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閉経後のホルモン補充療法とうつ病リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
ホルモン療法とうつ病リスク.jpg
JAMA Network Open誌に、
2022年11月1日ウェブ掲載された、
閉経後の女性ホルモン補充療法とうつ病との関連についての論文です。

閉経による女性ホルモンの低下に伴って、
更年期症候群と呼ばれる一連の症状が起こり、
そこにはかなりの個人差があって、
症状の重い方は日常生活の維持も、
困難となることもあります。

そのため症状の強いような方では、
女性ホルモンの補充療法が検討されます。
女性ホルモンのエストロゲンのみを使用することもあり、
有害事象の軽減を意図して、
黄体ホルモンのプロゲステロンを併用することもあります。
飲み薬での使用以外に皮膚の貼り薬を使用することもあります。
これはいずれも血液のホルモン濃度を上昇させるので、
全身的な投与と言える方法です。
それ以外に、外陰部のみに塗り薬を使用することもあります。
これは局所療法と言うことが出来ます。

女性ホルモン補充療法は、
更年期症候群の症状の緩和のためには、
非常に有効性の高い治療法ですが、
血栓症や乳癌のリスク増加などの有害事象があり、
そのため定期的な検査をするなど、
そうした有害事象の可能性に留意しつつ、
治療を継続する必要があります。

更年期症候群では気分の変調や抑うつ状態など、
精神的な不調がしばしば合併しています。

これを更年期症候群の症状の1つとして考えると、
女性ホルモン補充療法が精神症状の改善にも、
有効ではないかと想定されます。

しかし、ホルモン補充療法に精神疾患の予防効果があったとする、
臨床試験データがある一方で、
そうした有効性はないというデータも複数存在しています。

今回の研究は国民総背番号制を取っているデンマークで、
1995年から2017年に45歳であった女性、
トータル825238名を対象とした大規模なもので、
子宮や卵巣の手術後や乳癌や子宮癌の既往のある患者さんは除外されています。

45歳時から平均で56歳まで経過観察を行ったところ、
23%に当たる189821名が何らかの女性ホルモン補充療法を施行し、
一方で1.6%に当たる13069名がうつ病を発症していました。

50歳未満で女性ホルモンの全身投与を施行した女性は、
施行しなかった女性と比較して、
その後にうつ病と診断されるリスクが、
1.50倍(95%CI:1.24から1.81)有意に増加していました。

そのリスクは治療開始翌年に最も高く、
女性ホルモンのエストロゲン単独で2.03倍(95%CI:1.21から3.41)、
プロゲステロンとの併用療法で2.01倍(95%CI:1.26から3.21)と、
なっていました。

外用剤による局所治療は、
開始時の年齢に関わらず、
うつ病リスクの増加とは関連が認められませんでした。

このように今回の大規模な検証では、
閉経後初期の全身的な女性ホルモン補充療法は、
その後のうつ病リスクの増加と、
関連している可能性が示唆されました。

更年期症候群に対するホルモン補充療法は、
その症状改善のために非常に有効な治療法ですが、
治療開始後数年はうつ病のリスクを増加させる可能性があり、
その点に留意して治療を行う必要があるとともに、
今後局所の補充療法については、
その有効性と有害事象の軽減の可能性について、
検証を深める必要がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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