少量のアルコールは健康に良いのか?(2016年の新知見) [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今年のJ Stud Alchol Drugs.誌に掲載された、
アルコールの少量摂取が本当に健康に良いのかを、
これまでのデータから再検証した論文です。
少量のお酒は健康に良く、
お酒をたしなむ人の方が長生きだというのは、
広く流布されている言説です。
これは決して根拠のないものではなく、
複数の疫学データや、
それをまとめて解析したメタ解析の論文などで、
ほぼ同一の結論が報告されています。
皆さんも聞かれたことがあるように、
概ね1日25グラムを超えないレベルのアルコール、
具体的には日本酒であれば1合まで、
ビールであれば中ビン1本くらいまで、
ウイスキーはシングルで2杯くらいまで、
であれば、
お酒を全く飲まない人よりも、
死亡のリスクは低い、
という結果が得られています。
日本では厚労省のe-ヘルスネットに、
日本のデータを元にして、
矢張り死亡リスクにおいては、
1日20グラム程度のアルコール摂取が、
最もリスクが低いというデータを公開しています。
ただ、この結果に疑問を呈する意見もあります。
これまでのデータを詳細に検証してみると、
アルコールを飲まない人の中には、
以前はアルコールを飲んでいて、
肝臓が悪くなって禁酒したような、
明らかに体調が悪くてお酒が飲めない、
というような人が多く含まれている、
というようなことが分かりました。
つまり、実際には少量のアルコールを飲んでいる人より、
アルコールを全く飲んでいない人の方が、
体調がそもそも悪いということが多かったのです。
そこで今回の研究では、
これまでの87の臨床データから、
トータルで3998626名のデータをまとめて解析して、
アルコールの摂取量と死亡リスクとの関連を、
再検証しています。
すると、
そのままメタ解析を行うと、
アルコールを完全に飲まない人と比較して、
1日1.3から24.9グラムの人では、
その死亡リスクは14%有意に低下していました。
(95%Ci:0.83から0.90)
そして、以前は飲酒していて今は禁酒している人は、
22%有意に死亡リスクは増加していました。
(95%CI:1.14から1.31)
つまり、これまでのデータと同じように、
1日25グラム未満の飲酒は生命予後に良い影響を与える、
というデータです。
しかし、これを患者さんの健康状態などを加味して再解析すると、
今度は1日1.3グラム未満の、
機会飲酒の人が最も死亡リスクは低く、
1日1.3グラムを超えるアルコールでは、
死亡リスクは有意ではないものの増加する傾向を示しました。
ただ、矢張り明確にリスクが増加するのは、
1日25グラムを超えたくらいからであることには、
違いはありませんでした。
要するに、
飲酒量が1日アルコール25グラム未満であれば、
機会飲酒の人とそれほど違いのない生命予後であること自体は、
間違いはなさそうです。
ただ、アルコールを少量飲むことが、
飲まないよりも健康的である、
というような意見については、
特に以前飲酒をしていて禁酒をしたような人は、
健康面に問題のある可能性も高いので、
データとしての信頼性はそれほど高いものではないと、
そう考えておいた方が良さそうです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今年のJ Stud Alchol Drugs.誌に掲載された、
アルコールの少量摂取が本当に健康に良いのかを、
これまでのデータから再検証した論文です。
少量のお酒は健康に良く、
お酒をたしなむ人の方が長生きだというのは、
広く流布されている言説です。
これは決して根拠のないものではなく、
複数の疫学データや、
それをまとめて解析したメタ解析の論文などで、
ほぼ同一の結論が報告されています。
皆さんも聞かれたことがあるように、
概ね1日25グラムを超えないレベルのアルコール、
具体的には日本酒であれば1合まで、
ビールであれば中ビン1本くらいまで、
ウイスキーはシングルで2杯くらいまで、
であれば、
お酒を全く飲まない人よりも、
死亡のリスクは低い、
という結果が得られています。
日本では厚労省のe-ヘルスネットに、
日本のデータを元にして、
矢張り死亡リスクにおいては、
1日20グラム程度のアルコール摂取が、
最もリスクが低いというデータを公開しています。
ただ、この結果に疑問を呈する意見もあります。
これまでのデータを詳細に検証してみると、
アルコールを飲まない人の中には、
以前はアルコールを飲んでいて、
肝臓が悪くなって禁酒したような、
明らかに体調が悪くてお酒が飲めない、
というような人が多く含まれている、
というようなことが分かりました。
つまり、実際には少量のアルコールを飲んでいる人より、
アルコールを全く飲んでいない人の方が、
体調がそもそも悪いということが多かったのです。
そこで今回の研究では、
これまでの87の臨床データから、
トータルで3998626名のデータをまとめて解析して、
アルコールの摂取量と死亡リスクとの関連を、
再検証しています。
すると、
そのままメタ解析を行うと、
アルコールを完全に飲まない人と比較して、
1日1.3から24.9グラムの人では、
その死亡リスクは14%有意に低下していました。
(95%Ci:0.83から0.90)
そして、以前は飲酒していて今は禁酒している人は、
22%有意に死亡リスクは増加していました。
(95%CI:1.14から1.31)
つまり、これまでのデータと同じように、
1日25グラム未満の飲酒は生命予後に良い影響を与える、
というデータです。
しかし、これを患者さんの健康状態などを加味して再解析すると、
今度は1日1.3グラム未満の、
機会飲酒の人が最も死亡リスクは低く、
1日1.3グラムを超えるアルコールでは、
死亡リスクは有意ではないものの増加する傾向を示しました。
ただ、矢張り明確にリスクが増加するのは、
1日25グラムを超えたくらいからであることには、
違いはありませんでした。
要するに、
飲酒量が1日アルコール25グラム未満であれば、
機会飲酒の人とそれほど違いのない生命予後であること自体は、
間違いはなさそうです。
ただ、アルコールを少量飲むことが、
飲まないよりも健康的である、
というような意見については、
特に以前飲酒をしていて禁酒をしたような人は、
健康面に問題のある可能性も高いので、
データとしての信頼性はそれほど高いものではないと、
そう考えておいた方が良さそうです。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
下記書籍発売中です。
よろしくお願いします。
誰も教えてくれなかった くすりの始め方・やめ方: ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ
- 作者: 石原藤樹
- 出版社/メーカー: 総合医学社
- 発売日: 2016/10/28
- メディア: 単行本
2016-12-19 08:42
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