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「海をゆく者」(2023年再演版) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
今日はこちら。
海をゆく者.jpg
2009年と2014年に旧パルコ劇場で上演され、
好評を博した翻訳劇、
「海をゆく者」が今9年ぶりに再演されています。

この作品は初演は観ていないのですが、
2014年の再演は観ていて、非常に感銘を受けました。
その時の感想記事がこちらです。
https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2014-12-21

これは中年男5人だけが登場する、
少人数の2幕劇で、
所謂「クリスマスストーリー」です。

初演と2014年の再演ではその5人を、
平田満さん、浅野和之さん、大谷亮介さん、吉田鋼太郎さん、
小日向文世さんという、
小劇場的には豪華絢爛な役者さん達が演じ、
演劇ファンに至福の時間を過ごさせてくれました。

それで今回の上演も非常に楽しみにして出掛けたのですが、
今回前半はまずまず良かったものの、
肝心の後半のポーカーの場面が意外に弾まず、
正直少しモヤモヤした気分で劇場を後にしました。

ちょっと残念です。

何が悪かったのかと色々考えたのですが、
矢張り吉田鋼太郎さんがいないのが大きいのかな、
というように感じました。

吉田鋼太郎さんが演じたのは、
このお芝居の主役である、
人生に深く絶望している平田満さんの兄で、
平田さんがネガティブ思考であるのに対して、
吉田さんの方は対象的にポジティブ思考で、
突然失明してしまったにも関わらず、
「何とかなるさ」と全然意に介する様子がありません。

そして死神に魅入られ、
死の瀬戸際にある弟を、
そのポジティブ思考が生の世界に取り戻す、
というのがこの作品の主筋です。

小日向文世さん演じる悪魔が平田さんを誘惑しますが、
平田さんはアル中でお酒を数日絶っているので、
それが本当に悪魔なのか、
単なるアル中の妄想なのかは、
実際には分からないのです。

キャストは比較的「陰性」の役者さんが多く、
その中で吉田鋼太郎さんの天真爛漫な「陽性」が、
前回までの上演では際立っていました。

正直吉田さんの演技はかなり雑で好い加減なものですが、
意外に真面目に演じる役者さんの多い翻訳劇では、
その存在がスパイスとして効いていて、
吉田さんが登場すると舞台にリズムが生まれて、
やや退屈な翻訳劇も面白く観られることが多いのです。

今回の再演では吉田さんの代わりに高橋克実さんが登場し、
勿論高橋さんも素晴らしい役者さんなのですが、
割合にその資質は平田さんに似ていて、
基調音はちょっと陰性の感じなんですね。
今回は特に吉田さんの後任ということを、
かなり意識して緊張されていた感じがあり、
吉田さんをなぞるようなお芝居に硬さがありました。

また、平田さんのお兄さんが高橋克実さんというのは、
ビジュアル的にもかなり無理のある感じで、
設定自体に違和感があったのも減点ポイントだったと思います。

他のキャストも前回と比べると、
さすがに少し疲れた感じがあって、
舞台の活力が損なわれるきらいがあったのが残念でした。

中では小日向文世さんの「悪魔」は、
以前と変わらず抜群の破壊力の見事な芝居で、
今回もとても感服しました。
この見事な芝居を観るだけで、
チケットの値打ちがあります。
個人的にはこの「海をゆく者」の悪魔と、
三谷幸喜さんの「国民の映画」で演じたゲッペルスが、
小日向さんのこれまでのベストプレイであったように思います。

そんな訳で正直少し残念な今回ですが、
舞台は生ものなのでこれは仕方のないことなのかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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