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AIによる胸部レントゲン診断の有用性 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
AIによるレントゲン診断.jpg
JAMA Network Open誌に、
2021年12月29日ウェブ掲載された、
AIによる胸部レントゲン診断の有用性についての論文です。

少し古いものですが、
最近の動静を含めて一旦記事にしておくことにしました。

AIの活用が多くの分野で人間の能力を補完し、
場合によっては人間に完全に置き換わることが、
現実となりつつあります。

自動車の自動運転などはその最たるものですが、
医療の分野も例外ではありません。

特に人間のミスによる誤診の多い診断の分野においては、
自動車の運転と同じように、
AIが人間の診断のサポートをすることにより、
誤診を減らすことが期待され、
そのための研究が進められています。

その中でも最も進歩が著しく、
部分的には臨床応用が進められているのが、
レントゲンなどの画像診断の分野です。

今回取り上げる論文では、
一般的な画像診断である、
胸部のレントゲン画像が対象となっています。

胸部のレントゲン検査は、
健康診断などでは必ず施行されている、
非常に一般的な検査ですが、
1枚のレントゲン画像は、
一方向からの情報しかないので、
前後方向で骨や肺や心臓などが重なって表示され、
たとえば心臓や骨と前後に重なった部位の肺組織に、
しこりがあった場合には、
それが見落とされてしまうケースがあるのです。

そのため肺癌の検診としては、
胸部レントゲン画像だけでは不充分で、
肺癌のリスクが高い対象に限って、
断層画像が簡単に得られるCT検査が、
施行されることが必要と考えられています。

しかし…

CT検査は単純レントゲン撮影と比較すると、
はるかに多くの放射線の被曝を伴います。
そのために、検診の対象はリスクの高い事例に限る、
という制限がある訳です。

それを補完する方法として考えられたのが、
AIによって胸部レントゲン撮影の、
読影の精度を上げるという方法です。

今回の検証は9名の放射線読影医が、
二次検査などにて診断の確定している100枚のレントゲン画像を、
自力で読影した場合と、
AIの補助診断を活用して読影した場合とで、
その診断能の違いを比較しているものです。

その結果、
異常所見が実際に異常であった確率(感度)は、
AIを使用することにより10.4%、
正常所見が実際に正常であった確率(特異度)は2.4%、
診断の正確度は6.4%、
それぞれ有意にAIの使用により改善していました。
このAIによる診断能の向上効果は、
あまり経験のない読影医において、
経験のある医師より高い傾向が認められました。

実際にこうしたAI活用の診断補助プログラムは、
日本でも一部のメーカーで商品として売られています。
ただ、その導入には結構なコストが掛かりますし、
その有効性がしっかり検証されているとは言えません。
本来こうしたシステムは、
地域の末端の医療機関で流通してこそ、
意味のあるものですが、
高次の医療機関に優先して導入されているのが実際です。

画像診断をAIが補完すること自体は、
もう規定路線と言って良いものです。
ただ、それが本当に医療の将来に意味のあるものになるためには、
まだ多くのハードルがあるような気がします。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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