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「ケイコ 目を澄ませて」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は祝日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。
ケイコ.jpg
2022年12月に公開されて、
多くの映画賞を席巻した作品を、
遅ればせにキネカ大森で鑑賞しました。

岸井ゆきのさんが耳の聞こえないボクサーを演じ、
感情をあまり表現しない難役をリアルに熱演しています。
本当に自分の内面と対峙して、
それを全てさらけ出すような凄味のある演技で、
多くの演技賞に輝いたのも納得の仕上がりです。

作品的にはほぼノンフィクション、
という感じの作劇なんですね。
勿論フィクションなのですが、
ドラマチックな展開や物語的な部分を極力排して、
演出も如何にもノンフィクション、
という感じを意図的に出しています。
途中で練習を記録したノートを、
読み上げるような演出も、
ノンフィクションでよくある盛り上げ方です。

ただ、ノンフィクションでは絶対に描けない主人公の内面に、
ほんの少しだけ切り込んでいて、
それが結実しているのが、
ラストの主人公の長いアップだと思うのですが、
そこで表現された複雑なニュアンスが、
この作品を見事なフィクションに、
昇華させているのだと思います。

主人公が結構一筋縄ではいかないんですね。
素直なところもある一方で、
我が強くて、他人の言うことを聞かず、
簡単にコミュニケーションを取らせてもくれません。
でも、そうした複雑な1人の人間が、
必死で生きているというだけで、
それが何か他の人の心に、
明かりを灯すようなところがあるんですね。
そして話が進むにつれ、
その明かりが静かに観客に心にも届くのです。

後半ジムの閉鎖が決まって、
迷いながら最後の試合に臨む、
というようなところがあるでしょ。
普通もうちょっとドラマチックな展開を期待しますよね。
でも、そうは全然ならないんですね。
同じ失敗を繰り返して自滅してしまって、
あああ、という感じになるのですが、
それが見事にラストに繋がるんですね。
あまり今までに類例のないセンスだと思いました。

総じて、ちょっと抑制的過ぎるかな、
という感じもするのですが、
意欲的な人間ドラマの力作で、
岸井ゆきのさんの入魂の演技だけでも、
一見の価値のある映画だと思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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