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長時間作用型ノイラミニダーゼ阻害剤「イナビル」の話 [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日も早い更新になります。
今週末には診療所のパソコンを交換の予定です。
メールソフトの調子が悪く、
返信が滞っていることをお許し下さい。

それでは今日の話題です。

今日はインフルエンザの新薬の話です。

そのパンフレットの画像がこちら。
イナビル.jpg
この薬は迅速な審査の適応となり、
先月に急遽発売されました。

発売順で行けば、
初めての国産のインフルエンザの薬です。

この薬はリレンザと同じタイプの吸入薬です。
その効果もインフルエンザウイルスが人間の細胞から外に出る時に必要な、
ノイラミニダーゼという酵素を阻害する点では、
タミフルやリレンザと同等です。

内服薬のタミフルは、
その耐性ウイルスが問題になっていますが、
吸入薬のリレンザには、
現時点で同様の耐性はなく、
この新薬のイナビルにも、
同様に耐性はないと、
現時点では考えられています。

リレンザとイナビルとの違いは、
その作用の持続にあります。

イナビルは吸入されると、
気管支や肺の組織内にある酵素で加水分解と言われる処理を受け、
その活性を現わすと、
その場所に5日間以上留まることが、
確認されています。

つまり、イナビルは1回吸入すれば、
薬剤の効果自体は5日間は持続するのです。

従って、リレンザは1日2回の使用を、
5日間は持続するのが、
通常一般的な使用法ですが、
イナビルは通常1回吸入するだけで、
基本的には治療は終了です。

この長時間作用型の吸入剤という特徴には、
長所と短所が存在します。

まず、長所としては、
単回で治療が終了するため、
飲み忘れや吸い忘れがなく、
安定した効果が期待出来る、ということがあります。

一方で短所としては、
仮に重篤な副作用が出現した場合、
その副作用も長期間持続する可能性がある、
という点と、
吸入薬のため、しっかり薬剤が気管や肺に入ったのか、
確認することが難しい、という点があります。

同様の吸入薬のリレンザの場合、
1日2回の吸入なので、
忘れ易いという欠点はありますが、
1回くらい吸入を失敗しても、
それほど問題にはならない、という利点もある訳です。

ノイラミニダーゼの阻害効果については、
リレンザと同等とのことです。

製薬会社の担当者の話では、
最初はより効果の強い薬を開発しようと、
構造の研究を続けたのですが、
リレンザを凌ぐことは難しいとの判断で、
効果の持続の長さで勝負する方針に、
転換した、という経緯があるそうです。

このことは、リレンザの優秀性を、
裏打ちしている、と言えなくもありません。

イナビルの副作用については、
現時点では重篤なものは知られていません。
ただ、これは発売から間もない時期なのですから、
ある意味当然で、
今後の状況を見ないと、
何とも言えないところだと思います。

吸入剤の実物は、
あまりデザイン的には見栄えの良いものではありません。
薬剤は商品としては、
意外とビジュアルも重要なので、
もう少し工夫の余地はなかったのかな、
という気はします。
使い易さも正直あまり良くなく、
うまく吸えたかの確認も、
出来難い構造になっています。

国産の薬だし、
安全性が確認出来れば、
応援はしたいとは思います。
海外でリレンザの売り上げを食うような、
活躍を期待したいのですが、
今の所海外での発売は、
決定してはいないようで、
そうした点は気合が足りない、
と思わなくもありません。

現状は吸入薬が短期のものと長期のものの2剤、
そして内服薬と注射薬、
とラインナップが揃った訳で、
患者さんの状況により、
使い分けることが可能になったことは、
季節性インフルエンザの流行はともかくとして、
今後の新型インフルエンザの流行を考えると、
意味のあることではあると思います。

今日はインフルエンザ治療の新薬の話でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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