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白内障手術と認知症リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。
今日はこちら。
白内障手術と認知症.jpg
JAMA Internal Medicine誌に、
2021年12月6日ウェブ掲載された、
高齢者の白内障手術が、
認知症リスクに与える影響についての論文です。

老化で起こる病気の代表は認知症ですが、
視力や聴力などの感覚機能も、
視力は白内障や黄斑部変性症などによって、
聴力は老人性難聴によって、
同様に低下してゆきます。

長く患者さんを経時的に診ていると、
視力が低下したり、聴力が低下することによるストレスが、
結果としてその後の認知症の発症に、
結び付いているのではないか、
と思えるような事例に多く遭遇します。

実際、感覚器からの信号は脳に情報として入るのですから、
両者は強く結び付いていることは間違いがないのです。

視力低下や聴力低下がその後の認知症の発症に結び付いているとして、
そうした感覚機能の低下を改善することにより、
認知症は予防可能なのでしょうか?

その点についての実証的で信頼のおける研究データは、
これまであまり存在していませんでした。

そこで今回の研究ではアメリカにおいて、
年齢が65歳以上で認知症がなく、白内障と診断された3038名を、
加齢の影響を解析する大規模疫学データから抽出し、
白内障の手術を行なった場合とそうでない場合とで、
その後の認知症発症リスクの差を比較検証しています。

その結果、
白内障を手術で治療すると、しない場合と比較して、
観察期間中の認知症発症リスクは29%(95%CI:0.62から0.83)、
有意に低下していました。
別個に視力の改善にはあまり結び付かない、
緑内障の手術の有無で同様の比較を行なっても、
同様の認知症リスク低下は認められませんでした。

この結果からは、
白内障の手術による視力の改善が、
その後の認知症の予防に繋がった可能性が示唆されます。

この問題はまだ検証が必要ですが、
現状決め手となるような認知症の予防や治療が確立されていない現在、
コントロール可能なこうしたリスクの管理は、
非常に重要な視点であるように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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