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タミフルのインフルエンザに対する有効性(2015年新解析) [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
タミフルのメタ解析2015.jpg
Lancet誌に先月ウェブ掲載された、
インフルエンザ治療薬オセルタミビル(タミフル)の、
臨床効果を解析した文献です。

タミフルの有効性がどの程度のものか、
という点については、
これまでにも多くの報告があります。
最近で代表的なものはこちらです。
http://blog.so-net.ne.jp/rokushin/2014-04-21

以前に記事にしましたこの報告は、
薬には非常に点が辛いコクランレビューによるもので、
この時点でのこれまでの診療データをまとめて解析したものです。
治療効果としては、
成人の臨床試験において、
平均で16.8時間の症状の短縮効果が認められ、
持病のないお子さんでも、
これも平均で29時間の症状短縮効果が認められましたが、
小児喘息の患者さんのみの解析では、
明確な効果が認められませんでした。

肺炎などの重症化予防については、
あったとの報告もありますが、
トータルには明確な傾向が認められていません。

全体としては、
タミフルの臨床的な有効性に、
疑問を投げ掛ける内容になっています。

タミフルの予防的な使用については、
55%の予防効果が認められていますが、
無症状のインフルエンザに対しては、
明確な有効性が認められていません。
これはその個人については、
予防内服を行なうことによって、
発症を防ぐ面では効果があるものの、
集団予防には結び付かないことを示しています。
つまり、老人ホームなどで感染者が出た場合に、
感染すると重症化のリスクの高い入所者などに、
使用することは意味がありますが、
職員が皆飲んでいれば感染は拡大しない、
というようなことはない訳です。

一方で2014年のLancet Respiratory Medicine誌の論文では、
2009年の所謂「新型インフルエンザ」の、
入院患者に限った解析で、
タミフルの使用より患者の死亡リスクが、
19%有意に低下した、
というデータを出しています。

タミフルにより、
発熱などの罹病期間が、
1日程度短縮することは、
コクランも認めているので事実と考えて間違いはありません。
個人のレベルで、
一定の予防効果のあることも間違いはありません。
現時点で結論が出ていないのは、
患者の生命予後を改善したり、
重症化を予防するような効果が、
タミフルにあるのか、という点にあるのです。

今回のデータは、
その最新の介入試験のメタ解析です。
つまり、これまでの精度の高い臨床試験の結果を、
まとめて解析したものです。

その結果…

解析の仕方にもよりますが、
早期のタミフルの使用により、
発熱などの期間が最大で1日程度短縮することは、
今回も確認されました。

その上で、
抗生物質の使用が必要とされるような、
肺炎などの下気道感染症を有意に44%低下させ、
入院治療のリスクをこれも有意に63%低下させました。
(いずれもintention to treat analysis)

有害事象については、
タミフルの使用により吐き気と嘔吐は増加しましたが、
それ以外の重篤な有害事象や、
精神症状、神経疾患などは、
偽薬と比較して明確な差は認められませんでした。

つまり、コクランの結果より、
患者さんの予後に対するより良い影響が、
タミフルの使用にはあることを示唆する結果です。

ただ、入院はインフルエンザの悪化に限ったものではなく、
気道合併症についても、
肺炎の重症化そのものの予防を見ているのではなく、
抗生物質の使用に至ったかどうかで、
その判断をしているなど、
解析法にはやや強引な点も見られ、
それほどクリアな結果であるとは言えません。

トータルには、
タミフルの使用がインフルエンザの患者さんの、
生命予後の改善や重症化の予防に結び付くかどうかは、
まだ未知数と考えた方が良さそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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