男性更年期と中高年のうつの話：北品川藤クリニック院長のブログ：SSブログ

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男性更年期と中高年のうつの話　[仕事のこと] [編集]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日も早い更新になります。
パソコンは届いたのですが、
まだ梱包を解いていません。
一昨日、昨日と、
検診結果の説明会に診療後に廻り、
12時間以上続きの仕事が続くと、
さすがに疲れます。

それでは今日の話題です。

男性にも更年期があり、
それが明らかな症状と結び付いている場合には、
治療の対象となることもあります。

この男性更年期のことについては、
以前にも2回ほど記事にしました。
その中では、男性のホルモン補充療法については、
慎重に考えるべき、という立場でお話しました。
その考え方自体は変わってはいませんが、
実際にホルモン補充療法が、
効果のあるケースの存在することは事実です。

最近ホルモン補充療法が、
著効した事例を2例経験したので、
今日はその話をしたいと思います。

男性ホルモンであるテストステロンは、
年齢と共に徐々に低下しますが、
時に比較的急激な低下を来たす場合があり、
そうした時には女性の更年期と同じように、
全身的な不調や自律神経症状、
精神的なアンバランスを来たすことがあります。

ご紹介する最初の事例は、
数年間うつ病として治療を受けていた、
50代の男性のケースです。

あまりはっきりしたきっかけなく、
身体がだるくなって仕事に行けなくなり、
休みを取るとある程度お元気になるのですが、
復職してしばらくすると、
再び仕事に行き辛くなり、
休職してしまう、という繰り返しです。

症状の特徴としては、
身体的なだるさや力のなさ、
などの訴えが比較的強く、
またイライラも強くて、
短期間で気分がコロコロと変わり易い、
という印象があります。
抗うつ剤は、
無効ではありませんが、
それほど効いているとは思えません。

それで、念のためと思いホルモン値をチェックすると、
遊離テストステロンが、
5.1pg/ml という異常な低値を午前中の採血で示しました。
これは80代に相当する数値です。

頭部のMRI などの検査をしましたが、
脳の異常はなく、
また前立腺癌のマーカーも正常でしたので、
エナルモンデポーという男性ホルモン剤の注射薬を、
1ヶ月に一度というペースで投与しました。

その結果は劇的なもので、
数日後には体調は明らかに改善し、
しかも躁転のような不安定な要素はありませんでした。

その後定期的に注射を行なっていますが、
抗うつ剤は中止としても何ら問題なく、
お仕事にも復帰して就労を継続されています。

2例目の方は60代後半の男性の方です。

手足の痺れや冷感、発汗異常や眩暈などの、
所謂自律神経症状が頑固に持続し、
大学病院の整形外科や神経内科で、
あらゆる検査を受けても、
これといった異常は見付かりません。

そして、そうした症状の続くうちに、
気持ちの変動が大きくなり、
抑うつが症状に加わりました。

これも念のためと思いホルモン値を測ると、
矢張り午前中で7.2pg/ml という低値です。
それで同じようにエナルモンデポーで治療を開始したところ、
初回の投与で発汗や冷えの異常が解消し、
半年の治療後には気分の変動もほぼなくなりました。

海外の文献では、
前にご紹介したように、
ホルモンの補充で自律神経症状や精神症状が、
改善することには否定的な報告が多いのですが、
実際にこうして著効例の存在することを経験すると、
それは日本人の患者さんでは、
必ずしも当て嵌まらないケースもある、
と考えざるを得ません。

概ね50代以降で、
原因のはっきりしない、
自律神経症状や身体の疲労感の持続、
イライラやうつ症状の遷延する方は、
一度は男性ホルモン値をチェックされることを、
お勧めします。
注意点は必ず午前中に採血をすることで、
男性ホルモンは午後には低下するので、
午後の数値ではその判断は出来ないのです。

今日は男性更年期の治療が著効した事例の話でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

2010-11-13 06:35 nice!(28) コメント(4) トラックバック(0)