リチウム製剤の長期の副作用について [医療のトピック]
こんにちは。
石原藤樹です。
今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今月のLancet誌に掲載された、
古くから双極性障碍(昔は躁鬱病)の治療薬として、
広く使用されて来た、
リチウム製剤の副作用を検証した論文です。
リチウムはその作用のメカニズムが明確ではないながらも、
経験的にその有効性が確認され、
広く使用されている薬剤です。
躁病にも鬱病にも効果がある、
という特徴があり、
最近では自殺のリスクを低下させる、
というデータが報告されて注目を集めました。
これは過去に記事にしています。
ただ、リチウムは副作用や有害事象の多い薬でもあります。
その治療域が狭く、
定期的に血液濃度を測定しながら、
その使用を行なわないといけない、
という煩わしさがあります。
リチウムはまた甲状腺機能や副甲状腺機能、
腎機能にも影響を与えると指摘されています。
リチウムによる腎機能障害は、
30年以上前から報告されていて、
急性の腎障害と腎性尿崩症と慢性腎障害の、
3種類があるとされています。
ただ、2012年のLancet誌に掲載されたメタ解析の結果では、
重度の腎機能低下に至る事例は少なく、
臨床的に問題となるような腎機能低下も稀である、
という結果になっています。
ただ、長期間の観察を行なったようなデータは乏しく、
その結論は確定的なものとは言えません。
リチウムは甲状腺機能と副甲状腺機能に、
それぞれ影響を与えることが知られていますが、
これも長期の検討は少なく、
その頻度も明確ではありません。
そこで今回の研究では、
イギリスのオックスフォード大学病院の、
臨床検査のデータを活用して、
リチウムの血液濃度の測定値と、
腎機能、甲状腺機能、カルシウム濃度との関連を検証しています。
これは実際にリチウム療法を行なっている患者さんを、
特定している、という訳ではなく、
時間をおいて2回以上のリチウム濃度の測定があった事例を、
そう判断して集計しているものです。
トータルで4678名のデータが解析されています。
観察期間は最初と最後のリチウム濃度の測定の間、
ということになり、
平均値は3.0年で、
最長は28年間です。
その結果…
年齢、性別、糖尿病の有無を補正した結果として、
リチウムの使用により、
慢性腎臓病のリスクが1.93倍(1.76から2.12)、
甲状腺機能低下症のリスクが2.31倍(2.05から2.60)、
総カルシウム濃度が上昇するリスクが1.43倍(1.21から1.69)、
それぞれ有意に増加していました。
しかし、甲状腺機能亢進症とアルブミンで補正したカルシウム濃度については、
有意な増加は認められませんでした。
慢性腎臓病は推計の糸球体濾過量という指標が、
60mL/min per 1.73㎡未満が基準で、
甲状腺機能低下症はTSHが5.5mU/Lより大きいことが、
甲状腺機能亢進症は0.2未満であることを基準としています。
甲状腺機能低下と腎機能低下は、
男性より女性で生じ易く、
特に60歳以下の女性でよりリスクが高い傾向にありました。
こうした副作用はリチウムの使用が1年以内の早期に起り易く、
測定されたリチウム濃度が平均より高い場合に、
よりリスクが高い傾向にありました。
今回のデータにおいては、
リチウムによる治療は、
腎機能低下と甲状腺機能低下と関連があり、
特に60歳以下の女性に使用した場合に、
そのリスクは高くなっていました。
従って、
リチウムの使用時には、
その血液濃度の測定と共に、
甲状腺機能と腎機能に関しては定期的に測定し、
特に腎機能の悪化が認められれば、
リチウムを他剤に変更するなど、
積極的な介入が必要であると考えられます。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
石原藤樹です。
今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今月のLancet誌に掲載された、
古くから双極性障碍(昔は躁鬱病)の治療薬として、
広く使用されて来た、
リチウム製剤の副作用を検証した論文です。
リチウムはその作用のメカニズムが明確ではないながらも、
経験的にその有効性が確認され、
広く使用されている薬剤です。
躁病にも鬱病にも効果がある、
という特徴があり、
最近では自殺のリスクを低下させる、
というデータが報告されて注目を集めました。
これは過去に記事にしています。
ただ、リチウムは副作用や有害事象の多い薬でもあります。
その治療域が狭く、
定期的に血液濃度を測定しながら、
その使用を行なわないといけない、
という煩わしさがあります。
リチウムはまた甲状腺機能や副甲状腺機能、
腎機能にも影響を与えると指摘されています。
リチウムによる腎機能障害は、
30年以上前から報告されていて、
急性の腎障害と腎性尿崩症と慢性腎障害の、
3種類があるとされています。
ただ、2012年のLancet誌に掲載されたメタ解析の結果では、
重度の腎機能低下に至る事例は少なく、
臨床的に問題となるような腎機能低下も稀である、
という結果になっています。
ただ、長期間の観察を行なったようなデータは乏しく、
その結論は確定的なものとは言えません。
リチウムは甲状腺機能と副甲状腺機能に、
それぞれ影響を与えることが知られていますが、
これも長期の検討は少なく、
その頻度も明確ではありません。
そこで今回の研究では、
イギリスのオックスフォード大学病院の、
臨床検査のデータを活用して、
リチウムの血液濃度の測定値と、
腎機能、甲状腺機能、カルシウム濃度との関連を検証しています。
これは実際にリチウム療法を行なっている患者さんを、
特定している、という訳ではなく、
時間をおいて2回以上のリチウム濃度の測定があった事例を、
そう判断して集計しているものです。
トータルで4678名のデータが解析されています。
観察期間は最初と最後のリチウム濃度の測定の間、
ということになり、
平均値は3.0年で、
最長は28年間です。
その結果…
年齢、性別、糖尿病の有無を補正した結果として、
リチウムの使用により、
慢性腎臓病のリスクが1.93倍(1.76から2.12)、
甲状腺機能低下症のリスクが2.31倍(2.05から2.60)、
総カルシウム濃度が上昇するリスクが1.43倍(1.21から1.69)、
それぞれ有意に増加していました。
しかし、甲状腺機能亢進症とアルブミンで補正したカルシウム濃度については、
有意な増加は認められませんでした。
慢性腎臓病は推計の糸球体濾過量という指標が、
60mL/min per 1.73㎡未満が基準で、
甲状腺機能低下症はTSHが5.5mU/Lより大きいことが、
甲状腺機能亢進症は0.2未満であることを基準としています。
甲状腺機能低下と腎機能低下は、
男性より女性で生じ易く、
特に60歳以下の女性でよりリスクが高い傾向にありました。
こうした副作用はリチウムの使用が1年以内の早期に起り易く、
測定されたリチウム濃度が平均より高い場合に、
よりリスクが高い傾向にありました。
今回のデータにおいては、
リチウムによる治療は、
腎機能低下と甲状腺機能低下と関連があり、
特に60歳以下の女性に使用した場合に、
そのリスクは高くなっていました。
従って、
リチウムの使用時には、
その血液濃度の測定と共に、
甲状腺機能と腎機能に関しては定期的に測定し、
特に腎機能の悪化が認められれば、
リチウムを他剤に変更するなど、
積極的な介入が必要であると考えられます。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2015-08-06 08:16
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