新型コロナウイルスの唾液PCR検査について [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
Lancet Infect Dis誌に2020年3月23日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症の診断における、
唾液のRT-PCR検査の可能性に言及した論文です。
2020年6月2日より、
新型コロナウイルス感染症の診断のための、
唾液のRT-PCR検査が健康保険の適応となりました。
その名の通り、
患者さんの唾液を採取して、
新型コロナウイルスの遺伝子検査をする、
というものです。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の確定診断には、
通常鼻腔もしくは咽頭から検体を採取しての、
RT-PCR検査(遺伝子検査)が行われています。
これは検体の中にあるウイルス遺伝子の、
その特徴的な部位を検出し、
それを増幅して確認するという方法です。
現行日本でスタンダードに行われている方法であれば、
適切に検査がなされ、陽性の判定が出れば、
新型コロナウイルスの感染がある、
ということ自体は間違いがありません。
その点では信頼性が高い検査です。
ただ、遺伝子の断片があれば陽性になるので、
検出されたウイルスに、
感染力があるかどうかまでは分かりません。
また、病気であっても時期によっては、
遺伝子が検出されない場合もありますし、
検体の採取の仕方によって、
結果が変わってしまうこともあります。
従って、この検査のみを行っても、
それで感染の防御に役立つということはありませんし、
サーベイランスに有効ということもありません。
RT-PCR検査のもう1つの問題は、
検体採取の際に採取する医療従事者が、
飛沫を浴びて感染するリスクが高いということです。
そのために、
検体採取の際にはゴーグルやマスク、防護衣などの、
厳密な感染対策が必要とされています。
この点がこの検査のハードルを高くしている要因です。
それでは、もっとリスクの少ない、
検査法はないのでしょうか?
そこで注目されたのが唾液の遺伝子検査です。
唾液でどの程度遺伝子検査が可能なのでしょうか?
今回の論文では香港の2カ所の病院において、
新型コロナウイルス感染症と診断された23名の患者の、
後咽頭から採取した唾液と、
下気道からの検体のRT-PCR検査を経時的に行って、
その差を比較しています。
同時に複数の血液抗体価も測定しています。
その結果はこちらをご覧下さい。
これは青い丸が唾液の検体を示し、
赤い四角が気道から採取した検体を示しています。
概ね気道からの検体の方がウイルス量は多いのですが、
症状出現後の1週間くらいは、
唾液のウイルス量は高い状態が続き、
その後は徐々に低下するという傾向が認められます。
日本においては、
厚生労働省の研究班が、
唾液検体のRT-PCR検査を、
通常の鼻咽頭ぬぐい液を用いた検査と比較した、
研究結果を報告していて、
発症から9日以内であれば、
高い一致率が認められた、
としています。
この結果をもとにして、
日本では唾液のRT-PCR検査が保険適応となったようです。
唾液のRT-PCR検査は、
患者さん自身に2ミットルくらいの、
少し多めの唾液を採取してもらい、
それを密封して検査に送るだけです。
飛沫感染のリスクがほぼなく、
患者さんにも鼻の奥に綿棒を入れられるような、
不愉快な処置を受けることがない、
と言う点ではメリットが大きいと思います。
ただ、通常のRT-PCR検査と唾液検査の位置づけが、
現状は明確とは言えないので、
その点で今後診断が混乱する可能性があります。
唾液の検査の有効性はタイミングによりますから、
唾液の検査で陰性で、
その後に肺炎を起こして感染が判明する、
ということも有り得ますし、
唾液の検査が陽性であっても、
結局は鼻咽頭ぬぐい液で再検査を行うことも、
現状はせざるを得ないからです。
また、このように唾液に感染の初期からウイルスが検出される、
という事実は、
この病気の感染力の強さを、
改めて突きつけられたような気がします。
現状はマスクを付けない至近距離での会話などは、
極力控えるようにした方が良さそうです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
Lancet Infect Dis誌に2020年3月23日ウェブ掲載された、
新型コロナウイルス感染症の診断における、
唾液のRT-PCR検査の可能性に言及した論文です。
2020年6月2日より、
新型コロナウイルス感染症の診断のための、
唾液のRT-PCR検査が健康保険の適応となりました。
その名の通り、
患者さんの唾液を採取して、
新型コロナウイルスの遺伝子検査をする、
というものです。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の確定診断には、
通常鼻腔もしくは咽頭から検体を採取しての、
RT-PCR検査(遺伝子検査)が行われています。
これは検体の中にあるウイルス遺伝子の、
その特徴的な部位を検出し、
それを増幅して確認するという方法です。
現行日本でスタンダードに行われている方法であれば、
適切に検査がなされ、陽性の判定が出れば、
新型コロナウイルスの感染がある、
ということ自体は間違いがありません。
その点では信頼性が高い検査です。
ただ、遺伝子の断片があれば陽性になるので、
検出されたウイルスに、
感染力があるかどうかまでは分かりません。
また、病気であっても時期によっては、
遺伝子が検出されない場合もありますし、
検体の採取の仕方によって、
結果が変わってしまうこともあります。
従って、この検査のみを行っても、
それで感染の防御に役立つということはありませんし、
サーベイランスに有効ということもありません。
RT-PCR検査のもう1つの問題は、
検体採取の際に採取する医療従事者が、
飛沫を浴びて感染するリスクが高いということです。
そのために、
検体採取の際にはゴーグルやマスク、防護衣などの、
厳密な感染対策が必要とされています。
この点がこの検査のハードルを高くしている要因です。
それでは、もっとリスクの少ない、
検査法はないのでしょうか?
そこで注目されたのが唾液の遺伝子検査です。
唾液でどの程度遺伝子検査が可能なのでしょうか?
今回の論文では香港の2カ所の病院において、
新型コロナウイルス感染症と診断された23名の患者の、
後咽頭から採取した唾液と、
下気道からの検体のRT-PCR検査を経時的に行って、
その差を比較しています。
同時に複数の血液抗体価も測定しています。
その結果はこちらをご覧下さい。
これは青い丸が唾液の検体を示し、
赤い四角が気道から採取した検体を示しています。
概ね気道からの検体の方がウイルス量は多いのですが、
症状出現後の1週間くらいは、
唾液のウイルス量は高い状態が続き、
その後は徐々に低下するという傾向が認められます。
日本においては、
厚生労働省の研究班が、
唾液検体のRT-PCR検査を、
通常の鼻咽頭ぬぐい液を用いた検査と比較した、
研究結果を報告していて、
発症から9日以内であれば、
高い一致率が認められた、
としています。
この結果をもとにして、
日本では唾液のRT-PCR検査が保険適応となったようです。
唾液のRT-PCR検査は、
患者さん自身に2ミットルくらいの、
少し多めの唾液を採取してもらい、
それを密封して検査に送るだけです。
飛沫感染のリスクがほぼなく、
患者さんにも鼻の奥に綿棒を入れられるような、
不愉快な処置を受けることがない、
と言う点ではメリットが大きいと思います。
ただ、通常のRT-PCR検査と唾液検査の位置づけが、
現状は明確とは言えないので、
その点で今後診断が混乱する可能性があります。
唾液の検査の有効性はタイミングによりますから、
唾液の検査で陰性で、
その後に肺炎を起こして感染が判明する、
ということも有り得ますし、
唾液の検査が陽性であっても、
結局は鼻咽頭ぬぐい液で再検査を行うことも、
現状はせざるを得ないからです。
また、このように唾液に感染の初期からウイルスが検出される、
という事実は、
この病気の感染力の強さを、
改めて突きつけられたような気がします。
現状はマスクを付けない至近距離での会話などは、
極力控えるようにした方が良さそうです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2020-06-09 05:51
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