生体腎ドナー女性の妊娠時のリスクについて [医療のトピック]
こんにちは。
六号通り診療所の石原です。
朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今月のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
生体腎移植で片方の腎臓を、
提供された若い女性における、
その後の妊娠時のリスクについての論文です。
生体腎臓移植は、
最も広く行われている移植医療の1つで、
腎不全などの患者さんに対して、
健康な成人のご家族が片方の腎臓を提供して、
移植が行われます。
この場合ドナーの方は、
片方の腎臓を手術で摘出する訳ですが、
腎臓は2つあるので、
その一方を摘出しても、
健康上の問題は生じないと、
移植医療の説明のサイトなどには記載されています。
ただ、問題になることの1つは、
ドナーが若い女性の場合に、
その後の妊娠に与える影響についてです。
動物実験のデータにおいては、
片方の腎臓を摘出すると、
妊娠時に血圧の上昇や尿への蛋白の排泄が増加する、
というデータは存在しています。
人間においても、
腎糸球体濾過量という腎機能の指標は、
片腎の摘出後早期に約35%低下し、
同じレベルの低下が病気などで生じたケースでは、
妊娠中の高血圧腎症が増加する、
というデータが存在しています。
しかし、生体腎ドナーでのこうした検討は少なく、
妊娠中にリスクがある、という報告のある一方、
特に問題は見られないとする、
複数の報告も存在しています。
2004年の国際的な会議における検討の結果では、
生体腎ドナーの女性が、
妊娠において何らかのリスクが生じる可能性はない、
という結論になっています。
ただ、この結論以降にも、
妊娠中にリスクがあるとする疫学データは発表されていて、
この問題は解決しているとは言い難いのです。
今回の研究はカナダにおいて、
生体腎ドナーの85名の女性の、
131件の腎摘出後の妊娠の事例を、
510名の腎摘出をしていないコントロールと、
1:6の比率でマッチングさせて比較し、
生体腎ドナーの妊娠時のリスクを検証しています。
後から事例を抽出して、
比較しただけのものなので、
データの精度はそれほど高いものではありませんが、
こうした事象では、
このようなデータ以外は、
存在しないと思います。
その結果…
妊娠高血圧と妊娠高血圧腎症を併せた発症率は、
生体腎ドナーでは131例中15例の11%であったのに対して、
コントロール群では788例中38例の5%で、
生体腎ドナーでは、
こうした妊娠合併症の発症率は、
2.4倍有意に増加する、という結果になりました。
一方でそうした合併症の予後には両群で差はなく、
早産や出生時の低体重などの異常にも、
両群で差は認められませんでした。
要するに生体腎ドナーの女性では、
妊娠時の合併症としての高血圧や腎症の発症は、
通常の妊娠よりも多い可能性があるので、
血圧等の管理には、
より注意が必要だ、
ということになります。
ただ、お子さんとお母さんを含めて、
それ以外の問題は生じていないので、
生体腎ドナーの女性の妊娠自体については、
これまでの見解通り、
基本的には問題ないと、
考えて良いように思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
下記書籍引き続き発売中です。
よろしくお願いします。
六号通り診療所の石原です。
朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今月のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
生体腎移植で片方の腎臓を、
提供された若い女性における、
その後の妊娠時のリスクについての論文です。
生体腎臓移植は、
最も広く行われている移植医療の1つで、
腎不全などの患者さんに対して、
健康な成人のご家族が片方の腎臓を提供して、
移植が行われます。
この場合ドナーの方は、
片方の腎臓を手術で摘出する訳ですが、
腎臓は2つあるので、
その一方を摘出しても、
健康上の問題は生じないと、
移植医療の説明のサイトなどには記載されています。
ただ、問題になることの1つは、
ドナーが若い女性の場合に、
その後の妊娠に与える影響についてです。
動物実験のデータにおいては、
片方の腎臓を摘出すると、
妊娠時に血圧の上昇や尿への蛋白の排泄が増加する、
というデータは存在しています。
人間においても、
腎糸球体濾過量という腎機能の指標は、
片腎の摘出後早期に約35%低下し、
同じレベルの低下が病気などで生じたケースでは、
妊娠中の高血圧腎症が増加する、
というデータが存在しています。
しかし、生体腎ドナーでのこうした検討は少なく、
妊娠中にリスクがある、という報告のある一方、
特に問題は見られないとする、
複数の報告も存在しています。
2004年の国際的な会議における検討の結果では、
生体腎ドナーの女性が、
妊娠において何らかのリスクが生じる可能性はない、
という結論になっています。
ただ、この結論以降にも、
妊娠中にリスクがあるとする疫学データは発表されていて、
この問題は解決しているとは言い難いのです。
今回の研究はカナダにおいて、
生体腎ドナーの85名の女性の、
131件の腎摘出後の妊娠の事例を、
510名の腎摘出をしていないコントロールと、
1:6の比率でマッチングさせて比較し、
生体腎ドナーの妊娠時のリスクを検証しています。
後から事例を抽出して、
比較しただけのものなので、
データの精度はそれほど高いものではありませんが、
こうした事象では、
このようなデータ以外は、
存在しないと思います。
その結果…
妊娠高血圧と妊娠高血圧腎症を併せた発症率は、
生体腎ドナーでは131例中15例の11%であったのに対して、
コントロール群では788例中38例の5%で、
生体腎ドナーでは、
こうした妊娠合併症の発症率は、
2.4倍有意に増加する、という結果になりました。
一方でそうした合併症の予後には両群で差はなく、
早産や出生時の低体重などの異常にも、
両群で差は認められませんでした。
要するに生体腎ドナーの女性では、
妊娠時の合併症としての高血圧や腎症の発症は、
通常の妊娠よりも多い可能性があるので、
血圧等の管理には、
より注意が必要だ、
ということになります。
ただ、お子さんとお母さんを含めて、
それ以外の問題は生じていないので、
生体腎ドナーの女性の妊娠自体については、
これまでの見解通り、
基本的には問題ないと、
考えて良いように思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
下記書籍引き続き発売中です。
よろしくお願いします。
健康で100歳を迎えるには医療常識を信じるな! ここ10年で変わった長生きの秘訣
- 作者: 石原藤樹
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2014/05/14
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
健康で100歳を迎えるには医療常識を信じるな! [ 石原藤樹 ]
- ショップ: 楽天ブックス
- 価格: 1,296 円
2015-01-16 08:18
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