中途覚醒に対するマイスリー少量舌下投与の効果 [医療のトピック]
こんにちは。
六号通り診療所の石原です。
今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談に廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今年のSleep誌に掲載された、
中途覚醒の治療についての論文です。
不眠には幾つかのパターンがあります。
眠りには入り難いけれど、
一旦眠ってしまうと、
朝までは起きない、
という方がいらっしゃる一方で、
眠りにはすぐ入れるのだけれど、
夜中に起きてしまい、
それから朝まで眠れない、
と言われる方もいます。
勿論不眠が重症になると、
大なり小なりどちらの症状も現れます。
このうち、
中途覚醒と言って、
途中で目が覚めてしまう症状のみがある場合、
どのような治療薬が望ましいのでしょうか?
たとえば深夜の2時に目が覚めてしまい、
少なくとも朝の6時までは寝たいけれど、
7時まで寝ているようだと困る、
というような場合、
4時間しかないのに普通の睡眠薬を飲めば、
効果があっても、
朝まで薬が効いているので、
起きられなかったり、
目覚めが悪い、
というような弊害が生じます。
そこでこうした場合の1つの対処法として、
通常より少量の短期作用型の睡眠導入剤を、
それも吸収が速やかである形で使用しよう、
という考え方が生まれました。
今回の論文では、
ゾルピデム(商品名マイスリーなど)の、
通常より少量の製剤で、
それも舌下錠という、
舌の下で溶けて速やかに吸収される剤型のものを、
中途覚醒の事例に使用して、
その効果を検証しています。
ゾルピデムはアメリカでは、
最も広く使用されている睡眠導入剤で、
他のベンゾジアゼピン系の薬剤よりも、
依存性や離脱症状などの有害な作用が、
少ないと考えられています。
通常の用量は日本でもアメリカでも1回5mgですが、
この試験においては、
3.5mgの舌下錠が使用されています。
平均43歳の295名の不眠症の患者さんで、
中途覚醒が週に3回以上あり、
平均の睡眠時間が6時間半未満であることを、
3ヶ月の経過観察で確認し、
2つの群に分けて、
一方ではゾルピデム少量舌下錠を使用し、
もう一方は見た目では分からない、
偽薬を使用します。
これを患者さんにも主治医にも分からないように使用する、
最も厳密な効果判定法を用いています。
患者さんには15錠の錠剤が、
予め渡されていて、
夜中に目が覚めて10分以上が経過した場合、
コールセンターに連絡をして、
睡眠可能な時間が4時間以上ある、
などの要件を満たした時に、
薬剤使用の指示が出る、
という仕組みです。
観察期間は4週間です。
その前に2週間の未使用期間が置かれています。
その結果…
平均の薬の使用頻度は、
28日間に17~18回程度で、
これはゾルピデム群でも偽薬群でも変わりはありません。
ゾルピデム群においては、
未使用の期間での、
中途覚醒から再度睡眠に入るまでの時間の平均が68.1分で、
それがゾルピデムの使用により平均38.2分に短縮し、
偽薬群では、
69.4分から56.4分の変化に留まり、
有意差を持って、
ゾルピデムの中途覚醒後の再睡眠の誘導効果が確認されました。
有害事象には重篤なものは見られず、
翌日の眠気などの症状には、
ゾルピデム群と偽薬群とで、
有意な差は見られませんでした。
つまり、
ゾルピデムの少量舌下使用により、
睡眠の質が一定レベル改善し、
その有用性が確認された形です。
勿論薬の使用は最低限に留めるべきですが、
夜中に目が覚めて1時間以上寝ることが出来ない、
というような訴えで、
特にうつ病などの関与が否定的な場合には、
依存を生じ難い短期間作用型の睡眠導入剤を、
適切な管理の元に少量使用することは、
その後の睡眠障害の悪化を防ぐ意味合いでも、
一定の有用性のある治療なのではないかと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
六号通り診療所の石原です。
今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談に廻る予定です。
それでは今日の話題です。
今日はこちら。
今年のSleep誌に掲載された、
中途覚醒の治療についての論文です。
不眠には幾つかのパターンがあります。
眠りには入り難いけれど、
一旦眠ってしまうと、
朝までは起きない、
という方がいらっしゃる一方で、
眠りにはすぐ入れるのだけれど、
夜中に起きてしまい、
それから朝まで眠れない、
と言われる方もいます。
勿論不眠が重症になると、
大なり小なりどちらの症状も現れます。
このうち、
中途覚醒と言って、
途中で目が覚めてしまう症状のみがある場合、
どのような治療薬が望ましいのでしょうか?
たとえば深夜の2時に目が覚めてしまい、
少なくとも朝の6時までは寝たいけれど、
7時まで寝ているようだと困る、
というような場合、
4時間しかないのに普通の睡眠薬を飲めば、
効果があっても、
朝まで薬が効いているので、
起きられなかったり、
目覚めが悪い、
というような弊害が生じます。
そこでこうした場合の1つの対処法として、
通常より少量の短期作用型の睡眠導入剤を、
それも吸収が速やかである形で使用しよう、
という考え方が生まれました。
今回の論文では、
ゾルピデム(商品名マイスリーなど)の、
通常より少量の製剤で、
それも舌下錠という、
舌の下で溶けて速やかに吸収される剤型のものを、
中途覚醒の事例に使用して、
その効果を検証しています。
ゾルピデムはアメリカでは、
最も広く使用されている睡眠導入剤で、
他のベンゾジアゼピン系の薬剤よりも、
依存性や離脱症状などの有害な作用が、
少ないと考えられています。
通常の用量は日本でもアメリカでも1回5mgですが、
この試験においては、
3.5mgの舌下錠が使用されています。
平均43歳の295名の不眠症の患者さんで、
中途覚醒が週に3回以上あり、
平均の睡眠時間が6時間半未満であることを、
3ヶ月の経過観察で確認し、
2つの群に分けて、
一方ではゾルピデム少量舌下錠を使用し、
もう一方は見た目では分からない、
偽薬を使用します。
これを患者さんにも主治医にも分からないように使用する、
最も厳密な効果判定法を用いています。
患者さんには15錠の錠剤が、
予め渡されていて、
夜中に目が覚めて10分以上が経過した場合、
コールセンターに連絡をして、
睡眠可能な時間が4時間以上ある、
などの要件を満たした時に、
薬剤使用の指示が出る、
という仕組みです。
観察期間は4週間です。
その前に2週間の未使用期間が置かれています。
その結果…
平均の薬の使用頻度は、
28日間に17~18回程度で、
これはゾルピデム群でも偽薬群でも変わりはありません。
ゾルピデム群においては、
未使用の期間での、
中途覚醒から再度睡眠に入るまでの時間の平均が68.1分で、
それがゾルピデムの使用により平均38.2分に短縮し、
偽薬群では、
69.4分から56.4分の変化に留まり、
有意差を持って、
ゾルピデムの中途覚醒後の再睡眠の誘導効果が確認されました。
有害事象には重篤なものは見られず、
翌日の眠気などの症状には、
ゾルピデム群と偽薬群とで、
有意な差は見られませんでした。
つまり、
ゾルピデムの少量舌下使用により、
睡眠の質が一定レベル改善し、
その有用性が確認された形です。
勿論薬の使用は最低限に留めるべきですが、
夜中に目が覚めて1時間以上寝ることが出来ない、
というような訴えで、
特にうつ病などの関与が否定的な場合には、
依存を生じ難い短期間作用型の睡眠導入剤を、
適切な管理の元に少量使用することは、
その後の睡眠障害の悪化を防ぐ意味合いでも、
一定の有用性のある治療なのではないかと思います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2013-02-27 08:05
nice!(31)
コメント(2)
トラックバック(0)
寝つきが悪いと訴えた患者に「それでは0時に床にはいりなさい」とTVで語った医師がいました。素人の域をでていません。
不眠で悩んだ友人知人は
A氏 レンドルミンとベンザリン各1錠
B氏 レンドルミンとデパスそれぞれ半錠
C女 デパス1.5錠 深夜に0.5錠
D女 マイスリー 0.5錠
E女 ハルシオン1錠
いずれも70歳台。
by さすらいの、、、 (2013-02-27 10:41)
さすらいの、さんへ
コメントありがとうございます。
睡眠剤の適正な使用と、
その適正は管理は、
非常に難しい点だと思います。
by fujiki (2013-02-28 08:25)