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起立性調節障害とビタミンB12との関連性について [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日から診療所は通常通りの診療となります。
朝からレセプト作業をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
起立性低血圧とビタミンB12との関係.jpg
昨年のPediatrics誌に掲載された、
起立性調節障害という思春期によくある病気と、
ビタミンの欠乏との関連についての論文です。

起立性調節障害は、
所謂立ちくらみが病的になったもので、
立ちあがった時に、
めまいや吐き気などの症状が起こったり、
酷いと意識を失ったりする症状で、
特に思春期に起こるものは、
自律神経のバランスの乱れがその元にあり、
朝起き辛くて、学校へ行けないなど、
登校拒否と間違われ易いような症状の、
原因になることも稀ではありません。

起立性調節障害にも幾つかのタイプがあり、
中でも多いのが、
起立直後性低血圧と体位性頻脈症候群です。

起立直後性低血圧は、
立ちあがった直後に、
血圧が低下してめまいなどの症状がすぐに起こるもので、
体位性頻脈症候群は、
立ちあがった直後に、
脈が異常に早くなって、
ふらつきや頭痛などの症状が出現するものです。

起立性調節障害の原因は不明ですが、
ビタミンB12の欠乏がその1つの要因ではないか、
という考え方があります。

ビタミンB12は肉などに多く含まれ、
偏食であると不足し易いビタミンで、
自律神経の正常な維持には、
ビタミンB12が必要である、という知見があります。

今回の研究はトルコにおいて、
その関連性を検証したものです。

短時間の意識消失や、
副交感神経の緊張によると思われる発作を来した、
125名のお子さんを、
そうした症状のない50名のお子さんと比較して、
診断のための検査を行なうと共に、
血液のビタミンB12や葉酸、
身体の鉄分の指標であるフェリチンを測定して、
その数値と症状や診断との関連性を検証しています。

まず、症状のあるお子さんとそうでないお子さんとの比較では、
症状のあるお子さんで、
有意にビタミンB12 の血液濃度が低い、
という結果が得られました。
具体的にはそうでないお子さんでは、
ビタミン濃度が基準値未満は18%であったのに対して、
症状のあるお子さんでは47.2%に達していました。
これは血液のビタミンB12濃度が300pg/mLを基準としています。

更に症状のあるお子さんのうち、
検査の結果、体位性頻脈症候群と診断されたお子さんを、
症状のあるそうでないお子さんと比較すると、
体位性頻脈症候群では、
よりビタミンB12濃度が低く、
62.3%で基準値未満であった、
という結果になっていました。

この結果は勿論、
これだけで何とも言えるものではなく、
本来はそうした患者さんにビタミンB12を補充して、
起立性調節障害の症状が改善するかどうかを検証しないと、
臨床的に意味のあるものにはなりませんが、
起立性調節障害の患者さんでは、
一度はビタミンB12の濃度を測定しておくことと、
もしその数値が低値であれば、
その補充を治療の選択肢として考えることは、
少なくとも患者さんにとって不利益となることはあまりなく、
参考にするべき情報ではあると思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コメント 3

はせがわ

基準の血中濃度300pg/mLというのは、どの程度の値なのでしょうか
多めに見積もっているのでしょうか

vit B12は5年分だか10年分の体内貯蓄量がある、との記載を以前本で読んだことがあります。(胃全摘後の悪性貧血出現時期が云々)
症状がなくとも2割が不足するほど、思春期の子供にはB12が足らなくなるものなんでしょうか。

by はせがわ (2014-01-06 21:19) 

fujiki

はせがわさんへ
通常明確な欠乏と言うと、
200かそれを切るくらいになりますから、
少し高めを基準値にしていると思います。
極軽度の欠乏でも、
自律神経のアンバランスに結び付く可能性がある、
という趣旨だと思いますが、
その真偽は何とも言えませんし、
日本でも同様の傾向があるかどうかも、
何とも言えないと思います。
by fujiki (2014-01-07 08:39) 

はせがわ

回答ありがとうございます!
by はせがわ (2014-01-07 22:58) 

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