青身魚の脂の認知症予防効果について(病理解剖所見からの分析) [医療のトピック]
こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今年のJAMA誌に掲載された、
サバやイワシなどの魚の脂に含まれる成分と、
認知症の発症との関連についての論文です。
これは別個の疫学データを解析したものですが、
亡くなった方を解剖した脳の所見と、
生前の食事の内容とを比較した点に、
大きな意義のあるものです。
認知症にはアルツハイマー型認知症の他に、
レビー小体型認知症や脳血管性認知症などの種類がありますが、
その区別は主に症状で行われ、
画像診断なども参考にはされますが、
確定診断は簡単ではなく、
実際には多くの誤診があると考えられています。
また、脳の病理学的な変化は、
症状がはっきり出現する数年以上前から、
起こっていると考えられますが、
それを的確に診断する方法もありません。
その一方でその方が亡くなった後に、
脳を解剖してその所見を診断する病理診断は、
確実に認知症を区別して診断する、
唯一の方法と考えられています。
従って、
対象者を長期間観察し、
生きている間の情報を得るとともに、
亡くなった後に解剖して所見を得るという研究が、
認知症という病気の解明のためには、
必要不可欠であるのです。
しかし、実際にはそうした研究は非常に困難で、
行われた事例はそれほど多くはありません。
今回の研究は、
身体に摂取された水銀と病気との関連を、
長期間追跡したデータを解析することで、
生前の食事調査による魚の摂取量と、
死後の脳の所見との関連性を検証しています。
その結果…
食事調査で魚の摂取量より、
1週間に1回以上魚を食べていて、
アルツハイマー型認知症のリスクを増加させるとして知られている、
アポEのε4というタイプの遺伝子を持つ事例のみで解析すると、
魚の摂取はアルツハイマー型認知症に特徴的な脳の病理的な変化を、
有意に抑制していました。
魚の摂取パターンから、
EPA、DHA、αリノレン酸という、
脂肪酸の種類による摂取量を推定して検証すると、
αリノレン酸の摂取量が多いほど、
脳血管性認知症の病理所見は抑制されていました。
また、魚の摂取量と、
脳の水銀やセレニウムの蓄積量とは相関していましたが、
認知症の病理所見とは関連を示しませんでした。
魚の脂のサプリメントの摂取と脳の所見との間にも、
明確な関連は認められませんでした。
正直それほどクリアな結果とは言えません。
アルツハイマー型認知症や脳の動脈硬化の予防には、
魚の脂の摂取は、
一定の予防効果はありそうですが、
アポEの変異がある事例に限定しないと、
有意差は出ない、というレベルのものです。
サプリメントの効果は今回のデータでは否定されているのですが、
日本で使用されているような、
純度の高いEPAやDHAの製剤を使用すれば、
また別の結果が出ることも否定は出来ません。
天然の魚の摂取により、
一定レベルの水銀が同時に身体に入ることは防げないので、
魚の摂取はほどほどに保ち、
高純度のEPAやDHAのサプリメントを取ることも、
1つの選択肢ではあるように思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
北品川藤クリニックの石原です。
今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今年のJAMA誌に掲載された、
サバやイワシなどの魚の脂に含まれる成分と、
認知症の発症との関連についての論文です。
これは別個の疫学データを解析したものですが、
亡くなった方を解剖した脳の所見と、
生前の食事の内容とを比較した点に、
大きな意義のあるものです。
認知症にはアルツハイマー型認知症の他に、
レビー小体型認知症や脳血管性認知症などの種類がありますが、
その区別は主に症状で行われ、
画像診断なども参考にはされますが、
確定診断は簡単ではなく、
実際には多くの誤診があると考えられています。
また、脳の病理学的な変化は、
症状がはっきり出現する数年以上前から、
起こっていると考えられますが、
それを的確に診断する方法もありません。
その一方でその方が亡くなった後に、
脳を解剖してその所見を診断する病理診断は、
確実に認知症を区別して診断する、
唯一の方法と考えられています。
従って、
対象者を長期間観察し、
生きている間の情報を得るとともに、
亡くなった後に解剖して所見を得るという研究が、
認知症という病気の解明のためには、
必要不可欠であるのです。
しかし、実際にはそうした研究は非常に困難で、
行われた事例はそれほど多くはありません。
今回の研究は、
身体に摂取された水銀と病気との関連を、
長期間追跡したデータを解析することで、
生前の食事調査による魚の摂取量と、
死後の脳の所見との関連性を検証しています。
その結果…
食事調査で魚の摂取量より、
1週間に1回以上魚を食べていて、
アルツハイマー型認知症のリスクを増加させるとして知られている、
アポEのε4というタイプの遺伝子を持つ事例のみで解析すると、
魚の摂取はアルツハイマー型認知症に特徴的な脳の病理的な変化を、
有意に抑制していました。
魚の摂取パターンから、
EPA、DHA、αリノレン酸という、
脂肪酸の種類による摂取量を推定して検証すると、
αリノレン酸の摂取量が多いほど、
脳血管性認知症の病理所見は抑制されていました。
また、魚の摂取量と、
脳の水銀やセレニウムの蓄積量とは相関していましたが、
認知症の病理所見とは関連を示しませんでした。
魚の脂のサプリメントの摂取と脳の所見との間にも、
明確な関連は認められませんでした。
正直それほどクリアな結果とは言えません。
アルツハイマー型認知症や脳の動脈硬化の予防には、
魚の脂の摂取は、
一定の予防効果はありそうですが、
アポEの変異がある事例に限定しないと、
有意差は出ない、というレベルのものです。
サプリメントの効果は今回のデータでは否定されているのですが、
日本で使用されているような、
純度の高いEPAやDHAの製剤を使用すれば、
また別の結果が出ることも否定は出来ません。
天然の魚の摂取により、
一定レベルの水銀が同時に身体に入ることは防げないので、
魚の摂取はほどほどに保ち、
高純度のEPAやDHAのサプリメントを取ることも、
1つの選択肢ではあるように思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2016-02-09 08:00
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