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中性脂肪降下剤の奇異性善玉コレステロール減少について [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
フェノフィブレートの善玉コレステロール減少リスク.jpg
今月のDiabetes Care誌に掲載された、
本来善玉コレステロールの上昇作用を持つとされた薬剤で、
逆に高度の善玉コレステロールの低下が生じた、
という報告です。

一般に善玉コレステロールと通称される、
HDL コレステロールは、
組織からコレステロールを引き抜くという働きを持ち、
その血液濃度の低下が、
心筋梗塞などの発症の増加と、
関連性があると考えられています。

ただ、現時点で明確にHDLコレステロールを増加させる効果が、
確認されている薬剤はありません。

中性脂肪を低下させる薬剤である、
フェノフィブラート(商品名リピディル、トライコア)には、
マイルドな善玉コレステロールの上昇作用がある、
とされています。

インスリンの抵抗性を改善する薬である、
チアゾリジン誘導体(日本で使用されているのはピオグリタゾンのみ)にも、
その主作用に加えて、
マイルドな善玉コレステロールの上昇作用がある、
とされています。

2001年から2005年に掛けて主解析が行なわれた、
ACCORDと呼ばれる大規模臨床試験があります。
これは2型糖尿病の患者さんに対して、
スタチンによるコレステロール降下療法に加えて、
フェノフィブラートを上乗せする群と、
偽薬を上乗せする群とで、
その後の心筋梗塞などの発症のリスクを比較したものです。

結果はあまり明確なリスクの低下は認められませんでした。

中性脂肪の降下剤は、
どうもスタチンのような、
動脈硬化性疾患の明確な予防効果が、
確認されていないのです。

さて、このACCORD試験の部分解析において、
HDL コレステロールが25mg/dl未満という、
極度な善玉コレステロールの低下の事例が複数認められました。

今回の研究は特定の薬剤の使用と、
この善玉コレステロールの異常低値との関連を、
ACCORD試験のデータから解析したものです。

その結果…

フェノフィブラートの使用により、
善玉コレステロールが異常に低下するリスクは、
2.06倍有意に増加し、
そのリスクは特にチアゾリジン誘導体との併用で、
より顕著な傾向が認められました。

単独では善玉コレステロールの上昇作用のある薬剤が、
複数の薬剤の併用による相互作用により、
体質によっては善玉コレステロールの、
高度の低下を招くリスクがある、
ということのようですが、
その詳細なメカニズムは不明です。

これでフィブラート系薬剤が常にリスクがある、
というように言える訳ではありませんが、
フィブラートを使用する際には、
時に善玉コレステロールの低下を招く可能性に留意し、
特にチアゾリジン(日本ではアクトス)との併用は、
原則として行なわない方が良いように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コメント 3

北岡

こんばんは。いつも勉強させていただいております。
先生のお話で、HDLコレステロールを増加させる薬剤は存在しない。とありましたが、ピタバスタチンや、ロスバスタチンは臨床試験でこれらを増加させる結果が出ている聞いてます。
石原先生、私はどお理解したらいいのでしょうか。よろしければ、アドバイスをお願いしますm(_ _)m
by 北岡 (2013-12-11 21:44) 

fujiki

北岡さんへ
これはHDLを主作用として、
上昇させる薬はない、という意味です。
「善玉コレステロールも上がる」
という触れ込みの薬は、
沢山あります。
by fujiki (2013-12-12 08:22) 

北岡

読み込みが足りませんでした。
ありがとうございました。
by 北岡 (2013-12-12 13:10) 

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