SSブログ

肺炎の頻度と原因について(アメリカの疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
石原藤樹です

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後はレセプト作業などするつもりです。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
アメリカにおける肺炎の分析.jpg
先月のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
通常の日常生活で感染する、
所謂市中肺炎の頻度とその原因とを調査した、
アメリカからの報告です。

肺炎は感染症の死因としては、
日本でもアメリカでも最も多く、
特に高齢者で重症化し易いことで知られています。

肺炎の住民レベルでの精度の高い疫学研究は、
アメリカでも1990年代以降行われておらず、
その後に小児の肺炎球菌ワクチンの接種が始まり、
それが成人の肺炎の減少にも繋がっている、
という報告もあることより、
住民レベルの精度の高い疫学研究が、
再度行われることが待望されていたのです。

今回の疫学研究は、
アメリカの5か所の病院において、
2010年から2012年の期間に、
入院を要する肺炎となった、
18歳以上の事例を登録し、
その詳細な解析を行なっています。

3634名が肺炎の疑いの入院患者として登録され、
条件により絞り込んだ後のレントゲン所見により、
2320例が肺炎と診断されました。

98%の患者さんで咽喉などの検体が採取され、
血液培養が91%で、
85%の患者さんで尿の肺炎球菌抗原がチェックされるなど、
詳細な原因の検索が行われています。
患者さんの平均年齢は57歳で、
21%の患者さんがICUに入り、
6%の患者さんが人工呼吸器を装着し、
2%の患者さんが亡くなっています。

ただ、これだけ詳細な検査を行なっても、
原因が特定出来たのは38%の患者さんに留まり、
残りの62%は原因不明、という結果に終わっています。
これは入院前の抗生物質の使用により、
結果が出難くなった可能性や、
ワクチン接種後には尿の抗原が偽陽性となるなど、
検査の精度がそれほど高いものではない、
ということの影響などが、
論文中では指摘されています。

原因の特定された患者さんの中では、
風邪のウイルスの代表であるライノウイルスが、
頻度的に最も多く、
次にインフルエンザウイルス、
そして肺炎球菌という順番で、
これは年齢区分に関わらず、
ほぼ一致していました。
細菌かウイルスかという分類では、
細菌14%でウイルスが27%(重複感染あり)
という結果で、
意外にも全ての年齢層で、
細菌による肺炎より、
ウイルスによる肺炎が多い、
という結果になっていました。

住民の数や分布から推計すると、
トータルでは人口10000人(18歳以上)当たり、
24.8件という罹患率で、
これは1991年の統計で、
10000人中26.7件という報告がありますから、
ほぼ横ばいと推測されます。

この罹患率は年齢と共に増加し、
18から49歳を1とすると、
50から64歳では4倍、
65から79歳では9倍、
そして80歳以上では25倍という頻度になっていました。

以前の統計では、
もっと肺炎球菌などの細菌の比率が、
特に高齢者では高く、
そのために肺炎球菌ワクチンが導入された経緯があります。

今回の細菌比率の減少は、
ワクチン接種の一定の効果が想定されますが、
それでもトータルな罹患率が、
減少に転じていないという点から考えると、
高齢者の肺炎の撲滅という目標への道のりは、
決して平坦ではないもののようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(24)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 24

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0