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食物繊維の動脈硬化性疾患予防効果について [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談に廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
食物繊維と心疾患との関連性について.jpg
2013年12月のBritish Medical Journal誌に掲載された、
食物繊維の動脈硬化性疾患予防効果についての論文です。

食物繊維というのは、
食物の中に含まれていて、
消化酵素では分解されない成分のことです。

消化酵素で分解されないということは、
その殆どが消化管を通過するだけで便になる、
ということです。

昔はこうしたものは食品の不要なカスのように考えられ、
食品の加工はどれだけ食物繊維を取り除けるかが、
その有用性の指標となりました。

白い食パンを作ったり、
精米して白いお米を作ったりするのは、
そうして「邪魔な」繊維を取り除く作業の結果です。

しかし、最近、と言っても数十年は前からの話ですが、
この食物繊維には、
腸内環境を整え、腸の動きをスムーズにし、
食べ過ぎや糖分の吸収を抑えて生活習慣病を予防し、
大腸癌などの発症を抑えるなど、
多くの人間にとって意味のある働きがあることが、
次々と明らかになりました。

そのため、食物繊維は第6の栄養素などと呼ばれて、
その適正な摂取が、
健康上望ましいと考えられるようになったのです。

概ね1日20グラムから40グラムくらい、
日本においては男性19グラム以上女性17グラム以上が、
食物繊維の摂取量の目安となっています。

しかし、
たとえば生活習慣病の予防効果などと言っても、
心筋梗塞や脳卒中などの具体的な病気について、
どの程度の食物繊維を摂っていれば、
どの程度その病気のリスクが低下するのか、
というような点については、
データ自体はあるものの、
必ずしも統一された見解のようなものはなく、
食物繊維の種類や量と、
そのリスクとの関連性も明確とは言えません。

そこで今回の研究では、
これまでの臨床試験のデータのうち、
信頼性の高いものをまとめて解析し、
食物繊維の摂取量と心筋梗塞や脳卒中との関連性を、
トータルに検証しています。

その結果…

概ね1日の摂取量が10グラムから60グラムの範囲において、
食物繊維の摂取量が7グラム増えると、
心筋梗塞や脳卒中の死亡や病状出現のリスクは、
9%有意な低下が認められました。

食物繊維には、
水に溶ける水溶性と、
水に溶け難い不溶性との2種類があります。

不溶性の食物繊維は、
穀類や野菜、豆などに多い、
糸状の筋のようなもので、
腸の動きを良くして便通を促進し、
腸内の良い腸内細菌を増やす効果があります。

水溶性の食物繊維は、
海藻や里芋、こんにゃくなどに含まれる、
ネバネバやサラサラの成分で、
食物のボリュームを増やし、
糖分やコレステロールなどの吸収を抑えて、
その排泄を促します。

今回の解析では、
不溶性の食物繊維とシリアルや果物、野菜由来の食物繊維は、
心筋梗塞や脳卒中などのリスクを低下させ、
不溶性の食物繊維とシリアルや野菜からの食物繊維は、
心筋梗塞のリスクを低下させました。

つまり、どうやらより動脈硬化性疾患のリスク低下と、
関連性の高い食物繊維は、
不溶性食物繊維の可能性が高そうです。

食物繊維の適正量には個人差が大きく、
急に沢山の量を摂っても、
却ってお腹の調子が悪くなることがありますが、
もう1品不溶性食物繊維の豊富な食品を摂ることは、
シリアルでもとうもろこしでもナッツでも良いですが、
健康上の習慣として、
意義のあることだと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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