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片頭痛と術後脳梗塞リスク [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
片頭痛と脳こうそく.jpg
今年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
片頭痛と術後の脳梗塞のリスクとの関連についての論文です。

片頭痛というのは、
目の前に光がちらつくなどの前兆の後に、
頭の半分のズキズキとする強い痛みが、
発作的に出現する症状で、
脳の一時的な興奮や血管の拡張がその原因であるとされ、
特に若年から中年層の女性に多い病気です。

アメリカの疫学データによると、
生涯に一般人口の5分の1は片頭痛を発症していて、
女性は男性より3から4倍発症しやすいと記載されています。

片頭痛は基本的に良性の病気で、
薬剤でコントロールが可能であり、
後遺症などは特にないと考えられています。

しかし、以前から片頭痛の患者さんにおいて、
脳卒中などの心血管疾患が多い、
という知見が報告されています。

片頭痛後に脳卒中を来したとすれば、
それはそもそも片頭痛ではなく、
器質的疾患による頭痛であった、
という可能性もあるのですが、
脳卒中のみならず心筋梗塞なども増加していて、
脳の動脈硬化などの所見とも、
明確な関連性は認められないので、
単純に誤診のみとは考えられません。

以前ご紹介した昨年のBritish Medical Journal誌の疫学データでは、
女性看護師の多数例の分析において、
片頭痛により心血管疾患のリスクは1.5倍(95%CI:1.33から1.69)、
脳卒中のリスクは1.62倍(95%CI:1.37から1.92)、
有意に増加していました。

脳梗塞は大きな手術後には発症し易いことが知られています。

上記文献中の記載では、
心臓手術などを除いた一般的な手術後にも、
1000件の手術に一例は術後30日以内に脳梗塞が起こり、
それが心臓や血管の大手術では、
0.6から7.4%という高率に起こるというデータがあるようです。

それでは、
片頭痛とこの手術後の脳梗塞との間には、
何か関連があるのでしょうか?

今回の研究ではアメリカのマサチューセッツ総合病院と、
その関連病院の2007年から2014年に掛けての手術事例、
トータル124558件を解析し、
手術後30日以内に起こった脳梗塞と、
術前の片頭痛症状との関連を検証しています。

その結果…

術前に片頭痛の診断を受けていたのは、
全体の8.2%に当たる10179名で、
その8割は女性です。
そのうち閃輝暗点や脱力、しびれなどの前兆を伴うものは、
12.6%の1278例で、
残りの8901例は前兆を伴わない片頭痛でした。

術後30日以内に全体の0.6%に当たる771名に、
脳梗塞が発症していました。

そして、片頭痛があると、
術後脳梗塞のリスクは1.75倍(95%CI:1.39から2.21)、
有意に増加していました。
更には前兆のある片頭痛に限って解析すると、
そのリスクはより高く、
2.61倍(95%CI:1.59から4.29)となっていました。

これを絶対リスクで見ると、
片頭痛の診断を受けた1000人の患者さんのうち、
4.3人(3.2から5.3)に術後脳梗塞が発症し、
前兆を伴う片頭痛の限ると、
6.3人(3.2から9.5)に増加します。

このように、特に前兆を伴う片頭痛は、
手術後の脳梗塞の独立した危険因子になることは、
ほぼ間違いのないことだと言えそうです。

問題はこうした前兆のある片頭痛の患者さんの脳梗塞予防を、
どのように考えたら良いのか、
と言う点にあるのですが、
実際にはその点に関する明確な指針のようなものは、
現時点では存在はしていないようです。

今後そのメカニズムが解明され、
有効な予防法が確立されることを期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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