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果糖(フルクトース)の話 [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

果糖(フルクトース)という糖分があります。

ブドウ糖と果糖は同じ単糖類という仲間です。

構造式で言うと、
ブドウ糖は6角形をしていて、
果糖は5角形をしています。

ブドウ糖も果糖も共に甘く、
果糖はその名の通り、
果物に多く含まれています。
従ってフルーティーな甘味があり、
ブドウ糖よりむしろ人間には好みの味です。

所謂甘味料の「砂糖」は、
このブドウ糖と果糖とが、
1つずつくっついた構造のものです。

さて、糖尿病というのは、
血液のブドウ糖が上がることです。
果糖ではありません。

とするなら、
ブドウ糖を摂らず、
果糖を摂れば、
糖尿病でも血糖は、
上がらないのではないでしょうか?

栄養指導でもブドウ糖を減らし、
他の糖を増やすような、
そうした指導が望ましいのではないでしょうか?

皆さんはどうお考えになりますか?

これは実は現在でも、
はっきり結論の出ている問題ではありません。

皆さんもブドウ糖を減らしたり、
摂らない食事の方が正しいのだ、
と言うニュアンスの話を、
お聞きになったことがあると思います。

理論的に考えてみましょう。

ブドウ糖は血液の濃度が一定に調節され、
その調節には膵臓から出る、
インスリンというホルモンが主な働きをしています。

つまり、ブドウ糖をエネルギーとして身体が利用するには、
そのブドウ糖の量に見合った、
インスリンが必要です。
必要十分な量のインスリンがあれば、
ブドウ糖は速やかに肝臓や筋肉の中に入り、
エネルギー源としての働きをします。
その分解が速やかであれば、
有害物質の発生もありません。

それでは果糖はどうでしょうか?

果糖はインスリンがなくても、
肝臓に取り込まれて代謝を受けます。
つまり、果糖を摂っても、
血糖は上がりませんし、
(血糖というのはブドウ糖なのですから当然です)
インスリンも上昇はしません。

しかし、余分の果糖は、
乳酸や中性脂肪、尿酸などに変換されます。
つまり、果糖を大量に摂ると、
結果的に身体の脂肪が増え、
身体に疲労物質の溜まる、
1つの要因にもなります。
脂肪が増えれば、
インスリンの効きは悪くなるので、
結果として高インスリン血症になります。
また、肝臓は果糖の代謝をブドウ糖より優先するので、
血糖はこのために上がり易い状態になります。

つまり、果糖の過剰摂取は、
所謂メタボを生むのです。

また、果糖は蛋白質にくっつく力が強く、
「糖化」という現象が起こり易い物質です。

「糖化」というのは、
その蛋白質の性質を変化させ、
糖尿病の合併症の大きな要因の1つと言われています。
つまり、果糖は直接は血糖値を上げないけれど、
その合併症の要因の1つにはなるのです。

「糖化」を利用した検査が、
お馴染みのHbA1c です。
この検査は血液のヘモグロビンが、
「糖化」するパーセントを測っているので、
果糖が大量に血液に入ると、
それだけでも上昇します。

つまり、それほどの血糖値でないのに、
HbA1c が異常に高い時は、
果糖が過剰になっている可能性を疑います。

以上のように、果糖の過剰も、
ブドウ糖の過剰と同じように、
身体には有害な部分があります。

診療する立場から言うと、
ブドウ糖は血糖として、
簡単に測ることが出来るのに対して、
果糖の血液濃度は、
通常の健康保険内の検査では、
測ることは出来ません。
勿論通常はその濃度はブドウ糖の300分の1ですから、
測る必要性自体がないのですが、
過剰に身体に蓄積した場合には、
測れない分実態が分からず、
怖い面もあるのです。

それでは今日のまとめです。

果糖はインスリンを必要としない栄養源ですが、
その過剰は矢張りブドウ糖と同じように、
身体の組織にダメージを与えます。
その過剰は診断が困難な部分もあるので、
ダイエットなどでの、
極端な偏食は、
矢張り問題が大きいのではないか、
と僕は思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コメント 2

donna-anna

こんにちわ。
はじめてコメントさせていただきます。
以前からちょくちょく拝読していました。
diana damlauの記事で最初たどりついたんですが。

昨日たまたまみていたTVに禁煙のお薬のことででてらっしゃいましたね!

と嬉しくなって記事と関係のないコメントです。

寒くなりますがお体に気をつけてお仕事がんばってください。
応援してます。
by donna-anna (2010-10-19 12:04) 

fujiki

donna-anna さんへ
コメントありがとうございます。
テレビはたまにお座敷が掛かることがあって、
去年から3回目です。
いつもちょびっとですけどね。
ダムラウの来年の「ルチア」は、
調子が良ければ楽しみです。
これからもよろしくお願いします。
by fujiki (2010-10-19 21:06) 

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