。

ご配慮ありがとうございます。
感謝しています。
HIVがこのような文脈で扱われること自体、
不適切で不幸なことだと思いますが、
そうお感じにならない方が大多数だ、
ということは認識していますし、
それは仕方がないことなのだと思います。
by fujiki (2010-06-15 06:32) 

fujiki

はるさんへ
コメントありがとうございます。

映画はおそらく色々と辻褄合わせとをしているのだろうな、
とは思っていましたので、
その一端が分かって助かりました。
ありがとうございました。
あの作品は第一章がいかにも酷くて、
ただ、その内容が最初に評価され、
(確か単独で賞を取ったのですね)
連作短編の形式で本になったので、
最初の設定は酷いとは分かっていても、
変えられないので後付けで辻褄合わせをするのだと思います。

だって、最初にHIVの血液を牛乳に入れて、
未成年に飲ませたと教師が発言しておいて、
最後にそれは入れていませんでした、
とか、誰かがすり替えていました、
というのは何と言うか、
あんまり酷い辻褄合わせでしょ。
最終的に入れてなければ、
それでOKなのでしょうか?
それなら、殆どのイジメ行為にも、
全く罪はないことになってしまいます。

ただ、どう考えてもあの展開で、
HIVの啓蒙になったり、
HIVの差別を解消するような内容には成り得ないので、
矢張り僕はHIVという言葉自体を、
取り去った内容にするべきだったと思います。

映画のスタッフがこの作品の酷さは分かった上で、
色々な辻褄合わせはしつつ、
HIVという言葉は残したとすれば、
それは僕はHIVを取り上げた方が話題になる、
という単純にそれだけの理由によるもので、
その発想こそ「下品だ」というのが僕の立場です。

小説にも現時点では手が入っているのかも知れませんが、
僕の手元には記事の元にした単行本はあるので、
その内容が記事の通りであることは、
別に証明することはやぶさかではありません。

最後にこの記事が昨年の4月に書かれたものであることを、
再度お断りしておきます。
by fujiki (2010-06-15 06:48) 

みかん

はじめまして。

私は、小説も読んでおらず、映画もまだ見ていませんが、
こちらのブログで内容を確認し、また、このような問題のある作品だと知ることができ、
とても感謝しています。

私も、HIVという大きな問題を、正しくない知識をもとに作品内で扱うことには反対です。

沢山の方がこの病気で苦しまれ、また偏見にも苦しまれている中で、
このような映画や小説といった影響力のある媒体で、間違ったイメージをもたれる事がいかに苦痛かを考えると、心が痛みます。

ただ、作者の方がこのような問題を作品に込めてしまったということを、
その頃あまり理解していなかったとしたら、
(もちろん、理解せずに書いたとしても問題は変わりませんが)
そして、今それについて後悔していたらと思うと、それも悲しい事だと思いました。

… 私自身、深く考えずに行動してしまい後悔することがあるので…


すみません。
問題がそれてしまいました…

fujikiさんの記事や、ここに書かれている他の皆さんのコメントを拝見し、
この問題点について皆さんが真剣に取り上げていることに共感し、嬉しく思いました。
勉強になりました。
ありがとうございました。


by みかん (2010-06-16 00:32) 

fujiki

みかんさんへ
コメントありがとうございます。

映画は本当に見ていないので、
それに対して論評するつもりはありません。
世紀の大傑作で魂を揺さぶり、
人間の善悪について、
深く考えさせる作品であるのかも知れませんし、
そうでないのかも知れません。
ただ、細部の修正はあるにせよ、
「HIVの血を飲ませてそれが復讐だ」
という原作の設定自体が踏襲されているとすれば、
それは矢張り倫理的に許されるべきものではないと、
僕は感覚的にはそう思います。
(もし映画の設定がそうでないとすれば、
僕の誤りですので、
ご指摘をお願いします)

ただ、「そううるさいことを言うなよ、
最終的にはHIV差別は良くない、
という内容になっているんだから」
と言われれば、
そういう考え方もあることは理解出来ますので、
個人的に僕はその考え方には反対だ、
というだけのことです。

原作の作者のお考えは僕には分かりませんし、
みかんさんの言われる通りなのかも知れません。
僕がむしろ問題にしたいのは、
この作品が出版され、メディアにも頻繁に取り上げられ、
映画化されて、派手に宣伝されている、
ということの中では、
多くの人がそれに関わり、
その良心的とされる多くの人の手によって、
この設定が容認されている、
という事実です。
そのことは「うっかり」では済まない、
と僕は思います。

「血は汚い」という発想は、
差別意識の根幹に関わるものを含んでいて、
僕自身小学生の頃に、
「お前の血は汚ないんだよ」
のような言葉による、
イジメの場面に遭遇したことがあります。
つまり、「血」という言葉は、
「血筋」という意味合いと、
「病気」という意味合いの、
忌まわしい2つのイメージを同時に含んでいます。
「血を飲ませる」という行為を忌まわしく感じさせるのは、
その2つのイメージを同時に喚起するからです。

医療者の立場で言うと、
血液というものは、
非常に慎重に扱うべき体液であり、
その使用により多くの病気が伝播され、
現在でも多くの方が苦しんでいる、
という現実があります。

つまり、こうした多くの事実がありながら、
何となくセンセーショナルな感じがするから、
という程度の理由で、
「HIVの血を飲ませてそれが復讐だ」
というような表現を、
あからさまに使用することはあるべきではない、
特にHIVへの差別が現に存在する日本という社会においては、
というのが僕の本当に言いたいことです。
by fujiki (2010-06-16 06:46) 

山根

映画をちゃんと見てれば分かると思いますが
「先生は血液を採取できなかったし、牛乳に混ぜてもない」
「『仮に入れたとしても感染なんてしない』と本人がいってる」
からして、中学生を嘘と芝居で怖がらせただけだと思います。

話の中でのHIVの扱いに関しては趣味が悪いと言えますが、
小説や映画でそこを突っ込んでも仕方が無いと思います。
by 山根 (2010-06-17 15:56) 

fujiki

山根さんへ
コメントありがとうございます。

記事の趣旨と内容を誤解されている気がするのが、
非常に切ない思いがするのですが、
それも僕の不徳のいたすところだと思います。
もっと研鑽を積み、
山根さんにもことの本質を、
分かって頂ける記事が書けるように、
努力したいと思います。

もし「素晴らしい」映画と「素晴らしい」小説の、
感動を汚されたようにお感じになられたとすれば、
大変申し訳なく思います。
世の中には色々な考え方があり、
色々な倫理観が存在する、ということで、
ご容赦頂ければ幸いです。

僕自身は自分の倫理観を曲げるつもりはありませんが、
それを誰かに強制するつもりもありません。
by fujiki (2010-06-17 16:56) 

名無しさん

だれかがHIVに関してもっと教育すべきという書き込みをされていて、そこが気にかかって書き込みさせていただきます。

私は20を越えるおっさんですが、小学校の頃にHIVに関する授業を受けて、結構記憶に残ってます。また、その時にHIVの映画も見ていて、時間もほどほどに割かれていたと思います。

ブログに書かれている胎児の感染について等、正直に言うとそこまでは知りませんでしたが・・・


by 名無しさん (2010-06-17 23:42) 

fujiki

名無しさんへ
貴重なご意見ありがとうございました。

僕は矢張りそうした地道な教育など吹き飛ばしてしまうほど、
小説や映画の影響力は強いのではないか、
と思います。
by fujiki (2010-06-18 08:45) 

fujiki

皆さんへ

絶対見るまいと思っていたのですが、
色々な意見の方がいらっしゃるので、
映画は昨日見て来ました。

記事で取り上げた小説の記述の誤りの部分は、
映画ではカットされていました。
HIVに関する設定は小説そのままで、
その設定は矢張り僕には許せないのですが、
映画版は小説よりは、
遙かにレベルの高い作品にはなっていたと思います。
ただ、かなり悪趣味ではありますね。
by fujiki (2010-06-18 08:50) 

tomoko

まったく同じ意見を持っていたものです。

個人的には、作者と出版社の社会的責任でもあるし、本屋大賞の信頼性が問われるべき問題ではないかと思っていますが、アマゾンの書評を見たときに、「そんなことに目くじらを立てても意味がない、作品として素晴らしければよい」という意見も多く、難しいのかなと思っていました。でも、ここのコメント欄には前向きな意見が多くほっとしています。

映画は少しマシだという方が多く、議論をしたいので、気が進みませんが一度観にいこうと思っています。
by tomoko (2010-06-23 13:11) 

fujiki

tomoko さんへ
コメントありがとうございます。

少数でも同じご意見の方がいることを、
非常に嬉しく思います。
映画の感想もupしましたので、
お読み頂ければ幸いです。
http://rokushin.blog.so-net.ne.jp/2010-06-18

これは推測ですが、
割と強引な肯定論や、
否定する意見を威圧するようなコメントが、
多くの方がご覧になる書評などに多いのは、
その論理や文体にも特徴があり、
全てとは言いませんが、
関係者による自作自演があるのだろうな、
と理解しています。
まあ、宣伝の一環なのでしょうね。

でも勿論、一般にも、
「そんなことにいちいち目くじらを…」
という意見が多いことは、
悲しいことですが、
事実だと思います。
by fujiki (2010-06-23 14:34) 

タヌキ

はじめまして。
私は映画は見たけど、小説は読んでいない弱輩者です。

ブログ主さんの言いたい事、葛藤は理解します。

しかし、あの話の主題はなんでしょうか?
私にはHIVを主題にしているとは到底思えませんでしたが。

そして、テレビの番宣でもやっていましたよ。
「この作品は最高のエンターテイメントだ」と。

「そんなことにいちいち目くじらを…」
には。そんな意味も含まれていると思います。

乱文御容赦を。
by タヌキ (2010-06-27 09:09) 

fujiki

タヌキさんへ
御一読ありがとうございました。




by fujiki (2010-06-27 09:24) 

タヌキ

連投すみません。

一般の人のHIVへの知識のなさ。
これを嘆いても仕方ない事かと。

ブログ主さんは医療従事者という事で
御存じだったと言うだけで、
(私は知っていましたが)女房のHIVへの反応も
映画の中の中学生と同じでした。

そして中学生からしてみれば、
教室での先生からの意味ありそうな告白
に騙されると言うのはHIVへの無知ではないのでは?

それよりは、映画なり小説が爆発的にHITしている現在
多くのブログ主がこうやって題材にして
コメント欄で多種多様な意見を募りつつ啓蒙していく。
地道ですが、それしか正しいと思われる事を広げるには
それしかないのでは?

投降後に貼り付けミスで上記が抜けてました。

乱文失礼しました。

by タヌキ (2010-06-27 09:24) 

fujiki

タヌキさんへ
コメントありがとうございます。

言われることは良く分かりました。

出来ましたら、原作の単行本を、
なるべく人から借りるか、図書館を利用するか、
古本屋さんで買って、
読んでみて下さい。
映画はかなり巧みに原作の「不快さ」を、
カバーしているので、
僕がこの記事で書いていることのニュアンスは、
映画だけをご覧になっても伝わり難いかと思います。
また、原作は当初、
映画の最初の女性教師の授業の部分だけが、
独白体の短編小説として新人賞を取り、
その後連作短編の形で、
後半部分が発表されました。
つまり病気の件は、
短編小説の一種のオチなのです。
その点も頭に置いて頂ければと思います。

その短編小説の発表の段階で、
誰もこの病気の扱いを問題にせず、
「衝撃的な結末」のように捉えた、という点に、
僕は現状の日本のこの病気に対する一般の意識の、
大きな問題がある、と思っています。

映画に関しては多くの優れた点があると思いますが、
この病気の扱いはそのままにしたことが、
結果的に原作の設定を容認するような形になり、
その点が問題ではないかな、と思います。

僕はミステリーは大好きで、
勿論医学的にオヤオヤという設定もありますが、
それがおかしい、とは思いません。
クリスティーにもある病気の感染を、
トリックに用いた作品があります。
ただ、この「告白」の場合は、
作者はそれほど吟味することなくこの設定を考え、
なかば無意識に一般の方の多くが持っている、
この病気に対する差別意識や無理解、偏見のようなものが、
結果としてここに、
現われているような気がするのです。

作者がたとえ誤っていたとしても、
この設定やこの病気のことを正面から考え、
ただの「道具」としてではなく、
取り上げていたとすれば、
僕は問題視するつもりはないのです。

何となくこの設定を扱い、
それが作品を目に留めた多くの人に、
問題のないこととして共有されている、という点に、
僕は恐怖を覚えますし、
タヌキさんが言われるように、
差別意識を変えるための、
もっと地道な活動が、
より広く行なわれるべきなのではないかと思います。
by fujiki (2010-06-27 10:10) 

ななし

AIDSは薬を飲んで治療してもウイルスが減るのでは無く活動を抑えて進行を遅らすのでは無かったですかね?

by ななし (2010-07-03 19:43) 

fujiki

ななしさんへ
コメントありがとうございます。

少し古い資料ですが、
前版のハリソン内科学を引用致します。
(一部省略、改変あり)

「今日用いられている最も一般的なHIV治療の選択肢は、
2種類の異なる抗レトロウイルス剤の、
3剤併用療法である。
治療開始後、
血中HIV RNAレベル(要するにウイルス量のことです)は、
1~2ヶ月以内に1log(1/10)に減少し、
やがては血中HIV RNAレベルが、
1ml当たり50コピー以下となることが期待出来る」

僕の理解が正しければ、
治療によりウイルス量は減ると思います。

今家に帰って来たところです。
何と言うか、切なく悲しいですね。
皆さんにこの悲しさが、
僅かでも分かって頂けたらと思います。
by fujiki (2010-07-03 21:29) 

ごはん

初めまして。
先日映画を観た、18歳女性です。原作は読んでいません。

観終わった最初の感想は「おもしろかった!」です。
私自身は平和的でのほほんとしたタイプの人間なのですが、
恋愛や、不良少年を題材にしたような日本映画に辟易しており、
暴力的な表現や、ハッピーエンドでない終わり方をする本作に強く惹かれました。

管理人さまの仰るとおり「悪趣味」な映画ですが、
本作が作り出す「悪趣味」な雰囲気こそが、最大の魅力であると思いました。

私は医療について、HIVに関しての知識が乏しく、
女教師・森口の口から
「IHV感染者の血液を混入した牛乳を飲んでも感染しない」という言葉を聞いても「本当?感染しないの?」と思っていたほどです。

正しい知識を得て映画の内容を消化したい、というのもありましたが、
なによりも自分の為に、パートナーのために、
HIVと戦っている人の為に、将来生まれるであろう自分のこどもの為に、

HIVの事をもっと知らなければいけない
と思い、検索しているうちにこちらにまいりました。

管理人さまの文章を拝見し、自分の無知を恥ずかしく思いました。
本作を「おもしろいよ」と薦めてしまった友人に、
無神経で無学なやつだと思われてしまうかも知れないと思うと、
なんともやりきれない気持ちになります。

映画を観て「HIVへの差別・偏見はいけない!!」と思った自分ですが、

無知な自分のような人間が差別を生むのだと、反省しました。

それでも、本作を観て良かったと思います。
HIVの正しい知識を知ることが出来たからです。

DVDになったら、もう一度観たい。
何のハラハラも、ドキドキもしないんじゃないかな。
私に起こったことと同じで、
きっと何年か後には、まったく面白くない映画になっていると思います。

拙い文章ですみません。







by ごはん (2010-07-15 21:07) 

fujiki

ごはんさんへ
コメントありがとうございます。

映画は悪い出来ではないと思うのですが、
それだけにHIVという言葉は、
出して欲しくはなかった、
というのが正直なところです。
ごはんさんのように考えて頂ける方が増えれば、
「こうした設定が面白い」
という発想自体がなくなるのではないかと思います。


by fujiki (2010-07-16 06:28) 

くれせんと

はじめまして。
以前から、「告白」をHIVに関する記述の部分で悪趣味で後味の悪い小説だと思っておりました。
それが本屋大賞になったり、映画化されたり、たくさんの人に支持されることに非常に違和感を持っておりました。

エンターテイメントでも、書くべきではないこと・書いてはいけないことというのはあると思います。
特に判断能力が未熟な若者が接する小説や映画では…。

このようなきちんとした医学的知識を元に解説していただき、おかしいことをおかしいと言っていただけたことに感謝いたします。
by くれせんと (2010-07-26 01:49) 

fujiki

くれせんとさんへ
コメントありがとうございます。
そんなに目くじらを立てなくても…
という意見もあるのですが、
この小説の場合は、
矢張りHIVという実名は外すのが、
お子さんも読むような小説の場合は、
適切ではないかと僕は思います。
本屋大賞はねえ、その影響を考えると、
酷い選択だなあ、とは思います。
本屋さんがこの本を多くの人に読んで欲しい、
というのはねえ、悲しいですね。
by fujiki (2010-07-26 08:54) 

NO NAME

自分は学生で図書委員なんですが、文化祭などで一つおすすめの本を紹介しようって話があって、本は告白にしようと思ってるんです。
告白の紹介にこの記事の一部を使ってもいいですか?
by NO NAME (2010-08-18 21:37) 

fujiki

NO NAME さんへ
申し訳ありません。
言われる趣旨が良く分からないのですが、
僕は個人的にはこの本を、
あまり学生さんにお勧めはしたくないので、
そうした文脈の宣伝であれば、
出来れば引用はしないで頂ければと思います。
多分この本を絶賛されているようなブログや宣伝文は、
山のようにあると思いますので、
そうした絶賛の文章を、
お使いになるのが良いのではないでしょうか?
by fujiki (2010-08-18 22:01) 

mugiho

小説をざっと読みました。
HIV患者を、ストーリーにインパクトを与えるための道具としか思ってないような扱いでびっくりしました。
こちらを読んで、さらにいくつも間違いがあるのを知りました。
最後で「感染の確率がゼロでなければ正しい裁きが下される」と書かれていつのも、「相手が悪人であれば、HIV患者の血液は経口からも毒になりえる」と言っているみたいで、まったくフォローになっていないのでは?と思わされました。
実在する人や病気などを扱うなら、下調べをして、配慮を重ねないといけないと思います。
一部間違いがあるという程度ではなくて、HIVの扱い方をはじめ、全体的に何について語るにしても配慮や理解が一切なくて、作者の偏見と俗っぽい主観があふれた、幼稚なものに感じられました。
もちろん買っていません。読んだことも後悔しました。
by mugiho (2010-08-22 02:37) 

fujiki

mugiho さんへ
コメントありがとうございます。
僕もmugihoさんに賛成です。
この小説の場合、
架空の病名でも全然問題がないのですから、
そうすべきだと思いますし、
実際に多くの偏見の存在する病気の実名を出し、
それを「復讐の道具」として使う、
という設定であれば、
その使用にはフィクションとは言え、
もっと慎重であるべきだと思います。
by fujiki (2010-08-22 08:02) 

私はHIV感染者です

特に予備知識も無しにこの本を読みました。
小説としては大変良くできていると思いました。
けれども読後、どうしても手元に置いておきたく無くて、
すぐに古本屋に売りに行きました。
(捨てても良かったのですが貧乏性なのと
本を捨てる事に抵抗がある人間なので)

この小説でHIVという病気自体にさほど意味は無く、
既述されているように「単なる飛び道具」
として使用されています。
私の感じる限り、そこには啓発もない代わり
偏見を増長させようとする意図も感じられません。
その「意図の無さ」こそが私をなんともやるせない
気持ちにさせたのだと思います。

この小説ではHIVはただの記号として使われます。
得体の知れない空恐しい病原体としてHIVは最適だった。
著者はHIVへの無知そのものも道具立てとして
とても効果的に利用しています。

私は基本的に「フィクションならば何でもあり」
という、かなりおおらかに作品を楽しむタイプです。
ただそこに、病気やレイプ等の犯罪が、
この小説のように「単なる道具」として
記号的に使われる事には違和感を感じます。

癌・白血病=薄幸・不治の病
HIV・ウィルス性肝炎・梅毒
=淫乱・自業自得・死に至る病
レイプ・児童虐待=トラウマ

このような病気や犯罪を記号として利用した話は
今までも氾濫していました。
ただ「告白」という作品は、
そのフィクションとしての
圧倒的なショック、構成力、演出により、
そこいらのチンケな「不治の病が主人公」の泣ける話
等とは一線を画しています。
そのフィクションとしての斬新さと完成度が
多くの人に評価される所以であり、
だからこそHIVに関する記述も、
非常に強力な飛び道具として
良くも悪くも読者・視聴者に強い印象を残した。
「どうせフィクションなんだから」
「そんなに目くじら立てなくても」
と流してしまえないのは、
この作品がそれだけ強い力を持っているからです。

この作品を素直に楽しんでおられる方。
この作品をエンターテインメントとして素直に楽しめるのは
あなたにとってHIVは所詮他人事だからです。
この作品のレビューにHIVに関する記述が見られないのは、
HIVの扱いに対するuntouchableなメディアの感覚と、
世間一般の「他人事」感によるものでしょう。
私自身も病気が分かった20代ではHIVなんて対岸の火事、
それこそテレビや映画の中のお話でした。

小説は書きたい事を書けば良いと思っているし、
言論統制などあってはならないと思います。
しかし一方で受け取る人々の反応は
如実にその人の感覚を表します。
この作品の大ヒットを通して
私の病気が分かった約10年前から今も
HIVに関して何ら世間の「他人事」感に変わりは無いんだなと
改めて感じさせられました。
唯一先進国で感染者数が増加し続けているのも納得です。

「差別は良くない!(ウェルテルが言いそう)」
「HIVを復讐の道具に使うなどけしからん!」
等という単純な問題ではないと私は思います。
無知と無視は罪悪です。
皮肉にもこの作品はそのことを教えてくれます。
一度でもセックスした人は感染の可能性があるし、
実はあなたの身近にも感染者はいる。
その事実にこの国の人々は目をそらし続けている。
それが私には一番救いのない結末です。










by 私はHIV感染者です (2011-01-15 00:17) 

fujiki

HIV感染者です さんへ
コメントありがとうございます。
軽率なことは言えませんが、
貴重なご意見をありがとうございました。
by fujiki (2011-01-15 06:23) 

茶々原

昨日レンタル店で映画本編を借りて視聴し、
感想としてはすごくおもしろかった、けど
HIVのくだりはどこまで本当なの?と思い検索して
こちらに辿りついた次第です。

良くも悪くもHIVという単語を用いた作品がヒットし
多くの人の目にとまることで、学校では詳しい知識を得られない
病気について改めて学びたい、という意欲をもつ
きっかけになった、という点においては評価できるのではないか、と
一種の反面教師のように感じました。
私自身、この作品に触ればければ一生無知のままだったと思います。


今後この作品について周りに勧める際には
「あの部分の描写だけはありえないけど」と念を押した上で
観賞後にこちらの記事を読むことを勧めたいと思います。

乱文失礼しました。
by 茶々原 (2011-03-24 02:07) 

fujiki

茶々原さんへ
コメントありがとうございます。
茶々原さんのような冷静な考えの方が増えていると感じ、
非常に嬉しく思います。
これkらもよろしくお願いします。
by fujiki (2011-03-24 09:16) 

ころっぽ

映画を中途半端に見て検索で辿りついた者です。医療にはズブの素人なので、不適切な用語の使い方で誤解を与えるかもしれませんが、言わんとしていることを汲み取っていただければ幸いです。

まず、小説はより”不適切”だったんですね。
そして作品の中での、「感染の可能性は限りなく低いと分かってました云々」という”言い訳”。これは限りなく最低です。
なぜならこの発言は、娘を殺害した相手をもっとも不幸にする方法は”不治の病であり、他人に感染する可能性のあるHIV感染者にする(なる恐怖を与える)こと”だという作者の認識を強調しているだけだからです。

正直に申しますと、私はHIV感染者が少し怖いです。知るうる限り身近にHIV感染者がいませんがもし居たとしたら、おそらく心を全くの平静保って接することはできないだろうと思います。
私は年代的に、未解明ゆえのエイズの様々な誤解が今よりも蔓延していた時代の中で育ってきました。
曰く”絶対治らない””数年苦しんで死ぬ””接触によって感染する”等々。
年を重ね、医学的な解明も進み正しい知識が広まりつつある現在でも、幼少期のころ抱いた怖さを完全に拭い去ることができずにいます。頭ではわかっていても、どこかで心がざわつくのです。そしてそれは、ある年代以上の多くの方々に共通の感覚なのではないでしょうか。だからこそ作中のHIVという設定に意味が出てくるのですから。そしてそこをわざわざ狙い、あまつさえ浅はかな”言い訳”までした作者の品性の愚劣さに非常に不快感を覚えます。下衆の勘ぐりと言われるかもしれませんが、この”言い訳”は、表面上HIVへの妥当な認識を装っていながら、可能性が低くても実行する意味があるぐらい相手を不幸にできるという、その実HIVの恐怖を増幅する演出だったのではないかとまで思ってしまいます。

若い世代に無用な恐怖を植えつけてなんの益があるのだろう。
HIVへの差別をなくしていこうという努力を多少なりとも台無しにしてしまった罪は重い。
作品自体は多少斬新で話題性があった分だけより罪が重くなってしまうのは皮肉なものです。

怒りに任せた乱文ですが書かずにはいられませんでしたすいません、お邪魔しました。fujikiさんのような聡明な方の意見に触れることができて幸いです、ブログこれからも拝見させていただきます、頑張ってください。
by ころっぽ (2011-06-13 02:10) 

fujiki

ころっぽさんへ
コメントありがとうございます。
映画はそれなりに良く出来ていて、
監督はいつもやや問題のある原作を取り上げるので、
確信犯なのだと思いますが、
矢張り特定の病気の扱いには抵抗があります。
by fujiki (2011-06-13 08:27) 

みつばち

作品のあらすじを検索していて辿り着きました。ブログ主様のお考えに全面的に賛同、この様な記事をお書きいただいたこと、感謝申し上げます。

私の話とはなりますが、過去に小説の宣伝であらすじに触れ、血液を牛乳に混入の件を読み、何かモヤモヤしたものを感じると同時に、下品で悪趣味なストーリーと直感的に感じていました。
その印象が残り作品に興味がわかず、小説も映画も見ておりませんが、本ブログに触れたこともあり、今後も見ることはないと思います。今回、こちらのブログで違和感の意味が分かり、この記事に救われた思いです。
私の主観かもしれませんが、一流の作家とは、題材にするテーマについて調べに調べあげて、その問題の背景、そこに存在する人々の喜び、悲しみ、苦悩などを深く理解することで、厚みのある作品を創られると思います。この作品の血液の件は、背景の情報収集と設定への配慮が全く足らず、作者の悪趣味なストーリーを印象づける道具にされたという印象を持っています。
また、多感な若い世代には特に、影響があり問題、というのも共感します。中高生くらいの若者には、衝撃的な設定の影響は大変大きいですし、簡単に誤解を植え付けられてしまうと思います。私自身、中高生の頃に影響や衝撃を受けた作品が、社会人になって再度触れると、稚拙で安易な展開だと感じ、自分が如何に簡単に影響を受けていたのか感じることがありました。大人なら距離をおいたり、知識で補完できる事柄も、若いうちは強く、時には誤った影響を受けてしまいがちだと思います。
主旨からそれますが、この作品(特に映画)が世に知れたのは、某広告会社の影響が大きいと思いますが、話題の作品(話題をつくられてる作品)が必ずしも背景設定と配慮が優れた良作ではないということを、今回、強く勉強させていただきました。
最後に、コメント欄にはブログ主様の論点から全く外れたコメント(自戒を込め、私も含め)が見受けられる様に思いますが、それでも真摯に返答されるお姿には頭が下がる思いです。
以上、本ブログに出会えたことへの感謝と、個人的な感想でした。ありがとうございました。
by みつばち (2011-11-12 03:15) 

fujiki

みつばちさんへ
コメントありがとうございます。
そのようにお読み頂けると大変うれしいです。
この作品は元々新人賞の投稿作品なので、
発表までに多くの方の目に触れている筈で、
そうした周辺の方の感覚の方に、
大きな問題があるような気がします。

by fujiki (2011-11-12 08:33) 

amano

私は個人的に小説を何度も読み、大変感動しました。このブログに辿り着き、逆に非常に不愉快な思いをしています。悲しみ とも言えます。あの小説を読んで、このように解釈される、という方がこんなに多くいるんだ、と思いました。つまり、、小説にあった言葉そのものを信じすぎている人が多くはないか、ということです。これを読んで誤った知識を持つ人は、文章を信じすぎる人、浅はかな読み込みをされた方ではないですか。倫理観の違う人間がいる、とのコメントを読みましたが、それでいいのでしょうか。ここで盛り上がっている正当化は、いじめをしていたクラスメイトを思わせる幼稚な批判に私にはみえました。ご本人たちはそのつもりはないのでしょう。厳しい失礼なことを書いてごめんなさい。
by amano (2014-03-09 01:38) 

にあ

こんにちは
私は原作を読んだことはなく、映画を見ただけです。
少しコメントを読んでいて違和感を感じたのは、このブログの多くの方が、HIV感染者の方を怖がるのは正しい知識を持っていないからだ、といった思考をしているところです。
たとえ感染しないとわかっていても、一般の人にとって、怖いことに変わりはないと思います。誰だって、例えば耳や目の不自由な人がいきなり傍にくれば、嫌悪はなくとも困惑すると思います。どうしていいかわからないから。そういった感情を抑えられるとすれば、相手が親しい相手の時だけです。
もちろんその方達は何も悪くないので気の毒ですが、そういった極普通の感情を安易に「偏見」として「悪」に分類するのも、一種の「偏見」だと思います。
私の友達には体が弱くよく学校を休む子がいて、私はよくノートを貸しましたが、いくら友達のためであってもやはり少し負担で、面倒だと思うこともありました。
けれどそれを明言すれば、私はひどい人だと言われたでしょう。
人と違うことは周囲に負担になることもあります。それを負担を負う側が常に笑顔で受け入れるべき、といった倫理観は「正しい」だけに逃れようがなく、厭えば「差別主義者」扱いされるあたり、性質の悪い社会暴力だと思います。
HIV感染者だからと差別されることはあってはいけませんが、傍で負担を受けたくないと思ったからといって非道扱いされるのも、根本的には同じ差別ではないでしょうか。
by にあ (2014-03-15 18:52) 

にあ

こんばんは
二度目のコメント投稿をさせていだきます。にあと申します。
随分と前と時間があいてしまったので、今更とは思いましたが、再度コメントさせていただきます。
前の私のコメントが、こちらの記事の趣旨と大きく異なっていたこと、遅くなりましたが本当に申し訳ありません。
コメントを読んで、不快になられた方もいらっしゃいましたら、申し訳ありませんでした。
これからは、よくよく趣旨を
理解するよう努めます。
自己満足ではありますが、申し訳ありませんでした。
by にあ (2014-06-07 00:46) 

お名前(必須)

読んだけど担任もAもそれを分かっている様子だったけど
by お名前(必須) (2018-02-20 21:30) 

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